Twitterなどで、今回の東京版「人狼村からの脱出」のシステムについて、取りざたされている。まだ、公演中で、本来はあまりこういうことは書きたくないけれど、ずいぶんたくさんの人たち(関係者も含めて)が発言してしまっているので、あえて書きます。
本当にこんなこといいたくないけれど、痛恨の極みだけれど、今回のリアル脱出ゲームは「ランダムチーム制」です。
これまで一度も事前にオフィシャルにシステムを発表したことはありませんが、あえて今回は発表します。
発表する理由は二つ。
1、なんだか、twitterが盛り上がっちゃってるから。
2、再演だから、本気で調べれば事前にわかってしまうことだから。
そして、これまで発表しなかった理由は以下の1つ。
1、物語はいつ始まってどんなふうに進むのかわからないものだから。
何度も言ってきましたが、SCRAPは謎解きイベントを作る会社ではありません。
「物語に入ってしまったようなエンターテイメントを作る会社」です。
古今東西のさまざまな物語の中で、登場人物がこれから起こることを知っている物語はありません。
だから、われわれはゲームのシステムを発表しません。
どんな物語が待っているのか、ただ楽しみにお越しいただきたいからです。
お越しいただいた方すべてに、心から満足してもらうことは出来ないかもしれません。
さまざまな不満を抱えて、「もう二度と来るか!」と思って帰られる方もおられるかもしれません。もしくは、公演によっては「以前SCRAPのイベントで味わったような楽しみが得られなかった」と思う方もおられるかもしれません。
僕らはそれらの言葉を真摯に受け止め、とても悲しく思ったりしますが、だからといって「誰にとっても均一に楽しめるエンターテイメント」をつくろうとは思っていません。
「異様に濃い、自分のためだけのエンターテイメント」を作りたいと思っています。
あえて言わせていただくと、世界中の人がみんな一定レベルで楽しめるエンターテイメントはすでに存在します。たとえば、スーパーマリオやドラクエやFFはそういうエンターテイメントだと思います。
しかし、我々はそういったエンターテイメントに強い敬意を示しつつ、「主人公を操るのではなく、自分が主人公になれるエンターテイメントはどこにあるのか?」を模索し続けてきた会社です。
横柄な言い方になってしまうかもしれませんが、エンターテイメントを作るのには絶対に哲学が必要です。われわれの哲学は、「参加者を物語の登場人物にさせる」ことです。
そして、上質な物語とは予測不可能なものです。
今回の「ランダムチーム制」についてあえて言います。
どうぞ、ご友人とお越しください。
そして別々のチームになって楽しんでください。
その後、きっと友人たちが歩んだ別の物語の話をすることができるでしょう。
自分のチームの物語を話すことが出来るでしょう。
われわれの人生は、時に平坦ですが、このゲームを通して、たった一時間が何倍にも濃密になるはずです。
それぞれのチームで生まれた奇跡や、軋轢や、勘違いや、ひらめきは、むしろ別々のチームにされた友人とこそ共有してください。
本当に豊かなエンターテイメントは、それをプレイしている一時間で終わるのではありません。ゲームが終わってからこそが本番なのです。それをご友人と共有できるのが、われわれが提供する「リアル脱出ゲーム」です。
フィクションの裏側を製作者が書くべきではないと僕は考えています。
しかも、まだ、プレイしていない方々にもこのテキストは目に触れてしまうかもしれません。それはとても残念で申し訳ないことですが、あえて書きました。
ランダムだから良いとか、友人と一緒に遊べるからいいとか、さまざまな意見があるのはわかります。
しかし、ゲームには、ルールも必要です。
そして、そのルールは絶対的でなくてはなりません。
なぜならそのルールは、製作者の哲学に端を発しているからです。
それが揺らいでしまっては、すべてが揺らぎます。
哲学が揺らいだときに「矛盾」が生じます。
矛盾が生じた物語ほどつまらないものはありません。
さまざまなことを今後も改善し、少しでもたくさんの方々に楽しんでいただきたいとは思っていますが、僕らには守らなくちゃならないものもあります。
これからも、まだこの世界にないエンターテイメントを生み出していきたいと思っております。
これから、どんなことがあるかわからないけれど、ひとまず今はそんなことを思っています。
どうぞ、あしからずご了承ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
SCRAP代表 加藤隆生
Posted by kato takao at 2011年06月28日 03:52 | TrackBack私はリアル脱出ゲームの大ファンです。
又、彼もリアル脱出ゲームの大ファンです。
今回コメントさせていただいたのは、一つお聞きしたいことがあったからです。
HPに問い合わせのリンクが無かったので、ここに伺わせていただきました。
もし宜しかったら、上記のメールを頂ければ・・・と思います。
宜しくお願い致します。
この記事に書くコメントではないかもしれませんが、
ただ、加藤さんに感謝を伝えたくて、ここに書きます。
SCRAP十周年、おめでとうございます。
そして、本当に、本当にありがとうございます。
僕は今、まだ、生きてみようと、思えるんです。
「死にたくないな」って、今は思えるんです。
ずっと、辛い事が続いて、最近は本当に辛い事があって、
もう、いいかなって思ってしまうことも多かったこのごろなんですが、
ぼうっと最新号を手にとって読んでみて、
SCRAPのイベントのページを見て、
このブログでの加藤さんの言葉を読んで、
ロボピッチャーの「限りある世界で」を聴いてるうちに、
ぼろぼろ涙が出てきて、
まだ、この世界で生きてみようって思えるようになりました。
急に重い話をしてすみません(笑)
けれど、前を向くきっかけになったんです。
本当に感謝しています。
すくなくとも僕には、届いています。
死にたくないです。ハッピーになりたいなって、思います。
加藤さん、頑張ってください。
京都から応援しています。
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