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2011年09月05日

ついさっき、成田から家へと帰ってきた。
飛行機は行きは3時間、帰りは2時間と順調に遅れ、終電がなくなった僕らは送迎バスでゆらゆらと新宿まで送られた。
上海滞在時間は40時間程度。
そこで5回公演をして、4回司会をした。

一回目の公演に150人程度のお客さんが会場に入ってきた。
僕は最初にこんな風に言った。「中国で最初のリアル脱出ゲームだ。もしあなた方の誰かがクリアしたら、中国で最初にクリアした歴史的な人になります」
会場はものすごく盛り上がったが、その回では一人も脱出に成功しなかった。
次の回で僕はこういった「今のところ中国での脱出成功率は0%だ。まだ一組もこのゲームをクリアしていない。あなた方の誰かがもしクリアしたら、中国で最初にクリアした歴史的な人になる」会場はものすごくどよめいた。

ゲーム中の彼らは本当に必死で。あらゆるスタッフにヒントを求めた。
絶対に成功してやろうという強い意思があり、そのためにはどんなことでもするつもりがあるようだった。
われわれの用意した金庫のいくつかはこじ開けられ、スタッフは質問攻めにあい、答えないと怒られた。

その回で二組の脱出成功チームが出た。
彼らは興奮してステージの僕に向かって「何か賞品は!!何か賞品は??!!」と叫んだ。僕は「名誉と思い出をあげるよ!」と叫び返した。彼らの歓喜は変わらなかった。たぶん。

チケットは発売してすぐに売り切れてしまったのだけど、中国では前売りチケットを買うという文化があまりないから、当日券があると思って買いに来た女性が泣き出したりした。「当日券はありません」という告知分を出しているにもかかわらず、何十人という人が当日券を求めてやってきた。そしてありませんというと怒り出した。

会場では、見たことのないような熱狂が起こっていた。
彼らは、楽しむというよりとにかく必死で、チャレンジすることに飢えているようだった。とてもキュートで、熱しやすく、そしてあらゆるルールを自分なりに解釈していった。

ランダムにチームを決められるというシステムをSCRAPではよく採用するのだけど、中国でのそれは激しい抗議を受けた。もちろん、僕らはそんな講義は受け付けなかったのだけど、その結果彼らは必死でパスを交換し始めた。僕らの目の前で。
日本では決してなかった光景だった。彼らはとても必死で、決して折れることはない。
この国とけんかしてはいけない、と僕は強く思った。

ゲームが終了すると必ず歓声が上がり、正解を発表すると歓喜とため息が入り混じった空気が会場を埋め尽くした。日本のそれよりももっとドラスティックでぎらぎらした空気だった。喜ぶ人たちは飛び上がって喜び、悔しがる人たちは床をたたいて悔しがった。
そして、次回の上海公演が決まっていることを発表すると、会場中から拍手が沸き起こった。「次も絶対に行く!」と僕はたくさんの中国人に声をかけられた。それから、とてもたくさんのきれいな中国人女性に写真を一緒に撮ってくれとせがまれた。

僕は、「この遊びは俺が思いついたんだぜ」って一人ひとりに自慢して回りたいような気持ちになった。
僕のちょっとした思いつきが、とうとう国境も越えて熱狂を生み出したことを、僕はめちゃくちゃうれしく思った。
いや、違うな。思いつくだけなら誰でも出来た。多分「リアル脱出ゲーム」的なことを同時代に思いついていた人はたくさんいただろう。でも、僕だけがそれを実行した。そのことを心から誇らしく思う。

本当に面白いものは国境を越えるっていう、単純な事実を目の当たりにして、もっと誠実に視野を広げなくちゃならないと思っている。
ひょっとして、この遊びが全世界で盛り上がって、アフリカの人たちもエスキモーもアイヌの人も東ティモールの人も一緒になって遊べるようなことになっちゃうかもしれない。この電気も道具もほとんど使わない遊びは、全世界に広がるポテンシャルをもっているのかもしれない。
その検証を一つずつやっていこう。
出来ることを全部やろう。

