出発を待つ

この前ふとしたことで思い出しました。出発を待つ気持ち。昔はもっとこういうのがあったような気がする。

やっとのことで５０万円くらい貯金したあなたは東南アジアに旅に出ることを決めました。行くならどーんと半年間。もちろん初めての海外旅行です。いとこの結婚式の都合で出発は４月の初めです。あなたはもう航空券も用意してあとは出発を待つだけなのですよ。初めての街を歩く約３ヶ月後の自分を、ことあるごとに想像しながら生活するのですよ。初めての異国が頭の中できらきらと光っています。

もしくは、大手レコード会社をやめて沖縄に移住することにしたあなたはとりあえず夏のボーナスをもらったらいきなり退職願を出すことを決心しています。大学生活のために東京へ出て行った時以来の引っ越しです。期待と不安の入り交じった新しい環境ですよ。なぜかアロハシャツを着て働いている約８ヶ月後の自分を、ことあるごとに想像しながら生活するのですよ。

もしくは、そこそこのCDの売り上げを記録したミュージシャンであるあなたは半年後の契約更新をしない決心をしました。１年は何もしないで暮らせるくらいの蓄えしかないのですが、後先は考えないことにしてアイルランドで生活することにします。最初はダブリンの安いホテルに逗留してある程度の土地勘を養ってからアパートを見つけます。夜な夜なパブに入り浸ってシンプルでかっこいいバンドの演奏を聴きつつ、少しずつ友達が出来たりするかもしれない自分を、ことあるごとに想像しながら生活するのですよ。

いい気持ちだろうなあ。