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ロボピッチャー・かとうたかおのweblog

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2014年06月27日
リアル脱出ゲームTVについて

テレビのことがずっと嫌いだった。
見たらキラキラしていて、楽しそうで、きれいな人やかっこいい人たちがたくさんいて、幸せそうで、それをただ見せつけられてるようで。
テレビの中の人たちは生き生きと自分たちが努力して勝ち取った現在の地位を謳歌しているように見えた。
それは僕には手の届かない遠い遠い場所の幸せな物語だった。
他人の幸せを、強制的に指をくわえて眺めさせられる装置が僕にとってのテレビだった。

音楽に出会って、自分でこつこつとメロディーと言葉を作り始めたとき、テレビの向こうからはきらびやかなメロディーが流れてきていた。
きらきらの照明を浴びて、美しい衣装で歌う彼らを僕は認めなかった。
テレビで鳴っている音楽は嘘だと思い続けた。

二年半位前に何人かの大人たちが、僕の事務所を訪ねてきた。
「テレビ番組を一緒に作りませんか?」と言った。
その企画書を見て、僕は嫌だといった。
僕みたいにテレビを嫌いな人たちを増やす手助けをしたくないと思った。

「だけど、もし」と僕は言った。
「だけどもし、テレビを見ている人たちが主人公になれるような番組なら作りたい」と。

見ている人たちがどきどきしながら参加できる番組。
抽選に選ばれた人が参加できるんじゃなくて、ただの多数決に参加するだけじゃなくて、ちゃんと視聴者が能動的に考えて、その結果を入力することで番組が進んでいくようなそんな番組が作れるなら、僕はなんでもしたい。

いくつかのアイデアがやり取りされて、そこから半年くらい意見の交換が続いて、たくさんのすばらしいアイデアと、とてつもない勇気と、新しいものを作ろうとする強い気持ちによって、リアル脱出ゲームTVが生まれた。
僕はすばらしい人たちと仕事をした。
最初の放送は昨年の元旦。
はじめてテレビ局の中で放送に立ち会った。
心がしびれて、眠れなくなった。
なんてすごいことに立ち会うことができたんだろうと思った。

それから一年半ほど経って、今日、リアル脱出ゲームTVの最終回が放送された。
番組のヒロインである香山班長は途中で間違い、世界を救うことができなかった。
主役である謎男はただつながれたまま世界を救うためになにもしなかった。
世界を救ったのはテレビの前にいる「どこの誰かわからない人」だった。
テレビの前の誰かが、ドラマの中の世界を救った。
「どこの誰だかわからんが、ありがとう」と真藤は言った。
僕はこの台詞を言ってくれてありがとうと思った。
この台詞を聞いたときに、僕のテレビへの片思いは終わった。

テレビが力を失ったとみんなが言っていて、それは確かにそうなのかもしれない。
それでも多分ほとんどの家庭のリビングの真ん中にはテレビが鎮座しているだろう。
テレビが失ったのは、これまでの価値だ。
これからの価値まで失ったわけじゃない。
テレビというインフラを使って、もっと面白いことを思いつくことができれば、テレビの新しい価値は更新されていく。

ぶっ壊してやりたいなと思うのだ。
テレビという現象にぶら下がっていたすべてのものを。
そして、丸裸になったテレビという仕組みで何が出来るのかを考えてみたい。

こんな素敵な番組に参加できたことを心からうれしく思っています。
こんな素敵な現象の目撃者のひとりになれたことを誇りに思っています。

テレビを見てる人たちが主人公になれた最初の夜だといってもいいでしょうか。
テレビの中にあるきらびやかさは、あなたのいるそのお茶の間と繋がっていることが伝えられたでしょうか?
僕らはいつだって、僕らのドラマの主人公なのだ。
指をくわえて他人のドラマを眺めるのは、もうやめだ。

リアル脱出ゲームTVを作ってくださったすべての人に感謝を。
つまり、僕は今、何百万人という人たちに感謝しています。
本当に本当にありがとうございました。

kato takao** 27/6/2014 金曜日 05:20 | Link | TB (0) | コメント(2)
2014年06月08日
ソロライブをやりました

