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2009年05月21日

 薄紅色の華やかな死が、気がつきゃ横で眠ってたんだ。
 僕は変わらず不安な顔で、生きていくための歌を探した。

 何かを定めてしまおうと思って、でもそんなふうにならなくて、じゃあどうしようかなと思っていると、いろんなことが不安定になってしまって、たぶんこのままでは良くないことになるなと、思う。

 眠っている時間と起きている時間の境目があいまいになってきて、どうやら今いる場所は最初にいた場所とずいぶん離れている。僕が望んだ場所からもずいぶん遠い。

 きっと彼女は今頃眠ってるだろう。
 月影はやさしくそこにいるだろうか。
 どうか、なにも彼女を傷つけませんように。
 僕が見ていない間も、彼女が無事でありますように。

 夢が続かないんですよ、と僕は君にいう。
 前はね、ふと目が覚めてももう一度眠ったら続きが見られたんだ。
 君はいう。あなたもう大人になってしまったのよ。
 大人になったのか、僕は。くすくす。だってもう180cm以上あるからね。
 君は笑って、僕に少し触ってくれる。そして言う。夢の続きは、目が覚めた世界で見たらいいわ。
 
 それはとても良いアイデアのように思える。
 僕は真っ赤な帽子をかぶって、夢の続きを生きる。生きる。
 メリーゴーランドを斬り殺し、べちゃべちゃのビスケットを君になすりつけ、軽やかに空をスキップする。
 僕の鼻歌は世界を3周半して、誰かがこっそりと食べたピーナッツバターの空き瓶に吸い込まれる。
 鼻歌は音符になってそこらじゅうの人たちを小突きまわす。みんなあざだらけになって笑ってる。
 彼らの作ったたくさんの切り傷から、こまやかなばい菌がちゅうちゅう吸い込まれていく。バイ菌は彼らを蝕むが、彼らはやけに陽気そうだ。けばけばしい色の輝きが彼らからほとばしる。
 世界が生まれながらにして抱えた原罪を、そのばかげたダンスで贖ってくれているのかもしれない。

 そんな夢の続き。
 忘れ物は計算ドリルの42。
 頭をかち割って出てきたのは、真っ赤な金魚。
 ちぎれて飛んだ僕のベロは、月影に守られて眠る君のほほにべちゃりとくっついた。
 
 もちろん君はおだやかに眠り続ける。
 僕の祈りは、いつも叶う。

 これは。
 この夢は、どこからやってきたのか。
 助けを求めて見渡しても誰もいない。
 君も、彼女も、彼も、だれもいない。

 踏切の音が聞こえる。
 朝がやってきたのだ。
 朝は夜を真っ白に塗りつぶし、彼らの罪を隠そうとする。
 彼らは真実を凌辱し、欺瞞と朝までやりまくった。
 でも、その行為も今は跡形もなく。
 かすかな精液のにおいが、残っているだけだ。

 いつまででもだ。
 いつまででもこのテキストは続く。
 君の見ているディスプレイでいうと、縦に2kmは続くだろうね。
 だから、いったん仮にここで終わりにしなくてはならないだろう。

 ああ、誰かが目を覚ました。
 2階から誰かが降りてくる。
 ここには僕しかいないのではなかったか。

 それにしても、もう終わりにしなくてはならない。
 僕の指は変形して、ずいぶんいやらしい形になってしまった。
 でもとても感じのいいいやらしさだよ。
 セクシーと言い換えてもいいかもしれない。
 ささやかなセックスアピールが指に宿ったというと、少し言いすぎかな。はは。

 どうしよう終わらせるための言葉が見つからない。
 このままじゃ朝が昼を連れてきてしまうよ。
 カラスが外で狂ったように泣き叫んでいる。
 狂ったカラスほど滑稽なものはない。
 あらゆる狂ったものの中で「狂ったカラス」が最高だ。
 漆黒の狂気だなんて!ああなんてださい!鴨川沿いにいるノースリーブの女の子くらい最高だ!

 もういくらなんでもだめ。
 いつまでもは続けられない。 
 いや、続けられるけど、続けてはいけない。
 僕はもう終わりにしなくてはならないだろう。
 僕は終わりを選ぶ。
 おしまいはきっと突然やってくる。
 終わりほど決定的にやってくるものはない。
 終わりほどくだらないものはない。
 あいつらは全員機関銃で打ち抜かれて、ザクロみたいになっちゃえばいいのに。

 さようなら。
 さようなら。
 またいつか会えるといいけど。

 もう朝ですよ。

Posted by kato takao at 2009年05月21日 06:09 | TrackBack
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