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今日の夜は月がきれい

きれいな月が出ています。本土でも見えているのだろうか。
またかなり昔の話。僕がここよりももっと南のシドニーという町にいたころの話。

僕の友達が部屋を探していました。他人とひとつの家を共同で住む習慣のある土地だったので、僕の友人はその習慣にならって同居人を募集している家を訪ねて回っていました。なんといっても彼はひとりで住めるほどのお金を持っていなかった。僕も引っ越しを予定していたので興味津々で彼にくっついて1日だけいっしょにまわらせてもらった。募集の広告は新聞に載っていて、ひとつの広告の大きさが100円ライターくらい。その大きさの広告が毎週火曜日と木曜日、新聞3ページくらいにびっしりと並んでいます。地区で別れていて自分の住みたい地区からまず探します。1週あたりの家賃と敷金、ベッドルームの数、煙草を吸わない人、とかいろんなことが暗号みたいに縮められた英語で書かれています。彼が選んだのはnewtownという、大学生もたくさん住んでいるなかなかおしゃれな地区。(決してきれいなところではなかったけど、結局僕もしばらくしてその近くに住んだ。いわゆる欧米社会では郊外ごとのカラーがこの国よりも顕著にある)

何件か回った後で彼は無事に彼を受け入れてくれる家を見つけた。毎週末パーティーをやって、人でいっぱいのとても楽しい家だった。ある日僕もそのパーティーに呼ばれて彼の家へ遊びに行った。最寄りの駅まで迎えに来てもらって、彼の案内で歩いていった。もちろん夜。人気のない住宅街を歩いていると家の扉を開けて道ばたに座り、月を見ている人がいた。見上げたらきれいな月が出ていた。

(今飲み物を買いに外に行ったら大雨が降り出して10分くらい雨宿りする羽目になった。幸い雨は止んであんまり濡れなかった。それでも月は出ていた。右下に金星なみに明るい星があった。)

月を見ていたのは僕と彼がいっしょにまわって断られた家の人で、お互い顔を覚えていたので話しかけた。月を見ていた人は困った顔をしていたので、よく見ると家の中から長い電話線が伸びていて彼の足元の古い黒電話に繋がっていた。彼は電話中だった。ふたり同時に話しかけられていてそれで困っていたのでした。もちろん僕に会話の優先権があるわけないので、ごめんと言ってすぐに立ち去った。

きっと好きな人と話をしていたのだろう。いいではないか。という話。


また夜更かし。不覚。

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