June 2010アーカイブ

「舟に棲む」第一巻、第二巻 つげ忠男 ワイズ出版

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「つげ忠男?聞いたことないな~」って人がほとんどだと思うけど、この人、つげ義春の弟です。兄弟揃って、メジャーではないけれどコアな固定ファンを持つ、ちょっとカルトな漫画家。作風は、似ているような似てないような...。根っこの部分ではつながってるけど表し方はずいぶん違う。弟のほうが地味だけどストレートな気がします。

さて、この「舟に棲む」。作者自身がモデルの、売れない小説家が主人公です。自営業のジーパン屋の経営は妻と息子に任せ、細々と書き続けながらも、なかなか執筆に身が入らない日々。ふらふらと近くの川に釣りに通ううち、漁師から小さな舟を買い取ります。それを改造し、時々家をあけては舟で寝泊まりするようになり...。

周りから、なぜ舟に住むのかと聞かれて、なかなか上手く答えられず人に理解されにくい主人公。本人は切実なものを抱えていても、一社会人、父親として見ると、甘えた現実逃避をしているように思われがちで、家族も困惑気味。確かに、もしこの人が自分のお父さんだったら、ちょっと大変かなぁ。

戦争を知る世代独特の過去への思いや、現代の軽さに馴染めない気持ちは、親子以上も年が離れている私にはわかるようでわからず...。一度、作者と同世代で似た境遇にあった人に感想を聞いてみたいけど、今のところまだそのチャンスがありません。

ただこの漫画、難しいことは抜きにして、読んでてなんだか和むんだな~。舟で過ごすのは面白そうだし、川辺で出会う一風変わった人達はそれぞれ魅力的で、釣りや宴会の場面は楽しそう。川に出かけたくなります。

舟に棲む (第1巻)
舟に棲む (第2巻)

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