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2012年06月27日

あれは確か去年の10月。
頭の中に雷鳴が鳴り響いて、あるアイデアが舞い降りてきた。

たしか、イベントをやる上でのメリットとデメリットを考えていたときだった。
エヴァンゲリオンのリアル脱出ゲームのチケットが、ある日は完売、ある日は半分くらい残るみたいな状況で、興行っていろいろと難しいなあなどと思っていた。
あとこれまあぶっちゃけの話なんですけど、会場費とかでイベント売り上げの2,3割は飛んでいくんですよね。
困ったなあ、経営って大変だなあと思っていたときに天啓がやってきた。

webでリアル脱出ゲームをやれば、場所代はただで、キャパも無限だ!

最初はそういうよこしまな考えだったけど、冷静に考えるとこれはすごいんじゃないかと思い始めてきた。
webでイベントをやる。
つまり世界中で同時にweb空間にアクセスする。
それだけだったらそんなに面白くないかもしれないけれど、それを「リアル脱出ゲームの文脈」でやればめちゃくちゃ面白い。
すなわち、世界中で同時に始まって、同時に終わる。
終わった時点で脱出に成功している人は称えられ、そうじゃない人たちはその後の解説を固唾を呑んで聞く。

できた!と思った。
これは企画としてどう考えてもすばらしくて、どこに出しても恥ずかしくないアイデアだと思った。
こんなに衝撃的にどかーーんと何かがひらめいたのは久しぶりで、ひょっとしたら5年前に「リアル脱出ゲーム」をひらめいて以来だったかもしれない。

プレイスタイルを思い描いたら、それもめちゃくちゃ面白そうに思えた。
きっと世界中でたくさんの人たちが、そのスタートを待つ。
ノートパソコンやiphoneを持って集まってきて、世界中のBARやファミレスやカラオケや友人の家で、ビールやつまみなんかも用意しちゃって、その瞬間をわくわくしながら待つ。

ゲームが始まったら、みんなが声を掛け合って、メモを取ったりしながら謎解きを進める。
協力して謎を解いたり、役割分担して効率的に探索したりする。
たぶん人々は激しい興奮の中で汗ばんで、声を荒げたりするだろう。
解けない謎に悶えたりするだろう。
仲間と知恵を絞って、必死でweb空間を走り回り、最善を尽くし、物語を体験した後、おそらくほとんどの人たちが謎解きに失敗する。
敗北感と悔しさと「ではいったい答えはなんだったのか?」という興味を抱えて彼らは解説を待つ。

僕はそこに登場して、彼らに解説をする。
その解説は、彼らにとってはとても残念なことに納得のいく解説である。
すなわち、それはフェアな謎でエレガントである。彼らはきっとその答えを思いつかなかったことを悔やむだろう。

そんなゲームを思いついた。
思いついたら、もう止まらなくなって、いろんな人たちにその話をした。
ちょっとした飲み会の席で話したり、仕事の合間にちょっと話したりしているうちにどんどんビジョンがまとまってきた。
いくつかの企業から「一緒にやりますか?」みたいな話もいただいたけど、僕はどうしても一刻も早くこの企画を世に出したかったので、それがどんなに大きな話でも、時間がかかりそうならお断りした。
ただ、そのうちのひとつの話は、これまでとてもお世話になってきた会社さんからの話だったので、とてもとてもとても申し訳ない断り方になってしまった。数ヶ月一緒に企画を考えたけれど、成立直前で、僕のわがままでお断りしてしまった。
でも、お断りしたときにその会社の方が「でも僕らはこの企画はSCRAPさんが絶対成功させると思っているので、応援していますし、期待しています」と言ってくれた。ちょっと泣くかと思ったが、悪者が泣いちゃいけないと思ってこらえた。

