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2015年03月29日

さて、企画の作り方について考えるには、まず「企画とは何か?」について考えなくちゃいけません。
僕は企画とは「ジャンルをつくること」だと思っています。


たとえばなんらかの物語をあなたが紡ぎたいと思ったときに、あなたが最初にすべきことはどんな小説を書こうか考えるのではなくて、「どのジャンルで私の物語を紡ごうか」と考えなくちゃいけない。
世の中にはたくさんの表現の場があります。
映画、小説、マンガ、演劇、ゲーム、音楽、広告などなど。
はたしてどのジャンルで自分が物語を表現したいのかを考えなくちゃいけない。
ほとんどの人たちが、「わたしは音楽が好きだから」という理由で、そのジャンルの作品を作ろうとします。
でも、実はジャンルを飛び越えることなんて簡単なことだから、自分に最もあった表現の場所を見つけなくちゃいけない。

そして、かならず疑わなくちゃいけないのが「はたして、今世界にあるジャンルの中に自分の物語をぴったりと表現するものがあるのかどうか」ってことです。
今すでにあるジャンルの中に、はたして本当にあなたが表現したいことを表現できるジャンルがあるんでしょうか?
このことをいつでも疑っていなくちゃいけない。
小説の力を妄信しちゃいけない。
演劇の力を妄信しちゃいけない。
広告の力を妄信しちゃいけない。
マンガの力を妄信しちゃいけない。
それらの表現は「誰かが作ったジャンル」であって、あなたがつくったものではない。

「ジャンルなんてつくれないよ」とあなたはいうかもしれない。
まあそうですよね。ジャンルをつくるなんてとてもじゃないけど無理のように思える。
でも、「ジャンルをつくるくらいの志」で生きることはできる。
「ジャンルをつくるくらいの志」で今あるものを疑うことは出来る。

過去に誰かが作ったジャンルを妄信するのはやめよう。
それがたとえ世界中で認められているシステムであったとしても。
せっかく自由になりたくて会社を辞めたのに、「音楽で生きていこう!」としか考えられないなんて、そんなのまったく不自由です。僕がそうでした。

良い小説を書くための企画を否定するわけではありません。
良い漫画を描くためにも、よい演劇を上演するためにも「企画」は当然必要です。
でも、「企画」という言葉の最も根源的な意味は「ないものを作り出す」ことだと僕は思っています。
「企画なんて、すでにあるものとあるものと結びつけるだけのことだよ」とかいう意見が世の中を席巻しています。
もちろんそれだって正しいのかもしれない。僕だって、そういう企画の作り方をすることはよくある。
でも、やっぱり僕はジャンルごと何かを創出するような、ムーブメントを巻き起こすような何かを思いつきたいと思うし、それを「企画」だと思いたい。

最高の映画を作った人と、「映画」を作った人とどっちがすごいんだろうね。
どっちもすごいと思うけれど、僕は後者のほうがすごいと思います。
なぜなら、後者ほどすごい「企画者」はいないと思うからです。

で、これってすごく概念的なことであまり企画を作るうえで役に立たないことのように思えるけど実はそうじゃない。
実用的に言うと、「視点を一つ上からにする」ってのはどうやら良い企画者の持つ最低限の能力のようです。

たとえばクライアントから「駅貼りポスターのよい企画を考えてください」と言われたときに、「この企画に本当に適切なのは駅貼りポスターなんだろうか?」と考えることは視点が一つ上にある考え方だと思います。
「駅貼りポスター」という限定からはじまるクリエイティブには制約がある。でも、その制約を利用してすごいクリエイティブを生み出す人もたくさんいます。ただ、まずは「なぜ駅貼りなんだろう?駅貼りじゃなくちゃいけない理由はなんだろう?」と考えないと、駅貼りの良い企画は生まれないと思います。

うわ、広告のことなんかぜんぜん知らねえのに、広告の例を出しちゃった。

たとえば、僕で言うと。
「日常はもっとすばらしくあるべきだ」というメッセージを伝えるために、音楽をやったり、文章を書いたししていました。
でも、結局のところ、そういう「作品」って日常とは違うところで存在してるんですね。
だかr、あ「日常の中にある作品」を作らなくてはならないと思った。
だから、日常の中にあるフリーペーパーをつくったり、日常と地続きにある「イベント」を表現の場所に選んだ。

この辺の話はとても入り組んでる。
世の中のほとんどの企画屋は、今自分のいる場所がそこだから、そこで出来る企画を考えている。
でも僕はそれは企画の幅を狭めていると思います。
プロの企画屋でお金をたくさん稼いでいる人ほど、自分のクリエイティブの幅を狭めているのは滑稽ですね。

企画ってのは「いままだないもの」をつくりだすもので、「ジャンルごと作り出す」くらいの勢いで考えないとダメで、もしそれが出来ないとしても、今求められているクリエイティブを一つ次元をあげて考えるという行為自体が「企画」であると僕は思います。

そして、今はないジャンルを生み出さなくてはならないほどすごいメッセージがないと、「企画」ってのは生まれないんじゃないかと思います。

Posted by kato takao at 2015年03月29日 05:47 | TrackBack
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