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第3話 うんこのはじまり

僕が育ったのは本州最西端に近いかなりの田舎町で、小中学生の頃漫画を買うのは駅の売店か町の唯一の本屋「啓文堂」だけだった。スーパーは未だに町にひとつであとは全部なんとか商店。レンタルビデオ屋も昔はあったがたぶん今はない。そのレンタルビデオ屋ももと畳屋だったので入り口が銀のサッシだった気がする。「啓文堂」は今もあるか知らんけど、バードマンハウスよりも狭く(8mX10mくらい?)プラモデルから文房具、夏は花火なんかを置いていたりと田舎に典型的ななんでも少しずつあるお店でした。本が置いてあったのはそのまた半分のスペースでした。

小さいころの本屋は日曜の娯楽の大部分を占めるもので、とにかく立ち読み。たいした暇つぶしにもならんのやけど意味もなく本屋に行っていた。あれだけ行くと本の場所とか名前とか全部覚えてしまいそうなものなのに、なぜかそんなことはなくいつもずっと本棚を見ていた。

その店で初めて漫画以外の本を(自分で)買ったのが確か中学生の頃だった。それは妹尾河童さんの「河童が覗いたシリーズ」の第1号「河童が覗いたヨーロッパ」(文庫版)でした。その本はとにかく絵がたくさんあって子供が漫画から脱出するのにはもってこいの本です。内容は河童さんがヨーロッパを中心に旅をしたときの話がイラストつきで書かれていて、行く先々のホテルの俯瞰図などもたくさんあって子供の旅心、というか冒険心を強く刺激するものでした。今思えば僕のふらふら癖の原点かもしれない。

ピサの斜塔にはなぜ手すりがないのか、という河童さんの質問に答える地元民の答えになんの疑問もなく感心したり、屋根裏部屋みたいなホテルの部屋を見ながら大人になったらこんなところに住みたい、いやこっちのほうがいいかな、なんて思っていた。(ああ、ヨーロッパに行くことがこの先あるのだろうか)

この本は今の河童さんの絵に比べるととても雑で字もちょっと読みにくい。大学に入ってからいろんなシリーズを読んだ。とにかく読みやすい。河童が覗いたインド、ニッポン、仕事場、たくあん、そしてトイレ。たぶんインド編がいちばん売れているのではないかと勝手に思っている。青春のインド旅行者がよく持ってるし、観光地の安宿とか古本屋にもあったりする。

で、トイレ。うんこと言えばトイレ。この「河童が覗いたトイレ」も結構おもしろかったということなのです。各界著名人のトイレを河童さんが「覗いて」まわって精密なイラスト付きで紹介するという本です。20くらいのトイレがあってそれを通じていろんな人柄を伝えようというのも趣旨のひとつらしい。タモリのトイレにはマイルスデイビスのサインがあったり(たしか)、ある小説家は庭の端っこがトイレだったりとかそんな感じ。この本をトイレでの愛読書にしているヒトもたくさんいるはず。

ちゃんちゃん。

もし旅行に本を持っていくとしたら池澤夏樹さんの「南の島のティオ」(文春文庫)が僕はおすすめです。子供向けだけど大人が読んでもすばらしい。

ちゃんちゃん。

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