歌舞伎町探偵セブンというコンセプトを思いついたときは本当に震えた。
こりゃとんでもないことを思いついちまったなと思った。
その場にいる誰もが興奮していた。
どういう流れでその思考にたどり着いたのかはっきりとは覚えていない。
でも、それはSCRAPのクリエイティブチームが全員揃う合宿でのことで、丸二日間ずっと全員で閉じ込められて「東京ミステリーサーカスでやりたいこと」というテーマでアイデアを出していた時だった。
ああ、そうだ思い出してきた。
そもそも最初の頃の東京ミステリーサーカスは、ビルを全部借りるつもりだったんだ。全部で10フロアを使い切る壮大なプロジェクト。
予算も今の倍以上かけた夢見がちなプロジェクトでした。今考えると5フロアでもぼろぼろになってるんだから10フロアなんて絶対無理だった。
で、どこかで誰かが我に返って「これ半分の方がよくね?」ってなって地下一階から四階までの地に足の着いたプロジェクトになった。
ただそれに伴って、本当はビルの中をぐるぐる回遊する謎解きイベントを三つほど走らせようとしていたプランがとん挫した。
5階は密林、6階はSFとかをテーマにして、それらをぐるぐる回って謎解きするんだ!とか言ってたんだけど、なんせフロア数が半分になったからじゃあもう無理じゃねえかって。
あんとき誰が最初にそれに気づいたのかな。
俺だったような気もするし、他の誰かだったような気もするし、でもどっちにしてもあの合宿の空気が思いつかせたものだったような気がする。
とにかく誰かが気づいた。
「そうだ!別にビルの中だけじゃなくていいじゃないか!外に出しちゃおう!!!」と。
これまでの歴史の中で、アミューズメントパークやテーマパークを作った人たちの中でそんなこと思いついたことある人いろんだろうか。
自分たちがつくる施設の外でゲームを作るなんて!
僕らはちょうどポケモンのリアル脱出ゲームを外で作っていたり、東京メトロさんと地下鉄に乗りまくる謎解きを作っていたので、思いつきやすかったのかもしれない。
ましてや僕らがテーマパークを創ろうとしていた場所は歌舞伎町だった。
日本中探してもここより物語の舞台っぽいところはそうそうないだろ。
じゃあさ、東京ミステリーサーカスを拠点にして、歌舞伎町を歩き回るゲームを創ろうよ!
って誰かが言った。
僕は震える手で「歌舞伎町 居抜き物件」で検索した。
手ごろな値段の物件が何百件と出てきた。
できる!と思った。
お金をかけて内装なんかしなくていい。
街みたいなテーマパークを創らなくていい。
そこにはもうすでに街がある。
そこにはもう本当の内装の整ったキャバクラやバーやホストクラブがあり、居抜きの物件を僕らで借りればいいのだ。
物語の舞台はすでに整ってる。
あとは、物語を作るだけだ!
あんな風に興奮したのは久しぶりだった。
新しい仕組みを見つけたと思った。誰も見つけてない宝物を見つけたんだ。
街をそのまま使って、そこに物語を埋め込めばいい。
すべてのハードはすでに完成していて、あとはソフトを埋め込むだけだと気づいたときは、本当に幸せな気分だった。
すべてのパーツはもうそろっていて、あとは物語を作るだけだったんだ!!!
そこからはもう雪崩みたいにアイデアがあふれ出てきた、
だったらもういくつもの物語が重層的に織りなす構造にしようとか、歌舞伎町で街歩きなら「私立探偵 濱マイク」とか「探偵はBARにいる」みたいな探偵ものがいいよねとか、キャラデザインはこの人にお願いしたいとか、音楽はこれだとか、脚本はこの人だとか、謎と物語の比率はとか、そういうことがあとからどんどん決まっていった。
そこから数か月間は僕は歌舞伎町の不動産を回りまくり、契約しまくり、全部でいったいいくつの店を作ったのか、もうよくわかんないけど、とにかく回遊型謎解きゲームのチェックポイントのためだけに歌舞伎町の居抜き物件を借りまくった。
どんだけお金が出てったのかよくわかんないけど、そんなのどうでもよかった。
こんなすごい思い付きを形にできるという多幸感で走り続けてた。
社内クリエイティブチームも最高のブッキングをした。
歌舞伎町探偵セブンというプロジェクトのために、会社のあらゆる可能性を注ぎ込んだ。
みんなで歌舞伎町を歩きまくって、この街に適切な物語について考え続けた。
出来上がったこの6個の事件をゲームを俯瞰してみて、いまざわざわとしてる。
これは、ひょっとしたら僕らは、とてつもないものを創ってしまったんじゃないか。
僕らが想定したよりもずっとすごい「物語体験」を生み出してしまったんじゃないかと思っている。
このゲームは、とうとう本当の意味であなたを主人公にしてしまうだろう。
あなたたちを、特別なチームにしてしまうだろう。
日常と地続きなこの場所でする特別な体験は、あなたの日常に忍び込み、あなたの普段の生活もミステリアスにしてしまうだろう。
あなたは歌舞伎町で起こる数々の不可解な事件の捜査に乗り出す。
あなた自身にもいくつもの謎がある。
あなたには歌舞伎町探偵セブンに入らなくてはならない理由がある。
あなたは捜査しなくてはならない。そして解決しなくてはならない。
あなた自身がどうしても乗り越えなくてはならないあの事件を解決するために。
あなたはキャバクラやホストクラブやバーやスナックを訪れ、その中にいる人々に問いかけ、聞き込みをし、推理を働かせ、事件の結末に迫らなくてはならない。
この街にはあなたが救わなくてはならない人がたくさんいるのだ。
そう。そしてそれは、あなたが今暮らしているその世界と同じことなのだ。
どうか、歌舞伎町探偵セブンを遊んでほしい。
あなたの感じたことのない感情がそこにはあるから。
あなたが観たことも聞いたことも読んだこともない物語がそこにあるから。
https://mysterycircus.jp/tanteiseven/
SCRAP 加藤隆生
Posted by kato takao at 2017年12月22日 12:10 | TrackBack
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