三年ぶりくらいにソロライブをやりました。

もう完全に音楽とは無縁の生活をしてたのだけど、友人の結婚式で歌ったり、事務所においてあるギターをぽろぽろと毎日鳴らしているうちになんだか音楽との距離が縮まってきて、家でもギターを弾くようになり、ある夜になんか突然ライブハウスにメールを送ってみたら、なんとそのお店に昔ロボピッチャーがお世話になったブッキングマネージャーの方がいて、とんとん拍子で出演が決まりました。

ライブが決まってから、こつこつと腹筋をしたり、毎晩ギターを弾いて昔の曲を思い出したりしていたのだけど、なんかすごく楽しくてそわそわした日々でした。
驚くほどたくさんの曲の歌詞とコード進行を忘れていて、もう血肉となってしみこんでいると思っていたものが、ただの頭の中の記号であったことに愕然としたりした。

ライブの前日はなんか寝付けなくて、でもいろんな人から連絡をもらったりしてとにかくそわそわしてた。
リハーサルの直前まで仕事をしていたのだけど、やはりどこかそわそわした状態だった。

リハーサルから本番までの間やることがなかったので、近くのカフェでビールを飲んでた。
携帯の充電がなくなりそうだったので、頭の中でライブでやる曲のコードと歌詞をずっと反芻してた。
店員さんが心配そうにこっちを見てたから、だいぶやばい感じの客だったんだろう。

ライブは、すごくたくさんの人たちが見に来てくれて、意外な人や久しぶりの人たちでライブハウスがあふれかえって、とても親密な、ポジティブな空間になりました。
いざ歌いだすと、声が伸びていかなくてびっくりした。あと音程をすごく意識しないと合わなかった。
僕はもともと音感の良いボーカリストではないけれど、弾き語りの時は自分の歌いやすい音量で歌えばいいから、そこまで音程のことは考えたことなかった。そこまで不恰好にずれることはなかったから。
でもこの日は音程をあわすのにずいぶん苦労した。

ライブが進んでいく中で曲がとにかくどんどん僕の中に入ってくる気がした。
もう20年ほど前に書いた曲が、質量をもった塊みたいになって何度も僕の横っ面をビンタした。
まだこんなに熱が残っているのだ、と思った。
枯れ果ててなどいないし、錆びついてもいない。
音楽は明確にここに宿り、歌われるのをずっと待っていたのだと思った。

リアル脱出ゲームを作っていて、時々ふとものすごく孤独になることがある。
世界中で受け入れられているこのゲームは、僕の意図を超えて、僕の想像を超えて、どこかの誰かに届いてしまっているような、そんな気持ちに時々なる。
お客さんと僕の間には「リアル脱出ゲーム」という別の意思があり、それが壁になって僕とお客さんはコミュニケーションを取れていないような感覚。
もちろん、それはほんの一瞬で去っていく感覚なんだけど、どうしても完全に消えることはない。

ソロライブをしているときに感じたのは、音楽の中に僕がいて、音楽を通じて直接的なコミュニケーションをしているような感覚だった。
まあ、規模があまりにも違うから比べようもないんだけど、とにかくソロライブをしていて感じた親密さは久しぶりの感覚だった。

ライブには新曲を作っていかなかった。
作っていく余裕などまったくなかった。
でも、今の僕が作ったらどんな歌が生まれるんだろうか。
実はこっそり毎晩ギターをかき鳴らしながら、新しい言葉とメロディーが出てくるのを待っている。
実はまだこっそり腹筋は続けている。
おなかから声が太い塊になって出て行かなかったのはショックだったから、次はもっとよい歌を歌う。

そんなわけで、また近いうちにライブはしたいと思っています。
しばらくは、代官山「晴れたら空に豆まいて」がホームグラウンドになりそうです。

ともかく、先日のライブにお越しいただいたみなさん、本当にありがとうございました。
次もまた期待してくださいね。
そして、先日は来れなかったみなさんは、ぜひ次の機会に。

まとめるとこういうことです。
ああ、楽しかった。
またやろう。

kato takao** 08/6/2014 日曜日 03:04 | Link | TB (0) | コメント(1)

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