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ロボピッチャー・かとうたかおのweblog

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2006年09月28日
終り始まりまた終わる馬鹿げたカーニバルは続く

 今日は実は太陽が照っている間は比較的ゆっくりと過ごしました。
 なんだか、会う人会う人に「大変そうですね、大丈夫ですか?」と聞かれるので、なんか家でゆっくり時間をすごしているとある種の罪悪感すらあるけれど、まあ、今日はとにかく、夕方までは簡単な事務作業とかそんなのでした。

 関係ないけどこの「簡単な事務作業」ほど嫌いな物はない。とりあえず請求書と領収書はこの世からなくなって欲しいぜ。ああ、今日もまた未請求の仕事がたまっていくのです。

 夜からはやや緊急度の低い仕事。
 のはずがなぜか急に緊迫してきて急いで仕上げた。
 で、深夜からボロフェスタ会議。
 6回目のボロフェスタだから、ある程度分かっているとはいえ、やはりこの時期はつらい。机上の空論でフェスティバルを作るのはつらく、難しく、ストレスがたまる。現場に出て体を動かしたらそうでもないんだけど。

 とにかく、もう進むしかない気がする。信じるしかない気がする。ボロフェスタというフェスティバルのことや、それをとりまいているすべての人のことを。

 神様僕に信じさせて。
 信じることは強さだと。

 まあ、いいや。なんとでもなる。
 とにかく今ある状況に100%の僕を投げ込むだけだ。
 やがて目にする結末をどうかせめて恐れずに。 

kato takao** 28/9/2006 木曜日 07:10 | Link | TB (0) | コメント(0)
2006年09月27日
一方そのころ僕はといえば

 僕が僕に出来ることはとてもたくさんあるのだけど、僕が僕以外の人に出来ることはそんなにたくさんないから、せめて気持ちよく送り出してあげようと思う。

 せめて、ここですごした時間や、培ったあらゆる物が今後の何かにいかされますように。
 
 そして、いつでも帰ってきたかったら帰ってきたらいいから。
 僕ならばここにいる。

 そして、一方その僕はといえば、遠くを眺めていたりなんかして。
 SCRAPの最後の原稿をあげ、お見舞いに行き、メールの返事を書き、ボロフェスタの仕事をいくつかして、気絶をリアリティのある想像として認識しながら死ぬ気でゲームとかもしてみた。いくつかのコラムを書き、ラジオに出演して、読むべき文献を読んだ。SCRAPの会議もしたし、その後でみんなで少しだけ飲んだ。僕はビール一杯でもう酔っ払って、とてもしゃべった。誰かとしゃべることでしか、自分と世界との距離感を測れない日もある。今日はそうだった。

 彼女はといえば、遠くを眺めながら。
 ささやかな祈りを、今日もささげてくれているんだろう。
 一人ぼっちの寂しさを抱えながら。
 離れていくことの切なさと必要性を感じながら。
 その尊さだけは決して忘れることはない。

 彼は青白い顔をしながら、僕に訥々と話し、僕は時間をコントロールすることが出来ず、しどろもどろだった。
 責任の話と、ユートピアの話が両立するべき世界の話。もしくは現実と夢の話だ。

 傷ついているのは僕だけではなく、君だけではなく、ましてや世界中では絶対なく、もはやそれは共通の幻想ですらあるのかもしれない。哀しむというメソッド。カリカチュア。その対義としてのリアリティのある歓喜。
 
 なぜだろう。 
 僕がいなくなってしまう予感が消えない。
 でも、僕がいなくなるまでは創り続けようとさっき決めた。

kato takao** 27/9/2006 水曜日 05:22 | Link | TB (0) | コメント(0)
2006年09月25日
ずいぶんと

 ずいぶんといろんなことがあった気がする。
 東京でライブをして、西部講堂でのイベントを手伝って、今は締め切り前。
 言葉にするとたった一行なんだけど、どうも、そう簡単ではないようで。

 西部講堂でのイベントではいくつかのトラブルを抱えた。
 なにかを作り出すリスクのことは知っていたけれど、それが僕ではなく誰かに降りかかることをきちんと想像していなかった。何か問題が起こったら、僕が責任を取ったらいいとずっと思っていたけれど、責任が取れないようなことだって起こりうるってことだ。
 スタッフの一人が怪我をして、病院に運ばれて、彼の声を聴きながら、なるほどこれが現実だと思い知った。ここではなんでも起こりうる。僕らは、薄氷を踏んでいる。いつだって足の裏には徳俵がある。何かを作り出すときに、その事だって抱えていかなくてはならない。

