夫婦二人と猫一匹の休日を、毎回10ページほどで描いた短編集。
ささやかでほのぼのとした日常を描く、というだけじゃなく、少し不思議な出来事が混じる独特な作風で、絵柄にもちょっとクセがあります。
例えばある日の日曜日はというと...。昔の日記を見ていて、三年前のクリスマスのページが何かでべったりくっついているのを発見した妻。少しはがしてみると、記憶にない住所が書いてある。二人でその住所の辺りへ行き、なにか思い出すかと歩いてみるが...。(『めくれた記憶』
また別の日曜日。近所の不動産屋の貼り紙で、入居者の条件を「太った人不可」としているアパートを見つける。好奇心にかられて見に行くと、出入り口が極端に狭い四畳半だった。どんな人が借りるんだろうと気にしていたら、しばらくしてその部屋に明かりがついた。後日、その窓に太った人物の影が写っているのを見かける...。(『ダイエット・アパート』)
この本、初版発行は今年の1月ですが、実は描かれたのは15年以上前。当時ビッグコミックスピリッツに不定期に掲載されて、その後単行本になった「三好さんとこの日曜日」の中から、単行本未収録の作品を新たに選んで編集したものだそうです。「三好さんとこの日曜日」がお気に入りだったわたしは、今回どんな事情であれ続編が読めたのがうれしかった。
同時に発売された「海辺へ行く道 夏」は、"三好さんち"とはまったくの別物。これまたちょっと幻想的で個性的な作品でしたが、わたしはやっぱり、三好さんちの方が好きだな。