今年の3月16日に大阪のHEPホールで「人狼村からの脱出」というイベントをやったときに、二通のとても素敵なアンケートがあった。
一つは「東京から来ました。本当に毎日もやもやしてたけど、この一時間きれいに地震のことを忘れられて今すごくすっきりしています」というもの。
もう一つは仙台出身の方のアンケートで「地元のことを思うと毎日鬱々とします。でもこのすばらしいゲームをいつか仙台でやってください。仙台の人たちに遊んでもらいたいから」と書かれたもの。
僕はこの二通のアンケートを読んで、涙が出るくらいうれしかった。
ほっとしたってこともあったし、「きちんとエンターテイメントが求められてる」っていう事実がものすごくうれしかったのです。
そのときに強く強く思った。
5月の東京ドーム公演を絶対に成功させようと。
そして、なるべく近い将来に必ず仙台で公演をしようと。
7月の終わりに仙台の会場に下見に行って、あちこち見て回って、一目で気に入ったところがあったからそこに決定した。
アスファルトの道はところどころひび割れていたけれど、町はちゃんと機能していた。
タクシーの運転手さんが「でもまあつらいよね」とポツリといったことを除けば、ほぼ普通の街と変わらなかったかもしれない。
帰りにスタッフと牛タンを食べた。
ものすごくおいしかくて幸せな気持ちになった。
この幸せの恩返しをしなくちゃならないと思った。
仙台の公演は絶対に成功させなくちゃいけない。
11月の仙台公演は完全な新作だ。
そして、ものすごい自信作でもある。
今から今年だけでSCRAPは最低6本の新作イベントをするけど、この仙台のイベントはすでに燦然と光を放つほどすばらしいアイデアで構築されている。
ぜひ遊びに来て欲しい。
こんなことを書くとちょっと横柄に聞こえるかもしれないけれど、もしこの日記を読んでいる人の中に「地震のことを思うとひどく落ち込むけれど、結局そんなに募金もしなかったし、ボランティア活動もしなかったし、なにもしなかった」という人がいて、しかも、もしあなたがほんの少しだけ罪悪感みたいなものを感じているなら、ふらっとこのイベントきっかけで仙台に遊びに来て、よければ一泊して、おいしいものを食べて欲しい。
えらそうなことをいうつもりは一切なくて、僕は僕が作ったものを楽しんでもらいたいだけで、このイベントは別にチャリティーイベントでもないし、震災復興支援企画というわけでもない。
でも、僕も同じそういう種類の人間だからわかるんだけど、もしあなたがちょっとした罪悪感みたいなもののかすかな名残みたいなものを持っているなら、このイベントに遊びに来て楽しんでしまえよ、と思っている。
そして一見平和な仙台を5分でいいから歩いてみて欲しいと思う。
あなたがなんて思うかわからないし、何も思わないかもしれない。
別に僕はあなたになにか思って欲しいわけじゃない。
でも、仙台を歩いてみて、もし何かを思ったとしたら、それはちょっと素敵なんじゃないかと思うのです。
僕は偉そうなことはなにも言えない。
でも、仙台にたくさんの人を集めて最高に面白いものを作りたいと思ったんだ。
仙台に日本中から人が集まって、面白いことが起こったら、ちょっとだけポジティブな方に軸がぶれるんじゃないかな。
政治のことを書くのはなるべくやめてきたけれど、さすがにちょっとだけ書く。
どの政党を応援するとか、どの政策を支持するとかそんなことは個人がそれぞれ考えればいい。
でも、こんな一大事に、一国の総理の演説を汚い言葉でやじり続けるとか、言ったか言わないかわからないような発言をみんなで取り上げて騒いだりとか、なあ、それ本当に今やらなくちゃならないことか?
冷静に考えてみて、今やるべきことがそのつまらない言い争いだと思っている思ってる人って
本当にこの世に一人でもいるのかな。
それを望んでいる人って一人でもいるのかな。
一つになるのなんて絶対に嫌だし、どんなに追い詰められても自分の意見を言っていたいし、なんとなく流されて協調することなんて僕には出来ないけど、
それでも、今はもうちょっと一番困っている人に何が出来るかを考えたり、一番大変な部分を解決するためにどうするかを考えたり、3月11日以前に正しかったことが正しくなくなったのなら、現在の新しい「正しさ」についてみんなで考えたり、もう戻れないって事をきちんと自覚したり、「戻れないならどんな未来を作るべきか」ってことについて考えたり、そして何よりそこで考えたことを実現するためにはどうすべきかってことを必死で考えなくちゃならんのじゃないかなあ。
政治ってよくわからないけれど、でも、やはり今はちゃんとみんなで考えて、少しでも良くなる可能性のある方に向かって、ゆるゆると進まなくちゃならんのじゃないかなあ。
じゃあその方向ってどっちなんだよっていう質問には僕は「一番音楽が流れていて、一番エンターテイメントがあって、一番みんながそれを楽しめる場所だ!」としか言えない。それしかやって来なかったから。この意見がどれほど稚拙かはよくわかっているけれど、それでも、僕は僕が一番良いと思う世界に少しでも近づくように、こつこつとまあがんばろうと思う。
ずっと前からそうだったように、これからもそうします。
だから、実は僕は、仙台の公演には一人でもたくさんの人に来て欲しいと思っています。
この日記が、あなたの背中を少しでも押してくれたらいいのだけど。
http://www.scrapmagazine.com/wps/archives/11568.html
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