 まだ、スタッフがずいぶんと残っている西部講堂を後にして、僕は翌日のインストアライブの為の練習に向かった。スタッフのうちの一人が病院で検査を受けていて、どんな状態か分からなかったので、会場にいたかったけれど、ここで音楽をないがしろにしたら、本当に大切な物を見失いそうな気がしたので夜中に車でスタジオに向かった。車の中ではロボピッチャーを聴いてみたけれど何の役にも立たなかった。音楽はこんなときに何も出来ない。もう少し後できっと役に立つんだろうけど。

 スタジオで伊藤君ときちんとした練習をした。
 歌って、ギターを弾く。伊藤君はキーボードを叩く。
 1時間半の練習。
 体に音楽がしみていく。声と手がリズムを覚えていく。
 でも、心にきちんと音が渡っていかない。
 
 練習の後、西部行動に戻る。AM2:30
 みんなが笑っていた。彼は思ったよりも軽い怪我だったらしい。とはいえ、骨を折り、しばらく片腕は使えなくなるのだけど。
 
 ああ、そう、と、僕は言って、椅子に座ったら泣きそうになって、彼に対して本当にごめんと思った。人として。
 そしてもちろんほっとして、みんなと少しだけ話した。
 
 僕らが抱えている物や僕らが作り出した物は、まやかしかもしれないとずっと思っていて。
 まあ、でも別にそれでもいい。まやかしでも、みんながまやかされてんなら素敵なことだ。
 大体形のないものを売ってる奴はみんな詐欺師だ。そこにどんだけたくさんの人間が納得できる価値を付加できるかってことでしょう。
 そんなまやかしの世界で起こった、まやかせない事故に僕は今後きちんと人として対応しようと思う。

 優先順位は決まった。 
 やりたいこともわかった。
 それでも続けていくのだと決めた。
 
 くだらないことがたくさんあるこの場所で、僕がよいと思うことを僕がよいと思う人たちと作り出していこう。
 今見えていることにこそまっすぐに。

 そして、彼が帰ってきたら、僕が思いつく限りの一番いい場所を用意していたいと思うのです。  

kato takao** 25/9/2006 月曜日 05:14 | Link | TB (0) | コメント(0)
2006年09月20日
東京ライブ!!

 デパオクミュージックとレコ発が怒涛のうちに終り、またまた東京へうかがいます。
 やっと細胞がライブを取り戻しました!

■ 2006/9/21(木) 東京・新宿 redcloth
【出演】ミンガス / さかいゆう / ChesterCopperpot / ロボピッチャー
【時間】open 18:30 start 19:00 (出演は3番目、20:25の予定です)
【料金】前売 \2,000 / 当日 \2,300 (いずれも+drink)
【info】 redcloth http://www.redcloth.co.jp/

 伝説のライブが2本ありました。
 東京はその勢いに乗っかります。

 CD発売直後のバンドの勢いを見に来てください!

kato takao** 20/9/2006 水曜日 23:23 | Link | TB (0) | コメント(0)
2006年09月14日
記念日についての考察

 実は今日が誕生日です。
 たまたまその場にいた人に先ほどお祝いしていただきました。ありがとう。

 でも。
 僕が生まれた日なんかより、僕らの作品が世に出た日の方がずっとずっと記念日だ。
 僕は今年の9/14を忘れることはあっても9/13を忘れることはないと思う。
 「CD発売おめでとう!」というメールは「お誕生日おめでとう!」の1兆倍うれしかった。本当にうれしかったし、自分を保つのが難しいくらいくらくらになりました。

 誕生日なんてたかが俺が生まれた日だ。それもべつにもう何十年も前の話、しかも俺以外の誰かが作った暦の中での小さな話だ。
 でも、CDの発売はひょっとしたらこれで人生で最後かもしれない。こんなにすばらしいアルバムを発売できるのはこれが最後かもしれない。こんなに僕という人格を組み込んだ作品はもう世に出せないかもしれない。
 一生でたった一回あるだけで幸せになるようなそんな日でした。
 その日にメールくれた人、おめでとうといってくれた人、BLOGで紹介してくれた人、かってくれた人、そのことをそっと見つめていてくれた人、本当に本当にありがとう。僕はものすごく幸せな人間だ。あなたがいたことを心から嬉しく思う。

