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2013年04月26日

 先ほど上海から帰ってきました。

 上海では、秋に行われる超巨大リアル脱出ゲームの話と、中国のテレビ局で番組を作る話をしてきました。
 テレビの話は、まあ成立するとしても20%くらいかなあと思っていたが、ほぼもう進んでしまいそうだった。
 巨大リアル脱出ゲームも、会場がとても協力的だったので、うまく進みそう。

 しかし、実はSCRAPの中国進出は最近やや停滞気味である。
 その理由は、上海でリアル脱出ゲームのパクリがもう山ほど出来ているからである。
 すでに、上海におけるリアル脱出ゲームはムーブメントの枠を超えて、新たなビジネスジャンルになっている。
 上海のあらゆる場所に「リアル脱出ゲーム専用店舗」があり、その数は80店舗を超えている。

 驚くべきは、僕がはじめて上海でリアル脱出ゲーム公演をやってから、まだ一年半しか経っていないって事だ。
 このスピード感と資金の投入感は本当にすごい。

 で、中国のスタッフから、「一度上海のリアル脱出ゲームを体験してみてください。ちょっと変わった進化をしているので」といわれたので、遊びに行ってみました。
 
 いってみた結果、もう本当に本当に本当にびっくりするぐらい面白かった!
 まず最初は、中国の昔の牢獄に閉じ込められた。真っ暗な部屋に懐中電灯二本だけ渡されて、みんなで探索した。
 牢屋の中にあった藁の紐みたいなもので、ちょっと離れた場所にある鍵をこちらに手繰り寄せて、鍵を開けた。
 中は驚くほど広くて、アジトくらいの部屋が6つくらいある。謎が解けるとその部屋から出られてまた次の部屋、という感じ。
 特に衝撃的だったのは、三つ目の部屋に沼があって、沼があるのにも衝撃だったけど、その部屋のスイッチの謎が解けたら沼からぐわーーーって橋が出てきて、渡れるようになったこと。
 
 上海アジトのスタッフや、中国版の謎の制作や翻訳をしてくれているチームと行ったので、すごいスピードで適切にその場で謎を翻訳してくれて、なんとかその部屋は脱出できたけど、謎も本格的でした。
 その後も二つ行ったけど、どこもすばらしい出来だった。
 一日で三回リアル脱出ゲームをしたら、頭がくらくらした。

 正直言って行く前は、結局そんなのパクリだし、本物にはかなわないだろ、と思っていたけれど、そんなことない。
 ものすごく贅沢に場所と資源を使って、とんでもない仕掛けが形になっていた。
  
 別のお店では、壁が動いたり、巨大な画面で突然ゲームが始まったり、本棚だと思っていた場所が動き出したりで、とにかく派手ですごい場所だった。
 しかも、こんなゲームが一つの店舗に6つもあるのです!
 ナゾビルの規模が全然違う!

 なんというか、ものすごく衝撃を受けた。
 自分はなんと思い上がっていたのか。
 僕はリアル脱出ゲームというフォーマットを思いついただけでで、リアル脱出ゲームを作るのが一番上手いわけじゃない。 もっとすごい人たちが次々と現れて、どんどんこの発明が面白くしていく。 

 もちろん、言わせてもらえれば、謎にはいろいろと問題がある。
 バランスは悪いし、説明不足だし、無駄な難しさがあるし、論理的に筋が通っていない。SCRAPが決めている謎解きのルールを守れていないところはたくさんある。ベートーベンの楽譜が完璧に読めないと解けない問題があったのにはびびった。
 あの設備を使って、俺に謎を作らせてくれないかなあ。世界最強の謎解きスペースになるだろうな。

 リアル脱出ゲームの店舗を上海ではじめて作ったのは、僕がはじめて上海で公演を行った会場の共同経営者だった。
 その人は、リアル脱出ゲームを見て、しばらくしてからその会場の経営を辞めて、別の場所でリアル脱出ゲームの会場を作ったらしい。 
 最初その話を聞いて、ちょっと嫌な気持ちになったけど、今はもうなんとも思ってない。
 むしろ、ちょっとありがとうと思っている。
 その人が作った二号店に昨日遊びに行ったけど、すげー面白かったよ。

 俺も負けずにもっといいものを作りたいと、心から思った。

 僕が上海に行ったとき、ちょうど神社や島の問題で中国は大騒ぎだった。
 それまでは地震の報道ばかりだったけど、政府の対応に批判が集まっていたので、日本の参拝を大きく取り上げて視線をそらそうとしているらしい。中国に住んでいる日本人は「中国からお金をもらっているのかと思うくらい、絶妙のタイミングでの参拝だった」と言っていた。

 僕は政治についてあまりきちんと発言したくない。
 それは僕の仕事じゃないと思っているし、たくさんの人のたくさんの思惑がある物事について、軽々に発言したくない。
 でも、少なくとも上海には、ものすごくすばらしい謎解きゲームのクリエイターがいる。
 パクリでもパクリじゃなくてもすばらしいものはすばらしい。
 文化はつながっていて、謎解きを面白いと思う気持ちだって一緒だ。 
 もう少しだけ、お互いを理解しようとしてもいいんじゃないかなとは思った。

 自分が生み出したものが、海の向こうで進化していた。
 とても複雑な気持ちではあったけど、それがすばらしいものであることを僕はもう認めようと思う。
 それに負けない新しいものを作り出せばいいだけだ。

 上海で得たものは大きい。
 これを次のリアル脱出ゲームに叩きつけてやろうと思っている。

Posted by kato takao at 2013年04月26日 03:44 | TrackBack
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