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2003年07月01日

 そしてそのあとに何が残ったのか。だれも知らないし知りたくもない。

 たしか、死なない理由があったはずだけど、とブラウンはひとりごちてみる。彼はそれがあまりにドラマティックな独り言すぎて、自分にとって逆効果だったと悟らざるを得ない。ブラウンが知っている事はあまりにも多くて、その多さ故に逆説的にかれは真実を語る事が出来ない。
 いや、あるいは、彼はその沈黙をもって語っているとも言えるが、それは推測の域を出ない。

 僕の左手には今日4本目の500mlのビールが握られている。とても卑猥な光りをたたえている。いや待てよ、今日の晩御飯のときに呑んだのもビールだったのではないか。ではいったいこれは何本目のビールなんだろう。そして俺は何時間この場所でまどろんでいたのだろう。
 もう、ビールの話はたくさんだ。語っても語っても、次のビールが胃に流しこまれるだけのことだ。

 レッドが目を覚ますと、めちゃくちゃに汚れた部屋はきちんと整頓されていた。だれかが、とても長い時間と誠意をかけて、この部屋を綺麗にしたのだ。すべての家具が壁に対して垂直もしくは平行に設置してあり、その他の小物も、その収納物の中に丁寧に収められている。物事はジャンル事に整理され、もっとも適切な場所に、もっともレッドが生活しやすい用に配置されている様である。彼が歯を磨こうとすると、歯ブラシを手にしたそのフォロースルーで、歯磨き粉を手にする事ができる。何もかもが完璧で、彼はその配置をずらさないよう心がけないとな、と思う。
 かれはそこで1週間生活をする。とても快適で、スムーズだ。ビールを手にしたら栓抜きがあり、つめが伸びたら爪きりがある。
 この生活はとても便利で、綺麗で、失敗を許さない厳しさがある。まるで100%成功するスクイズのようだ。そんなベースボールが楽しいかい?もちろん楽しい。Mrホシノは言っていた。勝ちすぎる事はない、と。
 そんなことをいいながら彼は姿を消す。レッドは元ブラウンで、その前は僕だった。妙な縁だ。

 そしてそのあとに何が残ったのか。だれも知らないし知りたくもない。
 そしてそのあとに何が残ったのか。だれも知らないし知りたくもない。
 そ。

Posted by kato takao at 2003年07月01日 05:14 | TrackBack
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