吉野朔実は他にもいいのたくさんあるけど、マイベストはこれ!
80年代後半くらいの設定で描かれた、音楽好きでちょっとスノッブな女の子と、その友人達のお話です。その頃に青春時代を過ごした人なら、出てくるバンド名や本のタイトルが懐かしいかも。
二十代前半ぐらいまでは根拠の無い自信があったっていう人、きっと多いよね?白状しますと私もそうで、自分は皆とは違うもん、なーんてひそかに思っていて、音楽とか文学とか背伸びしてわかったような気になってました。
趣味の合う友達とつるんでるのが楽しくて、世間の事なんてどうでもよかったし。遠くのものに憧れて、自分の身近なものの平凡さが嫌だった(例えば母親の世間話とか。。)プライドだけは高いんだけど、まだ何者でもないっていうお年頃。思い当たる節がある人は、この「瞳子」には共感ポイントがごろごろあるんじゃないかな。
若さゆえの傲慢さで、専業主婦のお母さんやイケイケOLのお姉ちゃんのことを普段は馬鹿にしてる瞳子だけど、その現実処理能力を目の当たりにして感心する場面も出てきます。自分の弱点というか子どもっぽさにも、薄々気がついてるんですよね。
青春時代って振り返るとすっごく恥ずかしい。でも懐かしくて愛おしい。...と、すっかり通り過ぎたつもりの余裕な気分で、最近もこの漫画を読み返してたけど、作者のあとがきにドッキリ。
「年齢を重ねると少しずつ人生の謎は解けてきますが、だからといって不安が無くなるではないし、情緒が安定するわけでもありません。」
ハイ、そーですね!少しは大人になったつもりだけど、中味はあんまり変わってないですね...。
吉野朔実は読者家でもあって、本の雑誌やユリイカに連載された書評漫画のシリーズもいいです。わたしは書評を読むのが好きなんですが、これらはマンガ仕立てなので余計に楽しい。
・お母さんは「赤毛のアン」が大好き
・本を読む兄、読まぬ兄
・弟の家には本棚がない
・犬は本よりも電信柱が好き