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2008年10月17日

 ボロフェスタ'08が終わって、鴨川で打ち上げをして、階段に座りながら僕はビールを飲んで、みんなが話しているのを見ていた。
 みんな疲れてて、でも帰りたくなくて、嬉しそうで、やり遂げた感じがあって、少しだけしんみりしてて、ああいつもみたいだなあと思った。いつものボロフェスタみたいだった。また今年もいくつか恋が生まれただろうか。

 今年のボロフェスタはどうでしたか?ってたくさんの人たちに聞かれて、僕は「今年のボロフェスタが”ボロフェスタ”にちゃんとなれたことが素晴らしいと思う」と答え続けた。ボロフェスタが終わらなくてよかった。本当によかった。一年前に粒子レベルまでこなごなになったこのイベントは、さまざまな犠牲を払いつつも今年その体裁をなんとか保ちつつ復活を遂げた。今年もボロフェスタはボロフェスタでした。

「西部講堂を飛び出し、熱量をさらに増幅させるボロフェスタ!」というキャッチフレーズがそこかしこで流れたが、それがいかに難しいことかは僕らが一番わかっていた。熱量を保つ為に僕らが選んだ手法は、必死でぼろぼろになることだった。

 たくさんの人を傷つけて、たくさんの迷惑をかけ、たくさんお金が羽ばたいて行き、100人くらいがぼろぼろになってボロフェスタが成立した。それを正しいと思うか、間違っていると思うか。
 僕はそれがわからなくて、なんとなくここ二日ほどぼんやりしてる。
「誰かの迷惑になってまで、フェスティバルを作りたくない」って正論かな。
「誰かを犠牲にしてでもすごい空間を創って、何千人もの人たちを楽しませたい」って合ってるのか。

 まあ、いいや。
 実は俺は今年のボロフェスタを熱烈に楽しんだんだぜ。

 森さんのいないロボピッチャーで、僕は多分史上最高の「泣きべそをかきましょう」を歌った。
 後のことは覚えてない。
 森さんがいたらいいのに、とライブ中に7回くらい思った。
 森さんがいないからこそいい歌を歌わなくてはと思った。そしてもちろんそれに成功した。

 FLUIDについて書く。
 ボロフェスタの最後を飾った。
 僕は、鴨川ステージの撤収を終え、心底疲れ果てて彼らのライブを観た。
 多分僕が30代になってから観たものの中で一番かっこよかった。
 フロアはすさまじいダンスが巻き起こり、あれはダンスと呼んでいいのか、つまりは狂騒が巻き起こっていた。人々は自分のリズムで動き狂い、皮膚をぶつけ合っていた。
 僕はなんでみんなそんなに騒ぐんだろうと思っていた。
 彼らは音が大きくなればなるほど静かになるバンドなのに。
 ライブの中盤に音がスローモーションみたいになって、フロアのお客さんの動きがとても愚かなものに感じられた。彼らは静謐に近づこうとしているのに、それを聴いている人たちは喧騒に向かっている。
 僕は立ち尽くして、FLUIDの行く末を見届けようと思った。我々はいつか息絶えるから、今このときを劈く音を浴びなくてはならないと。
 激流の中に静止があり、どうしても拭い去れない知性の中に本能的激情がある。
 そんなバンドがこの世にあるのか。FLUID以外に。

 ボロフェスタの話を続ける。
 ここになにがあったのだろうと思う。
 ほとんどなにもなかった。でも絶対に最低限必要なものは残った。 

 成し遂げただなんてこれっぽっちも思っていなくて、次をどうするかばかり考えてしまうよ。

 ともあれ、来ていただいたみなさま、手伝ってくれたスタッフのみんな、本当にありがとう。
 何かあったかい?何もなかったでしょう。でも楽しかったでしょ?
 それでいいのかなとも思ってる。
 僕らは戦争を終わらせるためにフェスを作っているのではなく、エコのためにフェスを作っているのではなく、なにかを売り出すためにフェスを作っているのではなく、エイズを撲滅する為にフェスを作っているのではなく、ましてやお金のためにフェスをつくっているわけでは断じてない。
 じゃあ、なんのためにって聞かれたら答えられないんだよ。
 だから、もう、楽しんでくれたのなら、それでいいんだ。

 ボロフェスタ’08が得たものはきっとずっと先になってからわかるだろう。
 僕らが変わり果ててからわかることなのかもしれない。

 ボロフェスタが大好きだ。ここからいろんなことが生まれた。
 そのボロフェスタが終わる年が2008年でなかったことをまずは心から嬉しく思う。
 ありがとう。
 大好きだ。

Posted by kato takao at 2008年10月17日 03:44 | TrackBack
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