 今日ロボピッチゃーの練習があって、その練習場に行くまでに「アリバイと40人の盗賊」を聞いていた。
 突然ものすごい感謝の念が沸いてきて、涙がこぼれそうになった。

 このアルバムに関わってくれたすべての人たちに心からの感謝を。
 きっと、このページを見てくれている人たちは、間接的もしくは直接的にこのアルバムの中に溶け込んでいると思う。このページを見てくれる人が少なくとも一人はいるってことに励まされたりします。ほんとですよ。

 そして、このアルバムのディレクションをしていただいた古賀さんにはもう最大限の感謝と、ありったけの愛を。
 ロボピッチャーが今ロボピッチャーである理由のいくつかを古賀さんが担っていただいていると思います。人間の想像力が及ぶ限りの長い時間をどうぞ末永く仲良くしていただきたいと思っております。また一緒に何かを作り出せたら最高です。

 とにかく、僕が今ものすごく幸せな気分なのは、僕らのアルバムが世界に向かって出航したからだ。

 誕生日は節目だ。それを祝ってくれるのはうれしい。
 でも、僕が本当に嬉しいのは「アルバム発売おめでとう」って言ってもらえることだ。

 ありがとう。

 こっから先は人類未踏の謎の国だ。
 おもしろい。

 年に一回やってくる予定調和なんかの何兆倍おもしろいんだからな!

kato takao** 14/9/2006 木曜日 05:11 | Link | TB (0) | コメント(5)
2006年09月12日
アリバイと40人の盗賊

 今日、アリバイと40人の盗賊が店頭に並びます。多分。

 このアルバムはどんなアルバムなのかまだ僕にはわからない。
 きっと、レコード会社から流通してレコード屋さんに行ってお客さんのところに届いてお客さんが何かを思ったときに完結するアルバムだと思う。

 僕はだからこのアルバムが何についてのアルバムなのか一生分からないのかも知れないと思っている。
 僕の器には収まりきらなくて、たぶんロボピッチャーの器にも収まりきらなくて、どぼどぼといろんなものがこぼれていって、僕らはそれを諦観の念で眺めるんだろう。

 僕らがどんな思いでこのアルバムを作ったかなんて意味のない話だ。
 もちろん僕らはこのアルバムを必死で作った。
 何かに必死になるってそんなに簡単なことじゃない。
 だから、このアルバムには生き様とかだってちゃんと入っているし、人生とかだって入ってる。まあその他のいろんな雑念だって入っているだろう。なぜなら音楽はすべてを内包してしまう芸術だから、一生懸命作られたものにはその時のすべてが入っちゃうのです。

 そんなアルバムです。
 ああ、ぜんぜんわかんねえなこの解説じゃ。くそ。言葉が使えないってのはもどかしいな。

 まあ、いいや。
 いくら言葉を尽くしても分からないことだってたくさんある。
 このアルバムもそうだ。
 でも、ほんの1時間、このアルバムのために時間を割いてくれたら言葉にならないことが全部「わかる」。理解できると思うし、もっとはっきりと「みえる」と思う。
 どうぞみなさま、なんとかしてアルバムを聞いてください。
 そして、感想などこのコメント欄にどんどん書き込んでいってくださいませ。

 *今思いついたんだけど、そこで寄せられたコメントをロボピッチャーのHPなどで流用させてもらってもいいですか?流用不可の場合は「流用不可」と書いてくださいませ。

 そして、その後はもちろんライブです。
 ロボピッチャーはライブバンドなのです。
 なんとかしてきていただきたい。
 レコ発って特別な日です。この日のためにがんばってきたのです。
 その前日に無料のイベントがあるからってちょっとみなさんたかをくくっておられるんじゃないですか?そりゃあデパオクミュージックはすばらしいイベントですが、その翌日のライブはもうそりゃあすさまじいつうか、生まれてきた意味がわかるっつうか、初恋が100回いっぺんに来たみたいなライブですよ!頼むから来て下さい。思ったよりロボピッチャーHPでの予約が少ないよ!!あ、でも、ぴあとかで買ってくれてるのかもしれんな。大丈夫か。いや!なんか安心できん!とにかく、「デパオクでみるからまあいいか、対バンもほとんど同じだし」とか思ってるお前!ちょっとこっちこい。左の頬出せ。バシッ(叩いた)。右の頬も叩かれたくなかったらライブに着なさい。いや、もう来なくていいから予約だけでもしてくれ。なんか不安でしょうがないよ。このブッキングで、ロボピッチゃーのレコ発イベントでお客さんが18人とかだったらもう俺は比叡山延暦寺で余生を過ごすね。うん。

