薄紅色の華やかな死が、気がつきゃ横で眠ってたんだ。
僕は変わらず不安な顔で、生きていくための歌を探した。
何かを定めてしまおうと思って、でもそんなふうにならなくて、じゃあどうしようかなと思っていると、いろんなことが不安定になってしまって、たぶんこのままでは良くないことになるなと、思う。
眠っている時間と起きている時間の境目があいまいになってきて、どうやら今いる場所は最初にいた場所とずいぶん離れている。僕が望んだ場所からもずいぶん遠い。
きっと彼女は今頃眠ってるだろう。
月影はやさしくそこにいるだろうか。
どうか、なにも彼女を傷つけませんように。
僕が見ていない間も、彼女が無事でありますように。
夢が続かないんですよ、と僕は君にいう。
前はね、ふと目が覚めてももう一度眠ったら続きが見られたんだ。
君はいう。あなたもう大人になってしまったのよ。
大人になったのか、僕は。くすくす。だってもう180cm以上あるからね。
君は笑って、僕に少し触ってくれる。そして言う。夢の続きは、目が覚めた世界で見たらいいわ。
それはとても良いアイデアのように思える。
僕は真っ赤な帽子をかぶって、夢の続きを生きる。生きる。
メリーゴーランドを斬り殺し、べちゃべちゃのビスケットを君になすりつけ、軽やかに空をスキップする。
僕の鼻歌は世界を3周半して、誰かがこっそりと食べたピーナッツバターの空き瓶に吸い込まれる。
鼻歌は音符になってそこらじゅうの人たちを小突きまわす。みんなあざだらけになって笑ってる。
彼らの作ったたくさんの切り傷から、こまやかなばい菌がちゅうちゅう吸い込まれていく。バイ菌は彼らを蝕むが、彼らはやけに陽気そうだ。けばけばしい色の輝きが彼らからほとばしる。
世界が生まれながらにして抱えた原罪を、そのばかげたダンスで贖ってくれているのかもしれない。
そんな夢の続き。
忘れ物は計算ドリルの42。
頭をかち割って出てきたのは、真っ赤な金魚。
ちぎれて飛んだ僕のベロは、月影に守られて眠る君のほほにべちゃりとくっついた。
もちろん君はおだやかに眠り続ける。
僕の祈りは、いつも叶う。
これは。
この夢は、どこからやってきたのか。
助けを求めて見渡しても誰もいない。
君も、彼女も、彼も、だれもいない。
踏切の音が聞こえる。
朝がやってきたのだ。
朝は夜を真っ白に塗りつぶし、彼らの罪を隠そうとする。
彼らは真実を凌辱し、欺瞞と朝までやりまくった。
でも、その行為も今は跡形もなく。
かすかな精液のにおいが、残っているだけだ。
いつまででもだ。
いつまででもこのテキストは続く。
君の見ているディスプレイでいうと、縦に2kmは続くだろうね。
だから、いったん仮にここで終わりにしなくてはならないだろう。
ああ、誰かが目を覚ました。
2階から誰かが降りてくる。
ここには僕しかいないのではなかったか。
それにしても、もう終わりにしなくてはならない。
僕の指は変形して、ずいぶんいやらしい形になってしまった。
でもとても感じのいいいやらしさだよ。
セクシーと言い換えてもいいかもしれない。
ささやかなセックスアピールが指に宿ったというと、少し言いすぎかな。はは。
どうしよう終わらせるための言葉が見つからない。
このままじゃ朝が昼を連れてきてしまうよ。
カラスが外で狂ったように泣き叫んでいる。
狂ったカラスほど滑稽なものはない。
あらゆる狂ったものの中で「狂ったカラス」が最高だ。
漆黒の狂気だなんて!ああなんてださい!鴨川沿いにいるノースリーブの女の子くらい最高だ!
もういくらなんでもだめ。
いつまでもは続けられない。
いや、続けられるけど、続けてはいけない。
僕はもう終わりにしなくてはならないだろう。
僕は終わりを選ぶ。
おしまいはきっと突然やってくる。
終わりほど決定的にやってくるものはない。
終わりほどくだらないものはない。
あいつらは全員機関銃で打ち抜かれて、ザクロみたいになっちゃえばいいのに。
さようなら。
さようなら。
またいつか会えるといいけど。
もう朝ですよ。
Posted by kato takao at 2009年05月21日 06:09 | TrackBack
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