ある飲み会で出会った中村ヒロキさんが僕の話を3分くらい聞いて、ばーんとひざをたたいて「それはやりましょう!」と言ってくれてやることになった。
彼がwebの世界でものすごい有名人であることはその後に知った。
一緒に仕事をしてみたらエネルギッシュで、プロジェクトの推進力がすごくて、いろんなものや人を巻き込んでぐわーーーって動かしていく人だった。
あと、ものすごく奇妙なボキャブラリーシステムを持っていて、いつも亜空間な言葉を使ってしゃべるから面白い。

デザインは、大好きなカイブツさんを中村さんが巻き込んでくれた。
相変わらずすさまじいレベルのデザインが上がってくる。
ひとつの画面が出来上がるためにため息が出るようなすばらしさである。

プログラムはGOOGLEPUZZLEを作ってくれたFUTUREKさん。
ここの社長の神田さんは僕の経営の先生でもあります。

やたらと華のある人たちとこのプロジェクトは動き始めた。
なんだか、ものすごく遠いところにいけそうなプロジェクトである。

この企画を思いついたときに見えた風景がある。

人々は、このゲームのために何日も前から友人たちと話し合って、プレイする場所と集合時間を決める。
当日、朝からそわそわして、会社や学校にいる間もregameのことを考えてしまう。
そして、万難を排して帰宅し、仲間たちとそのときを待つ。
ゲームが始まる。
彼らは熱狂し、大声でコミュニケーションをとり、ファミレスの別の客に鬱陶しがられたりする。
ゲームが終わる。
ほとんどの彼らは落胆し、一部の彼らは狂喜する。
解説が始まり、そして終わる。
イベントは終わる。
そして、彼らはそこから長い長いミーティングをはじめるだろう。
ゲーム中に仲間が発した愚かな発言について。
クリティカルな答えを出した仲間を称えること。
ゲームのフェアさやシステムについて。
このゲームの可能性について。
そして、彼らはきっと最後にこの話をするだろう。
「次は、どんなチームで、どんな戦略でのぞむ?」と。

リアル脱出ゲームオンラインという言葉が「矛盾している」という人がたくさんいる。
それは僕もそう思う。
でも、「オンライン」を「リアル」にするのはこのゲームに関しては僕らじゃない。
君らだ。
リアルで友人たちと集まって、オンラインゲームをするってのは「リアルオンラインゲーム」といってもいいのではないか。
しかもそれが、世界中でリアルタイムに進んでいるのであれば、そこで瞬間的にシンクロするその感情や体験を「リアル」と呼んでもよいのではないかと思っています。
屁理屈みたいに聞こえるかもしれないけれど。
それでも、僕は思うけれど、このゲームをみんなでどこかに集まってやったら、もうそれはすばらしく新しい体験になると思うのです。
本当に世界とつながったような体験にできるんじゃないかと思うのです。
この体験をする前とした後で、世界の見え方がちょっと変わっちゃうようなゲームになると思っています。

もしまだ参加を迷っておられる方がいるのなら、どうぞ、迷わずに。
スポンサーのインテルさんのおかげでなんと500円で参加できます。
リアル脱出ゲームだったら3000円かかっちゃうけどね。

あと、「webイベントだったら参加数無限だからどうせ売り切れないでしょ?直前に買ったらいいよ」と思っているあなたに朗報です。
なんと、このwebイベントはサーバーやその他もろもろの理由でキャパがあります。
割とあっさり売り切れるくらいの数です。
だから気をつけてね。

世界を変えてやろうとは思っていません。
でも、「こんな世界になればいいなあ」とくらいは考えて企画をいつも考えています。
この企画は日常を少しだけエキサイティングに、少しだけ物語みたいに、少しだけ冒険にしてくれると思っています。
そして、日常に冒険があれば、世界はもう少しだけやさしくなるのじゃないかと思っています。

