生活がなんだかがらりと変わってしまった。
　まるでこれまでの生活が一つ一つ否定されていくように。
　今の場所は心地よく、ささやかな安定感があり、そこには限定された形での「生きる確かさ」みたいなものがあって、まあなんというかとにかく居心地がいい。

　そんな場所でもきちんと心には穴があく。
　これはきっと神様からのプレゼントなんだろう。
　空虚がなにかを作らせるのだ。
　足りない何かを補うように、少しの空白が恋を高めるように、ぽっかりとあいたこの穴が、確かな質感のあるものを僕に作らせるんだろう。たぶん。
　
　先日東京で旧友と二人で飲んだ。
　ゆっくりと話したのは何年ぶりだろうな。８年ぶりくらい？
　音楽について、経営について、未来について、遊びについて、現状について。
　彼とは高校のときからの友人で、二人でよく木屋町にナンパしにいった。
　アメリカでケンカしたり、二人で路上弾き語りをしたり、そういえば初めてちゃんと飲みに行ったのも彼と二人ではなかったか。
　ぜんぜん外見はかわらなかったけど、話す内容はお互い致命的に変わった。
　時間が僕らから奪ったものと、僕らが時間から奪ったもの。
　
　また会おうといって別れた。
　別れた後なぜかすごく混乱して、三茶の路上にずいぶん長いこと一人で座っていた。
　そして、びっくりするくらい酔っ払っていた。

　彼は俺に「やっぱり今も作ってるんだね」といい、僕は彼に「お前はもう10年後が見えてるんやな」といった。
　「俺は、高校の時からお前は文章を書く才能があると思ってたよ」と彼は言ったが、彼は株式会社の「株」という字を「様」と書いて履歴書を送ったことがあることを俺は知っている。
　　
　10代って思い出せないけれど、とにかく作りたくて作りたくてしょうがなかった。
　なにもつくらなかった。
　20代になってやっと作り始めた。ガラクタばかりだったけど、とにかく作った。
　なぜか30代になって少しずつみんながほめてくれるようになった。世界が敵ばかりではなくなった。

　僕には、二ヶ月先の予定しか入っていない。
　10年後どころか１年後もわからない。
　でも作ってる。

　いつかどこかで、何らかの取引をしたんだろう。
　僕は三ヶ月先の予定が埋まることと引き換えに、作る人生を手に入れた。
　楽しくって仕方ないけれど、今の心地よさいつまでも守れるだろうとも考える。

　守るってあんまり考えたことないから、少しだけ混乱している。
　ほんの少し、ちょうど心地よいくらいの揺れだけど。

　守ったり攻めたりして生きていく。
　攻め続けたらそれが守りになるかな。
　どうか僕の攻めるスピードは変わりませんように。

　あ、新ユニット動き出します。
　もう少しでちゃんと発表します。
　初ライブは５月15日の予定。
　いきなりワンマンライブです。
　関西の方々は少し予定を空けておいていただけると助かります。
　音楽と謎が好きな方はぜひ。

Posted by kato takao at 2010年04月19日 03:48 | TrackBack