 あ、なんか思ってることをだらだらと書いたら、ひょっとして逆効果な感じになってるような気もしてきましたが、とにかく、デパオクにもレコ発にもぜひぜひお越しください。二日とも来てくれた方には特別に爽やかな笑顔をあげます。その爽やかさといったらもう、この世の極限の爽やかさですよ、爽やかの極致ですよ、爽やかという言葉の意味が変わって「ちゃわやか」とかになっちゃうほどの勢いですよ。

 あ、まあ、とにかく。ぜひぜひどうぞ。

■ 2006/9/17(日) 京都・プラッツ近鉄屋上
■ デパオクミュージック in プラッツ近鉄!vol.4 京都で一番空に近いフェスティバル
【出演】倉橋ヨエコ / キセル / ロボピッチャー
【時間】open 13:30 start 14:30
【料金】入場無料!!!!!!(雨天の場合は1階アトリウムにて開催)
【info】 SCRAP http://www.scrapmagazine.com/  

■ 2006/9/18(月・祝) 京都・MUSE
■ ロボピッチャー1stフルアルバム「アリバイと40人の盗賊」発売記念ライブ
【出演】K-106 / キセル / 倉橋ヨエコ / ロボピッチャー
【時間】open 18:30 start 19:00
【料金】前売 \2,000 / 当日 \2,500 (いずれも+drink)
【info】KYOTO MUSE http://www.arm-live.com/muse/kyoto/

*ロボピッチャーHPにてご予約いただけます。
 http://www.robopitcher.com/

 今日ヨーロッパ企画の演劇を見て、あまりのすばらしさに目がくらんだ。
 あれは100年に一人の才能とかではなくて、きちんと一つずつ積み上げた努力の究極の結実だと思った。
 一人のクリエーターとして純粋に嫉妬して、不安になって、ああ俺もものすごくやろうと思いました。
 どうもありがとう。
 ちなみに、今からヨーロッパ企画の打ち上げに参加してきます。

 最後に、一行だけ。
 ハチクロのラストで涙が垂直に飛び出るほど泣きました。
 人の作品で泣いたのは久しぶりです。
 あ、二行になっちゃった。この行入れたら3行ですね。

 では。

kato takao** 12/9/2006 火曜日 02:29 | Link | TB (0) | コメント(3)
2006年09月07日
だいじょうぶ、たぶん

 突然夏が終わってしまって、寂しくなる暇もない。
 僕の周りの夏が嫌いな友人たちでさえ「今年は突然だったからうれしくない」といっていた。
 まだもうちょっと暑い日もあるだろうけど、この涼しさはなんだか不思議だ。
 温度とともにさまざまなものが奪われていった気がする。

 結局のところ問題はその不誠実な生き方にある。
 僕は次から次への目の前にやってくるトラブルにのみ対処して、トラブルが終わったらトラブルの種を作る。自分で起こした殺人事件を自分で解決する刑事のようだ。僕は次々と犯罪を思いつき、実行に移し、解決する。

 アルバムに関してものすごくたくさん話した。
 それについてのテキストも書いた。
 そして今も書かなくてはならないテキストがいっぱいあって、ぜんぜん手が追いついていない。
 すいません。
 俺は自作を語るより、俺の作品をみなさんがどんな風に聞いてくれるのかの方がずっと興味があるのだけど、なかなかアルバムが発売されない。あと一週間か。心から待ち望んでいます。