どうぞ、もしあなたが少しでもこの企画に興味をもったのなら、ぜひ遊んでみてください。

リアル脱出ゲームオンライン
「ホーンテッドハウスからの脱出」
2012年7月24日 22時スタートです!
regame.jp/

Posted by kato takao at 2012年06月27日 04:23 | TrackBack
みんなのコメント

ここ1年くらい『リアル脱出ゲーム』を楽しませて頂いております。
ありがとうございますm(_ _)m

さて、立場によって見方は様々ですね♪
私はパソコン上で、いわゆる『密室ゲーム』は、タダで出来るゲームだと思っています。
(コンシュマーでは、商品として販売されているものもありますが…)
ネットにはたくさんの『密室ゲーム』が無料で公開されています。
優秀な作品も数多く存在します。

だ~か~ら~・・・

『リアル脱出ゲームだったら3000円かかっちゃうけど…』
こちらは500円なので安い…な~んて思いませんよw

『密室ゲーム』1ゲームで500円もお金を取るなんて・・・って思っています。

社長はタダで出来るゲームを、有料にして提供しようとしているんです。
余程のクオリティーでない限りは納得がいきません!
グラフィック、サウンド、仕掛け、謎…全てにおいて既存の『密室ゲーム』を凌駕する、
『リアル脱出ゲーム』同様にスマートな作品であると期待しております!!

この500円は決して安くないんですよ~♪

それから蛇足ではありますが・・・
文章中で触れられてますし、大丈夫だと思うのですが、
ゲーム開始時刻になって、アクセス過多でゲームが出来ない!
・・・なんてしょっぱい結果だけは避けてくださいねm(_ _)m

それでは、当日を楽しみにしておりますv

Posted by: GANBAMBI on 2012年06月27日 06:10

お疲れ様です。

僕の意見はGANBAMBIさんが全て言ってしまってくれたのですが、これは本当に大事なことだと思っているので、あえて僕も言います。
加藤さん達は、ウェブでは従来無料で提供されてきたコンテンツを、有料で提供しようとしているのですよ。これはものすごくチャレンジングなことです。しかも、100円や200円ではなく、500円。リアル世界では「ワンコイン」という言葉で片付くお安い値段の代名詞ですが、残念なことに、デジタルキャッシュに「ワンコイン」という概念は存在しません。

Steamというゲーム配信プラットフォームをご存じですか?
世界中の有名なゲーム、家庭用ゲーム機で大々的に発売されているような大作ゲームがデジタル配信で安く買えるというサイトです。
http://store.steampowered.com/
ここでは毎日のようにゲーム数本、大セールを行います。それはもうものすごいセール率で、例えば今日はL.A.Noireというゲームが75%オフ。日本での定価が7770円で、今でもゲーム屋さんでは4000円くらいで売られている物がなんと3.74ドル!日本円にしてわずか300円で手に入って初めて、「安い!」と思うんです。

ウェブって、消費者って、非情です。500円は、決して安くないんです。

しかもREGAMEは、ウェブでありながら、「現実と違っていつでも好きな時に遊べる」という大きなアドバンテージを捨てているんですよね。僕の周囲の人は皆、REGAMEの話をすると「えっ、ウェブでやるのに平日の22時にパソコンの前にいなきゃいけないの?めんどくさい…」って言ってるんですよ。
しかも、世界同時プレイとは言え、ほとんどの人はパソコンの前に座って一人で遊ぶわけで、果たして「世界同時プレイ」という一番のセールスポイントを体感として味わうことができるのか…?体験版をやってみた限り、単なる脱出ゲームを一人で解いているだけでしかないんですよねぇ。あの体験版では、あえてお金を払う意義が見出せませんでした。ついでに言えば、謎もスマートではありませんでしたし。(「知識不要で誰でも解ける問題」って、リアル脱出の基本でしたよね?思いっきり知識が必要な問題だったじゃないですか…。)
本番では「世界同時」というのを上手く感じさせる仕掛けがあるのでしょうか?あるならば、先にさっさと発表しちゃうべきです。もしもないならば……残念ですが、ちょっとそれは。

