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2016年04月03日

こちらは夜が明けようとしています。
朝の五時半くらい。
時差ぼけがうまく直らない。眠っても三時間くらいで目が覚めちゃう。

ロサンゼルスはなんだか平らな町で、どこから見ても空が広かった。
高い建物はほとんどないし、山も遠くにうっすら見える程度なので視界の大部分が空になる。

ロサンゼルスにはリアル脱出ゲームの新作を作りに来た。
アメリカで新作をリリースするのは二回目だ。一回目は「AT&Tパークからの脱出」
その時は僕はスカイプで謎の制作には参加したんだけど、現場にはいけなかった。
チケットは完売したその公演はあまりよい出来ではなかったらしくみんなが肩を落として帰ってきた。
僕が行ったからといって成功したわけじゃなかっただろうけれど、その失敗をきちんと現場で体験したかったなあとは思った。

今回は二作目のアメリカ新作。
普段ものすごく優秀なディレクターがデバッグでミスを連発してた。
アメリカの呪縛か。
デバッグはほぼデバッグにすらならず終了。
そこから長い長いブレスト。
結論はまだ見えない。
何が問題なのかはわかったけれど。
僕も解決に繋がるようなアイデアは出せなかった。
ずっと考えてるけど、まだ出ない。

ロスでは「リトルトーキョー」という日本人街に泊まっていたので、お店の人たちもみんな日本語が話せた。
普通に日本のマンガとか売ってたし、あるカフェで僕の隣に座った若者は「僕だけがいない街」を読んでた。
観光はほとんどしなかったけれど、ロンハーマンの本店には行ってみた。
大体日本の4割引くらいで服が買えた。春用のニットとTシャツをいくつか買いました。
それ以外はまあ飲んだり、肉を食べたり、ぶらぶらしたり。
ホテルで本読んでる時間も長かったな。

ロスのホテルでぼんやりしてた夜に突然一年ぶりの友人からラインが届く。
「今なにしてるの?」
僕は返信する。「いまロスにいるよ」
それからしばらくしてから衝撃的な返信が届く。
「私も今ロスよ!!!!」

その日の夜は友人の弁護士の家でBBQをする予定だったので「よかったら来る?」と伝えたら来ることになった。
弁護士夫婦と、僕と、SCRAPディレクターと彼女でBBQをした。
不思議な夜で、ずいぶんたくさんみんなで話したし、ずいぶんたくさん笑った。
彼女は無駄にきれいで、ロスでオーディションを受け続けているといった。
「ロスの男はみんなけちなのよ!」といって笑ってた。
四本目のワインが空く頃に「そろそろ帰ろうよ」と僕は言ったけれど、
「もっと飲みたい」と彼女がいったので、僕は白みかけた空を指差して「ほらごらん、朝が来そうだよ」と伝えなくちゃならなかった。

不思議な夜。
人生の中で何度か不思議な夜がやってきたけれど、こんなに鮮やかな夜も珍しい。
人生でロスには三日しか宿泊していないのにその日にロス在住の人から連絡が来るなんてね。

ロスではMOCAという現代アートの美術館に行った。
仕事で使うかも知れないからと聞いて。
その空間は本当に本当にすばらしかった。
でも、展示されている作品はまったくよくわからなかった。
とはいえ不思議なことにそれらのジャンクな作品を眺めていると「おれも何かを創らなくては」とめらめらと燃えるような気持ちになったので、それはそれでよかったのかもしれない。
館を出るとき受付の女性に「ありがとう。どうでした?」と聞かれたので「とてもよかったです。僕もなにか創りたくなりました」といいたかったけれど、まったく頭の中で英作できなかったので「good」とだけ言って出てきた。帰ったら英語の勉強をしよう。

それから飛行機に一時間半乗ってサンフランシスコに。
あたりまえだけどぜんぜん別の街だ。
この街でリアル脱出ゲームが受け入れられたのは当然のような気がする。
町全体が文化的なものを熱望しているし、内省的であることを望んでいる。

サンフランシスコのアジトはすばらしい場所で、隅々まで手が行き届いていて温かみがある。
スタッフははつらつと働いていて、牢獄の看守は本当に牢獄の看守のようだった。
お客さんからのアンケートもすばらしくよくて、このお店はリアル脱出ゲームアジトの見本にならなくちゃいけないなあと思った。

そのあとみんなでチーズ入りのパンを焼いたりしながらパーティ。
サンフランシスコのスタッフにたくさん質問される。
「リアル脱出ゲームをやってきて一番の失敗はなんですか?」
僕はしばらく考えて答える。「会社を大きくしすぎたことかな」
みんな不思議そうな顔をする。
この答えは半分本当で半分嘘なんだけど。

いくつか思い浮かんでいるアイデアがあって、それを実現したいんだけど今のうちの会社じゃ無理だ。
というよりも、今の僕の状態じゃ無理なのかもしれない。
もっとずっと作品に向き合えたら変わるのかもしれないけれど、そういうわけにもいかない。

そうそう書き忘れてたけどロスですごいナゾトキイベントに出会った。
月面基地からの脱出みたいな設定なんだけどギミックがすばらしかった。
本当に宇宙船に乗っているみたいだった。
それでも、その場所は閑散としていて、店主は少し恥ずかしそうに笑っていた。

僕らのつくったリアル脱出ゲームは本当に簡素な状態から始まった。パネルだって最初は僕の手書きだった。
装飾なんて一円もかけなかったし、広告宣伝費もまったく必要なかった。
なぜあんなにうまくいったのかわからない。
日本という国が僕らを受け入れる土壌があったのか、なにか僕らが気づいていないすばらしさが僕らのリアル脱出ゲームにはあったのか。
まだナゾトキゲームが成熟しているとは言いがたいこの国で、このクオリティのゲームが見向きもされない理由は良くわからなかった。
僕らはなぜうまくいったんだろう?

明け方に目が覚めてビールを飲む。
昨日買っておいた大きなビールがまだ残ってる。
24時間飲んでるわけじゃないけれど、まあだいたい飲んでる。
飲んでも飲んでも酔わないのはビールが薄いからかな?

後三日サンフランシスコで過ごしてから帰ります。
それまでに今ぼんやりあるアイデアがまとまればいいけれど。

新しい物語を作りたいのです。
本やマンガや映画の次の物語を。
ずいぶん近いところまでたどり着いているような気はするんだけど。

すっかり朝が来ました。
もう一度眠ろうか、このまま起きちゃおうか迷ってるところ。

じゃね。

Posted by kato takao at 2016年04月03日 01:23 | TrackBack
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