シンクロニシティ3

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新宿歌舞伎町には野良犬がいそうでいない。とりあえず僕は見たことない。8月になって僕は歌を歌っている友達2人(ちなみに男一人、女一人)にくっついて車に乗って東京にやってきたんだ。沖縄から大阪まで飛行機に乗ってそこで2人と合流して、そこからいっしょにやってきた。これは旅だよ。この旅で僕はたくさんの幸せなライブを見ることができたんだ。その夜にも幸せなライブがまたひとつ終わってそのまま夜の歌舞伎町で打ち上げをすることになった。ライブハウスのすぐ近くの居酒屋で新しい友達と古い友達と旅の疲れが入り交じった打ち上げだ。

僕の左で幸せいっぱいに喋り続けているのは何回も会っているけれどその夜はなかなか名前が思い出せなかった友達。沖縄にも遊びに来たことのあるヤツ。彼は僕のことはおかまいなしでひっきりなしに僕に喋り続けているけれど、とても幸せそうなので嫌な感じはまったくしなかったんだよ。きっととてもいいヤツなんだろう。でもその時僕は彼にちょっと申し訳ない気持ちになってしまったんだ。僕はライブの打ち上げが嫌いじゃないけれど、自分がミュージシャンではないのでいつもちょっと引き気味なんだ。つまり僕はその時幸せだったけれどそれと同時にとても静かだったんだ。

「こいつ俺の中学校んときからの友達なんだけどさー、今度沖縄のやんばる(沖縄本島北部の通称)に行って民宿始めんだー。だからキーポンもなんかあったら助けてやってほしんだー」と友達。彼は最近の東京のイントネーションで言う。僕の右隣で静かに飲んでいた男が彼の言う"中学校んときから友達"だった。気づいた時には僕は仲良し2人組のあいだにいたんだよ。もしかしたら邪魔だったのかなあ。邪魔になるのは好きじゃない。そう思った瞬間テンションが少しだけ上がって言葉が出た。「やんばるで民宿っていいねえ。最近は那覇らへんにたくさんできてるから、やんばるはいいんじゃない?遊びに行くよー」僕は正直に喋れば喋るほど嘘っぽくなるんだよ。もうやんなっちゃうよ。まあなんというか、僕はつまり世間話が下手なんだ。あの時伊計島でも「いや、あんまり」とか言っちゃったんだよ。

(つづく)

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