といったように、この企画、どうも加藤さんと僕らの間に致命的な温度差というか、ズレがある気がするんですよね…。

もう一つ、サーバの問題。

体験版公開当日、Twitterの方で多少辛辣な言葉遣いでご意見させていただいたので、もしかすると加藤さんもお読みになったかも知れませんが。あの時サーバをダウンさせてしまったのは、致命的な失敗でした。全世界からプレイヤーが一斉にアクセスする、サーバや回線に大きな負荷が掛かるのは事前に分かりきっていたにも関わらず、ですから。
そしてその後の『もちろん本番は超強力サーバーを用意する予定ですのでご安心を!』というコメントも、大失敗です。現に今、目の前でサーバがダウンしているのに、「本番は大丈夫だから!」と言われて「そうなんだーじゃあ安心だね☆」なんて、誰が思うでしょう?思うわけがありませんよ。スピンオフイベント含めトータル15回以上参加している熱狂的リアル脱出ファンの僕でさえ、微塵も思いませんでした。
むしろ、今でも本番は9割方サーバトラブルが起きるだろうと踏んでいます。そんなわけで、未だチケットを購入せずに、悩んでいる状況です。幸いにも、団員には30日まで悩む権利があるようなので。

解決する方法はいくらでもあるんです。例えば、再度何かしらのイベントを立て、もう一度大勢の人が一斉にREGAMEにアクセスする状況を作る。そしてもちろん、今度はサーバを落とさない。これで半分くらいの人は納得してチケットを買うでしょう。但し、もうこれはスケジュール的に不可能でしょうね。
あるいは、事前にチケット総数を発表する。世界で1万人だけです!と言ってしまう。1万人のトラフィックならまぁ捌けるかも知れないな、と目星が付けられるようになります。これも一定の効果はあるでしょう。今の状況では、一体どれだけの人がアクセスするのか見当もつかない。判断材料がない時、人間は余裕を持った見積もりで物事を考えます。故に、ほとんどの人は今でもサーバに不安を感じるわけです。

一番怖ろしいのは、本番当日にサーバを落としてしまうことや、結局蓋を開けたら普通の無料の脱出ゲームがちょっとリッチな映像になっただけだった、とか、そういう評価になることです。
たとえ満足してもらえず返金することになっても、失われた信頼は二度と帰ってきません。しかもそれは、SCRAPという会社全体の信用に関わることなんです。もっと言うと、そんなものを「一緒に遊ぼうぜ!」と宣伝した僕らにも責任が降りかかってくるわけですよ。もし失敗を起こせば、宣伝してくれたユーザにも不憫な思いをさせることになるでしょうし、何より、彼らは二度とSCRAPのイベントを宣伝してはくれなくなるでしょう。

すごいものを思い付いた!という時は、得てして周りが見えなくなるものです。僕もそうです。今回のエントリを読んで、どうも加藤さんはそういう状況に陥っているのではないかと心配になりました。成功すればいいのですが…。毎日忙しい時には難しいことではあるのですが、もうちょっと、冷静になった方がよいかも知れません。

最後にもう一点、これも非常に大切なことを。

今回様々な理由で参加しなかった人のために、REGAME第一回が終わったら、それが実際どんなものだったのか、無料の脱出ゲームとはどのように違ったのか、プレイヤーがどれほど熱狂したのか、きちんと紹介するコンテンツを用意するべきだと思います。(従来行っているUstream生放送ではコンテンツ力が弱いですね。あれは内輪ネタ感が強すぎます。もっとしっかりした映像やレポートを仕上げるべきです。)
今回私は不参加になるかも知れませんが、冬の第二回に参加するかどうかは、第一回のレポートに懸かっています。どうかこの猜疑心の塊である私を納得させて下さい。そして、参加しなかったことを死ぬほど悔しがらせて下さい。そして。冬には、真っ先にチケットを購入する人間に変身させて下さい。

心の底から期待しています。

Posted by: @Sizukensan on 2012年06月27日 11:08
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