じゅ:愛ちゃんはものおじとかしないタイプ?
愛:いやいや、私、小学生のときはものっすごい人見知りだったんですよ。学校でも誰かと話すよりも一人でいたほうがいいみたいな。友だちもいたけど信じられなくて心を閉ざしてた時期もあったんですけど、小学校の5年生で今住んでるのどかな地域に引っ越しをしたら、みんなのんびりしてて、そういう所で生活してたら心を開くようになって。そして高校生くらいからですね。みんなの前で発表して自分の想いを伝えるっていう機会がすごい多い学校だったので、それがきっかけで、大人の人とか初対面の人にも自分の想いをしっかり伝えられることができるようになりました。ライブに一人で行き始めたのも高校生くらいの頃で、インストアイベントとかライブハウスとかだったらミュージシャンの方としゃべる機会もあるじゃないですか。それが自分にとってのいいトレーニングだったのかもしれないです。今も初対面のアーティストさんとかに挨拶するのも全然大丈夫。ライブハウスでもこの人めっちゃいいと思ったら、面識なくてもしゃべりかけにいって、じつはDJやってて…出てもらえませんかみたいなことも言えるようになって。だからね、高校生の頃が私の人生の中でターニングポイントになってますね。
じゅ:愛ちゃんの話を聞くだけでいい学校っていうのが伝わってくるわ。なんというか生きるうえで大切なことを教えてくれる学校やね。
愛:そうそう。人種差別とか部落差別とかや、他にも身体の障害を持ってる人もいたし、在日朝鮮人の人もいたし留学生もいたし。考え方が広くなったというか。当事者から話を聞いたりして、人を思いやる気持ちとか優しさを教えてもらったり。
じゅ:ちょっと話がとぶけど、一人の音楽ファンからDJになったわけでしょ。そうして今、ミュージシャンに接するときは、どういう態度でいってるの?
愛:今はやっぱり一線をひきますね、絶対に。
じゅ:ああ、やっぱり。
愛:「私、めっちゃ好きでー!」とか極端な話、「載ってる雑誌全部スクラップしてます!」とか言われたらちょっとひくじゃないですか…笑。
じゅ:確かに。
愛:その時点でその人は心を閉ざしてしまうでしょ。仕事は仕事なのでそれは封印しようと思って。でもDJになりたいなと思ったときはすごい悩んだんです。私の友だちでイベントのスタッフを目指していて、同じように悩みを持った人がいて。ライブ行っても後ろのほうで見てなあかんとか、前に行って楽しまれへんとか考えたときに、やっぱり私はライブを楽しむことを取りたいから専門学校辞めるわって人もいて。大好きなことを仕事にするっていうのは、結構苦しい決断だと思うんですよ。でも割り切ってそれ以上に、素敵な音楽をいっぱいの人に伝えたいっていう想いが強かったので、今は気にならないです。実際DJになってもライブでは純粋に楽しんでるし。あのね、ライブでの関係者のイメージって腕組みして…
じゅ:背広着て…
愛:そうそう、微動だにしないみたいな。でもアーティストさんにしたらそれってうれしくないじゃないですか。楽しかったら楽しかったで普通に楽しむことが、ありがとうの気持ちを返せることかなって思って。やっぱり楽しまないとお客さん目線でライブレポとかできないし、そのアーティストさんを全然知らないリスナーさんにライブに行ってみようかなっていうきっかけづくりには絶対できないと思って。だから私のポリシーとしては、DJという立場でライブを見に行きますけど、お客さんの目線でライブを見ようと思って。いろんな角度で見るんですよ。最初後ろで見たら斜めから見てみたり。途中であまりにも楽しくてテンション上がって、この楽しさを伝えたいなと思ったら前のほうで見たりとか。全然違うんですよね。後ろで見てるのと、前のほうで盛り上がってるお客さんの中で見るのとでは。
じゅ:違うよねえ。
愛:空気間も違うし、熱気も違うし、感じるバイブスも違うし…
じゅ:ステージからガッーってくるエネルギーとか…
愛:そうそう。だからどんなにこの仕事をこれから長くやっていこうとも、こういう気持ちは忘れたくないなって。
じゅ:DJとしてやってはいるけれど、ファンはファンだしね。
愛:そうそう、一人の音楽ファンでいたいなと思うんですよ。
じゅ:ファンの代表みたいな感じ?
愛:というよりは、ファンとミュージシャンの橋渡しっていうか。ミュージシャンの方は命かけてライブしてるし、人生かけて音楽作りしてるわけじゃないですか。そのCDを作ってお店に置いていたとしても気づかれない場合もあるじゃないですか。
じゅ:あるねえ、多々あるよねえ。
愛:それがたまたまつけたラジオで、アーティストの人がこんな想いで作ったんだよとか、こういうエピソードから生まれましたとかという話をすることによって、もしかして自分の記憶とリンクしてぐっとなったり、ライブ行ってみようとか、CD買ってみようとか。もしかしてライブに行くことで、その人のもやもやしてる悩みが解消されたりとか、大きく言うと人生が変わるかもしれない。それって音楽をやってる人にとっても大事なことや思うし。なんかきっかけがないとアーティストさんの想いって知られないじゃないですか。それを伝えるべき仕事やなと思うし。逆にアーティストさんの立場から見ると、ビッグアーティストになればなるほど、ファンの人となかなか触れ合うことがないかもしれないし。そんなアーティストさんにもファンの想いを伝えたいというか、ファンの人がこういうことを言ってたとか。だからインタビューのときは、リスナーさんからのメールは絶対に全部読みたいと思ってるんですよ。可能な範囲で、アーティストさんにメールを渡したりもしてます。それは自分がリスナーのときに想いを込めてFAXとかメールとか送って、読まれるかなってドキドキしながら待ってたときの想いが生かされてるんですよね。
じゅ:うん、そういう気持ちって忘れたくないよね。
愛:そうそう。そういうのって(ライターの仕事にも)あるんじゃないですか?
じゅ:うん、わかるよ。すんごいよくわかる。
page 3(近日公開)に続きます。