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2010年12月28日

 「あるスタジアムからの脱出」が終わった。
 ずいぶん長いことやっていたような気がするけどたった4日の出来事だったんだなあ。
 来てくれたお客さんの数は1万人を軽く超えてしまった。
 
 twitterにはたくさんの感想が書き込まれ、blogにもたくさんのレポートがあがってるみたい。
 そのすべてをみているわけじゃないけれど、みんながみんな「もうがっかりだ」とは書いていないことに少しほっとしている。
 その一方で「もっと小規模なものもやりたい」という声が大きくなっているのも感じている。僕もそう思う。

 でもやっと生まれたこの「空間ゲーム」という遊びを一人でもたくさんの人に知ってもらいたいという僕の気持ちもわかってほしい。小さな脱出ゲームはたぶん将来いくらでも作れる。今はこの勢いで少しでもたくさんの人たちに「空間の持つ可能性」を体験してもらいたいのです。

 今回のテーマは「野球」でした。
 野球をまったく知らない人には少し不利だったかもしれません。
 でも、なるべく野球の世界観の中でゲームを進めていくことで、より強い違和感を生み出したいと思いました。それは日常に対する違和感です。それと同時に神宮球場という場所でこのイベントをやる必然性も生み出したいと思っていました。

 3日目以降謎の難易度を変えたのは、お客さんの謎が解けるタイミングが一緒だったからです。
 グラウンドに300人ぐらいがいて、あるタイミングで150人ぐらいが最後の謎に気づきました。そして脱出口に人が殺到しました。脱出口には列ができて、列の最後の方の人たちは気づくのがほんの数秒遅れたせいで脱出に失敗しました。
 それはあまり美しい光景ではないと判断したので、最後の部分だけ謎の難易度を上げました。
 お客さんの謎を解くタイミングをずらしたかったのです。
 気づく人は一瞬で気づくが、気づかない人は5分くらいかかる。それくらいの差がほしかったのです。

 神宮球場は美しい場所でした。
夕暮れ時に照明が点され、電光掲示板に文字が並んでいくとき、僕はとても誇らしい気持ちになりました。
 この場所まで自分がたどり着いたことを、とても幸せに思いました。
 お客さんが、神宮球場の内野スタンドや外野スタンドやグラウンドではしゃいでいるのを観て、本当に心からほっとしたし、自分が今回も大きな間違いを犯さなかったことを知りました。

 あるスタジアムからの脱出は楽しかったですか? 
 誰にでも、いつでも楽しめる遊びではないかもしれません。 
 謎が解けたときの喜びは全員に等しく訪れるものではないからです。
 とても切ないパラドクスなのですが、全員に等しく訪れる喜びではないからこそ、訪れたときに喜びになるのです。
 
 あなたが、あなたの物語をきちんと神宮球場で作ってくれたのならそれが一番僕らの望むことです。
 イベントが終わった後、自分の身に起こった物語を楽しく話せることが、リアル脱出ゲームの最大の楽しさです。
 そのときに自分が思っていたこと、やったこと、その成功体験、もしくは失敗の体験。それを言葉にして記憶してもらうことが、僕が最もうれしいことです。
 
 最終公演が終わった後、グラウンドに呼び出されて行ったらスタッフたちに胴上げされた。
 人生ではじめての胴上げは怖かったな。結構高く上がるんですね。
 そのあと、神宮球場の電光掲示板に「SCRAPさん!5日間お疲れ様でした!」と表示された。それを見てみんなでちょっとだけ涙ぐんだ。
 マウンドの上でみんなで記念撮影した。神宮球場の人たちがコントみたいにかわりばんこに撮影してくれた。
 僕らのイベントはいつもそんなだ。
 いつも素敵な人に出会う。
 いつも素敵な人たちが集まってくる。
 たぶん、僕は本当に本当にラッキーなんだろう。
 思い付きを形にすることを、たくさんの人たちが手伝ってくれる。

 さあ、次は東京ドームです。
 どんな風にしうてやろうか思案中。
 その前にダヴィンチ展や、東京迷宮パズルや、HEPHALLからの脱出シリーズ5とかもあるけれど。 
 とにかく駆け抜けてやろうと思っています。
 どうぞまた遊びに来てください。
 つまらないと思ったら瞬く間に見捨ててください。僕がこれまでそうしてきたように。

 ありふれた言葉だけど、僕らはそれぞれの物語を生きている。
 でも、そういうのって忘れちゃうんだよな。
 思い出してくれるきっかけを、もし僕が作れるのなら、できる限りのことをしようと思う。 
 

Posted by kato takao at 2010年12月28日 01:50 | TrackBack
みんなのコメント

スタジアムからの脱出お疲れ様でした!

前回の「夜の遊園地」に初参加して惨敗し、余りに悔しかったので、今回の「スタジアム」には
並々ならぬ意気込みでリベンジしたところ、見事に脱出出来ました!

確かに、最後の5分間は、ヒラメキの連続で、ふだんこんなに頭を使ったことが無いし、
純粋にナゾが解けた喜びに感激しました!!ありがとうございます!!

余談ですが、自分は「少年探偵団」という、サラリーマン主体のクリエイター集団を主宰しておりまして、
「大人なのに探偵団」という、普段会社で仕事をしながらも、冒険心を忘れないモノづくりを追求しております。

ということもあって、帰りに頂いたチラシを見て、ちょっと驚きました!「少年探偵SCRAP団」って!(笑)

ウチなんかは弱小集団なのですが、SCRAPさんには、ライバル心もありつつ、
とっても親近感を覚えてしまいました!!

ご興味ありましたら、一度ウチのブログにも遊びに来てくださいませ!!

Posted by: 少年探偵団 on 2010年12月28日 02:29

こんにちは。
gingokeといいます。ツイッターでもこのアカウント名で加藤さんにフォローして頂いています。
ぶしつけで申し訳ないのですが、ブログを読ませて頂いて、思うことがあり、少しお訊きしたいことがあります。

>つまらないと思ったら瞬く間に見捨ててください。僕がこれまでそうしてきたように。

加藤さんが「瞬く間に」見捨てる、そのスピードの理由はなんですか。じっくりいろんな見方をしたら変わるわるだろう、時間が経ったときに変化していたりすることがあって、その瞬間の判断だけがすべてではない、という思いはありませんか。

それと、加藤さんがツイッターでフォローされている人はみんな、加藤さんがツイートが面白いと思っている人達ですか?
(と訊く僕はけっこう適当にフォローしてしまってますいますけれど(笑)・・・。)

Posted by: gingoke on 2011年01月16日 08:53
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