「世の中ってのはお前が思っているより馬鹿だからね」と彼は言った。「そんなお前にだけわかる音楽をやってたって意味がないよ。」
 僕はああ、またその話かと思いながら「そうだね」と言った。
「あのさ、聞きたいやつが聞きに来るのはあたりまえなんだよ。別に聞きたいと思ってない奴の耳にどうやって届かせるかを考えなよ」と彼は言う。そして最後に思いやりのように付け足す。「おれはお前の音楽がとても好きなんだよ」
「ありがとう」と僕は言ってみるけれど、別に二人の親密さは深まらない。僕は彼の言っていることの意味が良く分かる。でも、結局のところそれは見解の相違というやつだ。けっして埋まることのない溝。防弾ガラスの向こう側とこちら側。パラレルワールドの一つずれた世界。
「音楽で生活していきたいから会社を辞めたんだろ?」と彼はいう。
「うん」
「で、なんでこんな音楽やってんの?昔の曲のほうがずっとよかったよ」
「うん」僕はビールを飲む。
「ビジネスってのはきちんと買い手の顔を思い描いてから始めるもんだよ。なんでお前はいつも自分の思いつきに周りをあわせようとするの?」
「うーん」僕はビールをごくごく飲んでいる。ビールを飲む以外にやることがない。
「おれはほんとに応援してるんだよ」
「ありがとう」
「おれの嫁さんだって応援してる」
「ありがとうって伝えておいて。そういや子供は元気?」
「もうすぐ二人目が生まれる。子供って面白いよ」
「ああ、そう。子供は嫌いだ」
「そんなこといってる奴に限って子供が好きになる」
「みんなおんなじこと言うなあ」
「お前もう結婚したら?いくらなんでも無駄にいろいろと動きすぎてない?」
「うーん」またビール。
「別に説教するわけじゃないけどね」
「いや、うれしいとおもっているよ。本当に」
「ならいいんだけど」
「うん」
「うん」
「ビールもっと飲む?」
「うん」
「じゃ、買いに行こう」
「うん」
「あ、俺金出すよ」
「なんで?」
「なんとなく」
「じゃ出せ」
「うん」

 僕らはふらふらとコンビニにビールを買いに出かけ、高校の時のようにエロ本コーナーで足を止める。知らない人ばっかりだ。特に会話もなくなんとなく一冊手に取る。気が狂ったような顔をした女が胸を千切れそうなほど上へと持ち上げている。なんだこりゃ。力自慢の写真か?ぱらぱらとめくる。別になにもない。綺麗な女性が脚を開いている。最近は僕のために脚を開いてくれる人以外にあまり興味がわかない。
 昔はキャンプに行った先で、よくエロ本を燃やした。適当に見て、さっさと燃やすと、どんなつまらない本でも役に立った。もちろん、エロ本はそれ以外にもいろいろと役にはたったけど。
 ビールと少しだけつまみを買う。

 家につくとまたビールを飲みだす。
 僕は彼に新曲ができたんだ、といってPCに入っていた作ったばかりの曲を彼に聴かせる。
「これはすごくいいな」
「あ、ほんと?」
「うん。昔のお前の曲みたいだ」
「なんやそれ」
「いや、でもほんとにこの曲はいい。おー、すごい。終盤さらにいい。これはめちゃくちゃ俺好きやな。この曲ならもう周りの奴みんなに薦めることが出来るよ」
「そうなの?」
「うん。これはすごい曲だ。俺は音楽は素人だけど売れそうな気がするもん」

 とか、
 そんな2005年12月の会話。
 その直後にロボピッチャーはアルバム製作に突入する。
 ロボピッチャーのレコーディング中に時々彼の言葉を思い出した。
 相容れない言葉。違う世界の人。
 でも、その彼と僕を繋いだのはファンファーレっていう曲だった。

 ファンファーレが宣言したのは、別に俺はただひとときひとときを丁寧に生きてますよってことだけだった。
 僕はでも、彼の名前を、歌詞カードの「thanks」のところに載せたんだ。誰にも内緒で。こっそりと。

 
 いつもより少しだけ確かな結末を見ている。
 エロ本の表紙を飾った、胸の大きな女性が見つめていたものと同じくらい確かな物。
 長い長い映画の途中で見つけた、取り返しのつかないパラドクス。
 幕が下りた後で、満場の拍手の中で罵り合う役者たち。顔の綺麗な女と綺麗な体の男たち。火曜日にセックスした男と、水曜日にセックスした男が喧嘩している。「この女は俺のものだ!」女はすました顔で「さあカーテンコールよ。演じられないのならステージからおりなさい」
 彼女はマニキュアを塗りながら、この手で触るはずの何かに思いを馳せる。そこにある暖かさと、そうではないおぞましい何かについて。
 飛行機が飛んでいく。
 整備不良の煙を上げて。
 どこまでもは飛べないけれど。
 それでも何処かに届くだろう。
 
 そのうち僕は彼女にキスをして。
 「ほらね。僕がいったとうりになったろ?」っていう。
 そんな結末。

 どうかせめて恐れずに。

kato takao** 07/9/2006 木曜日 04:45 | Link | TB (0) | コメント(0)

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