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2013年09月27日
「潜水艦ポセイドン号からの脱出」を終えて

毎日ずいぶんばたばたと過ごしている。
なかなかこうして文章を書く時間をとることも出来ない。
へとへとに疲れて帰ってきて、ぱたりと寝て、目が覚めたらすぐ会社に向かう。そんな日々だ。
でも、今日はちょっと書きたいことがある。

二日ほど前に「潜水艦ポセイドン号からの脱出が千秋楽を迎えた。80回以上公演し北海道から九州まで周ったちょう大型の全国ツアーだった。最終の集客数は32000人。
この作品を僕は、僕の代表作にしようと思って作り始めた。

僕がこの脱出ゲームを作り始めたころ、日本はずいぶん他の国との関係が悪くなっていた。
僕は仲の悪い国の人たちの中に、仲がいい人がいたのでちょっと気まずい思いをしていた。
どこの国にも思いやりのある人もいればない人もいる。それを国民性と割り切って全体を悪く言うのも、全体を悪く言われるのもなんとなく違うなと思っていた。
ふと気がつくと、戦争が近づいてきているように思えた。
誰かを叩きのめしてやりたいという強い欲求が国にあるように思えた。
叩きのめしてやりたいと我々も思われているように思えた。

僕は戦争には反対したい。
だって、とてもつらそうだし、たくさんの人が死ぬし、悲しみが蔓延するし。
でも、戦争を完全に拒否したときに、軍備も持たず誰にでもいつでも侵略できちゃう国に住むのもなんとなく不都合な気がする。
僕らの目の前には本当に道が二本しかないのかなと僕は疑問に思っていた。
戦争をする覚悟を持つか、平和を掲げて対話に頼るか。
その二つのどちらがいいと思う?と突きつけられている気がした。
僕は、そのどちらの意見にもくみしない。
僕はその二つの意見の間で「葛藤」していたい。
そんなことを思っていた。

「潜水艦ポセイドン号からの脱出」において、僕はその「葛藤」をエンターテイメントに昇華できないだろうかと思った。
ミサイルを撃つことと、撃たないこと。
どちらにも言い分はあると思うけれど、撃つ前に撃たない可能性について考えるべきだろうし、撃たないと最初から決め付けるのも弱腰すぎる。
その葛藤の中に、エンターテイメントがあると僕は思った。

ミサイルを撃つか、撃たないか。
僕が作りたかったのは、その国民的感情のぶれすらエンターテイメントが包み込んでしまうのだぜ、という宣言だった。
エンターテイメントを通して、その葛藤の存在に気づけるという提言でした。

えらそうに演説するつもりはない。
戦争をやめよう!というメッセージを込めたわけじゃない。
戦争して他国を叩きのめそう!などと毛ほども望んでいない。
でもその中間には、言葉では規定できない色鮮やかで素敵なもやもやがあるのだ。
それを現出させてみたかったのです。

それが出来たかどうかはわからないけれど、今回もとんでもなくすばらしいスタッフたちのおかげで、超一流のエンターテイメントになったことだけは確信している。
たくさんの人たちにありがとうといわなくてはならない。
東京のスタッフには打ち上げでありがとうと伝えることが出来たけれど、異常に先鋭的な演出を考えてくれた京都のスタッフたちにも心から感謝したい。
各地方でこの公演を丁寧に形にしてくださったたくさんの方々に本当に感謝を。
そしてなにより、このゲームのチケットを買い、ゲームを遊んでくれて、悔しくなったり歓喜の瞬間を味わってくれたあなたに最大の感謝を。
あなたが、このゲームに戦争の影などほんの少しも感じずに楽しんでくれたことを望みます。
だけどいつか、あなたが「ミサイルを撃つべきだ!」と強く確信した時に、こっそりこの公演があなたの心に影を落とすことも望んでいます。

あの唐突に現れる伝説の守り神は、ただの空想の産物ではあるが、「ミサイルを撃たない」と決めた時にひょっとしたらやってくるのかもしれない、世界の守り神なのだ。俺の中ではね。

最後に、電車の中でぽろっと「戦争をテーマにリアル脱出ゲームって作れないのかな?」と言ってくれた飯田君に心から感謝を。
その期待に応えられたのかどうか、まだわかってないけれど。

kato takao** 27/9/2013 金曜日 03:37 | Link | TB (0) | コメント(2)

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