「第2話」 シドニーのうんこ
中国のトイレの話はいつも冗談まじりでおもしろおかしく語られることが多い。壁がないとか田舎に行ったら紙の代わりにわらの紐があったとか。似たような話になるのはシャクなのでちょっと悩んだ。
ので違う話を。
僕が以前1年だけいたオーストラリア、シドニーでの話。
前にも書いたけど、僕は一つの家を3人で住むというかたちで一軒家に住んでいた。僕と家主のおじさんはずっといて、もうひとつの部屋の住人だけはいつも定まらず、しょっちゅう新聞に同居人モトムの広告を出していた。その娘は当時19才で、聞くと家主のおじさんの友達の妹らしかった。いわゆるジャンキーで昔のボーイフレンドはコンビニ強盗だった。(ほんとか知らんけどそういう話だった)
でもそんなことはおかまないなく、その娘は恐ろしく聡明な娘で冗談もおもしろく僕なんかより10倍くらい頭の回転の速い、いわゆるキレるタイプのヒトでした。日曜の昼、3人で料理をしていたとき(おっさんしか料理できないんだけど)僕はキッチンの床にゴキブリを発見した。「あっ、ゴキブリ」と僕が指さして言った瞬間、その娘はおっさんが見るよりも早く、バンッ!って足で踏みつぶして「が、いた」と言った。
彼女が、職場におもしろいファックスが流れてきた、と紙切れを持ってある日帰ってきた。それはいわゆるジョークがいっぱい書かれたファックスで、うんこジョークの特集だった。いろんなうんこについて学説っぽくまじめに書かれたものがあって、それがいちばんおもしろかった。そのなかでも「沈まないうんこについて」というのがとてつもなくおもしろく、僕は涙を流し、頭がもげるくらい笑った。英語だったしここで全部紹介するのは僕にはできないけど、それは「沈まないうんこ-floating poo-」が生まれるときの体調についての説明から始まり、流しても流しても流れない様子、果てはそのまま一晩放置された場合の様子などが詳しく説明されていた。おじさんも大爆笑で彼女は僕らの反応に大満足していたようだった。
そんな彼女も結局長くはおれず家を出ることになった。(みんなの洗面所に血の付いた針が放置されていた)おじさんはこの家から出ていくよう彼女に伝えた。彼女が出ていく3日前から僕は旅行に行くことになっていたので「帰ったらいないね」と言ったら彼女は「さみしくなるね」と言って僕のほっぺにキスをした。
次に彼女を見たのは町で一番大きい映画館のチケット売り場のとなりの列で、なんと言っていいかわからず話しかけられなかった。(僕の英語が彼女に通じないことは日常茶飯事だったし。まあいい)結局それが最後でした。僕が日本に帰ってきてから、おじさんに2回だけ手紙を出した。おじさんいわく彼女は依然やってたことを相変わらずやり続けている、とのことでした。
あれから今ちょうど10年。
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