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2017年12月11日

東京ミステリーサーカスオープンまであと一週間くらいになった。
1年以上前から僕はこのプロジェクトをああでもないこうでもないと考え続けてきた。
オープンしてからだといろいろとバイアスがかかってしまう気がするから、オープン前に「なぜ東京ミステリーサーカスをつくろうと思ったのか」をまとめておきたい。いつかこのプロジェクトが迷走してしまった時にまた戻ってこれるように。

まず最初の理由は、ぼんやりと今あるリアル脱出ゲームというフォーマットに限界を感じ始めていたこと。
SCRAPには新しいフォーマットが必要だと思っていた。
そこに割くべき制作費や期間や人件費や維持費などはどんどん僕らを窮屈にしていったし、過去の成功体験が会社を硬直させている気がしていた。
どんどんみんなが新しいことを思いつけるフォーマットだったはずだけど、フォーマットの中にいくつもの定型が出来上がり、それを壊そうとする力が失われているように思っていた。
なんとかそのフォーマットを壊そうと、リアルタイムループゲームやプロジェクションテーブルゲームなどを個人的に思いついてはみたけれど、それがどんどん広がってリアル脱出ゲームを駆逐するような存在にはならなかった。

そもそもこれまでのリアル脱出ゲームの発展は、ラッキーの連続だった。
さまざまな分野の人たちから声をかけられ、その刺激で新しいことを思いつけた。

ハード面からは様々な施設から声をかけていただいた。
スタジアムや遊園地、テーマパークなどの大きなところから、劇場、廃墟となった病院、廃校になった小学校、使われなくなった倉庫、ギャラリー、ホテル、郵便ポスト、地下鉄、鉄道、コンビニ、ショッピングセンター、デパート、フェス、そして町。
もうやってない場所なんてないんじゃないかってくらい、いろんなところでやることができた。

ソフト面からはもう言うまでもないだろう。
日本を代表するさまざまなアニメ、マンガ、ゲーム、映画、バンド、音楽、アートとコラボさせていただいた。

どのハード、どのソフトにも刺激があって、僕らはその都度その刺激をもとに思いついてきた。
外部からの上昇気流によって飛翔してきたといっていいと思う。
それらは僕らだから思いつけたものだ。でも、僕らのもとにその刺激が来てくれたから、思いつけたことだとも思う。

でも、もうその刺激が数年前にひと段落してしまったように思う。
もちろん単発では幕張メッセでやったドラクエとか、西武ドームでやった1万人リアル脱出ゲームとかはすごかった。でも、あまりにすごすぎて広がっていかないし、日常化しない。それでは僕らの望む「日常まで面白くするエンターテインメント」には届かない。
一夜だけのとてつもないパーティーはもちろん素晴らしいけど、それが日常を侵食していかなくては意味がない。

だから僕はここ数年、リアル脱出ゲームに変わる新しいフォーマットを構築することをずっと考えてきた。
でも、リアル脱出ゲームというフォーマットは、物語体験とビジネス面のバランスという点では異常にすばらしく、これを超えるフォーマットを発見・発明するのは相当大変だと思っていた。

そんな中、いくつかの出会いと、いくつかのきっかけがあって僕がたどり着いた答えは「フォーマットの入れ物をまず創造する」ことだった。
例えば、「沈みゆく豪華客船からの脱出」をソフトだとして、「リアル脱出ゲーム」をフォーマットだとするのなら、それを毎日行っているアジトオブスクラップ(10人程度が入れる自社小屋)やヒミツキチオブスクラップ(100人程度が入れる自社小屋)は入れ物だ。インフラと呼んでもいいかもしれない。
ヒミツキチやアジトはリアル脱出ゲームをするために作られたものなので、そこにはある種の宿命的な限界があると思っていた。
というよりも、リアル脱出ゲームというフォーマットがあまりにしなやかに成長していくので、これまで入れ物には相対的に注目していなかった。

その一方で、リアル脱出ゲームを本当の意味でクリエイティブにしていたのは、その入れ物であることにもこっそり気づいてはいた。
アジトやヒミツキチのスタッフの異様なクオリティにはずっと前から気づいていて、感謝していた。僕が思いついたものを世の中に伝えてくれているのは彼らだと思っていた。彼らのことをクリエイトされたものを伝える素晴らしい人たちだと考えていた。
しかし、ある時気づいた。彼らの演技や熱意や立ち振る舞いこそクリエイティブで、そこから立ち戻って僕らはゲームを作り出さなくちゃいけないんじゃないかと。

だとしたら、アジトやヒミツキチはもっと自由で有機的な場所でなくてはならない。
アジトでもヒミツキチでもなくそれらが複合的に組み合わさり、それらが影響しあい、その施設全体から何らかの物語が立ち上らなくてはならない。
そして、その施設に物語を立ちのぼらせるためのフォーマットを創ればいいのだと気づいた。
だとしたら、それはテーマパークと言ってしまえるものでなくてはならないだろう。
テーマパークがあれば、その中に入れるアトラクション(フォーマット)は強制的に思いつき続けなくてはならない。
東京ミステリーサーカスは、僕らにとってさらに面白いフォーマットを思いつくための装置である。

それが、東京ミステリーサーカスを創ろうと思った一つ目の理由。
あまりに長くなったので、残りは後日。

Posted by kato takao at 2017年12月11日 17:00 | TrackBack
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