体からいろんなものが、はらはらと零れ落ちていきます。
かぴかぴになっちゃった肌から、無機質な残骸がこぼれていって、僕はもう以前の1/4くらいの重さになってしまった。
これは、どういう事態なんだろう。うまく処理できていない。まず、現状を認識していない。何が飽和していて、何が不足しているのか。
そして、対処の仕方がわからない。
ここには僕がいて、他にはなにもない。
僕は誰かの声が聞きたくなって、電話をしてみるのだけど、誰かが受話器の向こうで話し出すと、とたんに話したいことがなくなってしまうのです。
「じゃあ、あの話は嘘だったんですね」と君はいうけど、それが本当に嘘なのかどうかは、僕が一番知りたいことなんです。
嘘ってなんなんだろう。ほんとじゃなかったら全部嘘?
仕事を終えて、僕は家へ帰ってくる。そこには安らぎみたいなものが存在していて、温かいシチューとか、そういう形而上の安らぎがあるはずだ。
僕は鍵を取り出す。ただいまをいう準備をする。ドアのノブを握る。
ドアは開かない。
向こうでは誰かの話す声がする。幸せそうな音だ。
幸せそうな音?幸せそうな音ってなんだ。幸せな人間が発する音か。
ドアの向こうでは話し声がする。幸せそうな音で。
彼らは、次の殺人の計画を練っていた。幸せそうな音で。
標的は僕だった。僕は、指の先から、とてもゆるやかな毒をしみこまされて死ぬみたいだ。
きっと幸せそうに死んでいくんだろう。
まるで、体が自分のものじゃないみたいだ。どうしよう。
はらはらと、体から落ちていったものが、きっと僕だったのだ。
今残ってるのは、じゃあ、なんなんだろう。
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