上海で、あるニュースサイトから取材をされた。
「なぜ上海で最初にやられたのですか?」と聞かれて僕は「上海に友人がいたからです」と答えた。
上海にMAOというライブハウスがなかったら、このプロジェクトは成立していなかっただろう。そして、そのライブハウスを運営しているのがbadnewsという音楽事務所じゃなかったら、この話は最初からなかったことになっていただろう。
badnewsはくるりの事務所で、僕は音楽的なつながりで昔からずいぶん御世話になっていた。
その社長の千葉さんが熱心に、僕を中国に誘い出してくれて今回の企画が成立した。
結局僕らはいつもそうなのだけど、自分たちからはそんなに一生懸命出て行かない。今自分たちの持っているものを集めて、その場所で一番高い塔を作ろうとする。その塔に気づいた人から連絡をもらったら、その人と組んで仕事をするのです。
それで失敗したことは今まで一度もない。

上海MAOとbadnewsに心から感謝を。
またすばらしい人たちにめぐり合った。

今年中にまた上海でやるし、北京でやることもほぼ決まっている。西安でもやろうと動いているし、香港、台湾もほぼ決まっている。シンガポールはあとは場所との調整だけだし、西海岸での動きもある。

たった、一個のアイデアがどこまで広がっていくのか見てやりたいのです。
どんな風になるんだろうな。

僕は帰ってきちゃったけど、現在も上海公演は続いていて、現地のスタッフが動かしている。ネット上でかなり大きな反響を呼んでいるらしく、明日にはさらに追加公演が発売されるらしい。最終的にチケットは3500枚以上ほど売れることになる。
これは初めて公演を行った街としては異常だ。

冷静に考えて、テレビにも出ていない、CDも出していない、一度も中国でライブをしていないミュージシャンのチケットが500枚売れることだってない。まったく絶対ない。
僕らはそれをアイデアと、テキストと、ビジュアルの力だけでやってのけた。
やっぱり、今日くらいは自分のことをすごいと思ってもいいだろう。

そうそう、サンフランシスコでリアル脱出ゲームのエージェントをやってくれる人を募集しています。場所も目安はついてるし、コーディネートしてくれる人もいるんだけど、ビジネスとしてきちんと成立させてくれるパートナーを募集しております。
条件はアメリカに拠点があって、僕らのことを好きか、好きになる覚悟がある会社。
興味がある方はinfo@scrapmagazine.comまでメールくださいませ。読んでるかな、このblog。

さて、明日からはまた怒涛の打ち合わせラッシュ。
そして、7日から大阪で「円形闘技場からの脱出」です。
最初の何回かは司会をするつもり。
デバッグ公演では難しすぎて、脱出成功チームは250人中1チーム、という結果に終わったようだけど、どうなるかな。SCRAP京都チームが作る最近のゲームの面白さは異常なので、きっと面白いと思います。ぜひ遊びに来てくださいませ。

ずいぶん長くなっちゃったけど、このへんで。
そろそろ眠ろう。
おやすみなさい。

Posted by kato takao at 2011年09月05日 05:20 | TrackBack
みんなのコメント

こんばんわ。今日ナガシマスパーランドで脱出できた一人です。
先ほど声をかけ、CDにもサインを頂いた上海生まれのRINAです。
上海でのレポートを読ませて頂きました。
うんうん、中国人らしいと思う所が数々あり(はこをこじ開けるところとかw)
そんな環境でよく成功させたな~と感心しました。
12月の上海公演は連休でもないので、仕事休めそうにありませんが、
また日程があえば、参加したいと思います。
では、上海かに楽しんでください!2個まではおいしいけど、
それ以上食べるときついので、おすすめできません。

Posted by: RINA on 2011年10月11日 00:12
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