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2008年05月15日

 ずいぶん久しぶりに家で時間を過ごした。
 家でお風呂に入って、家でパソコンの前に座り、家でご飯を食べて、家でギターを弾いて、家でビールを飲む。ほんの半年前まではそれは僕のほとんどすべての状況だったんだけど。

 最近はほとんどの食事が打ち合わせとともに行われている気がする。まあそれも嫌いじゃないんだけど、毎日の昼夜食が打ち合わせがらみではさすがに疲れちゃう。

 ずっと事務所にいた。
 こつこつといろんな資料を作って、文章を書いて、企画書を作って、仕事をこなして、時々ギターを弾いた。
 ふらっといろんな人が訪れた。
 打ち合わせに来る人もいたし、ただぼんやりとコーヒーを飲んで帰った奴もいたし、なぜか悩みを告白しに来る奴もいた。大学のレポートを僕の事務所で書いて帰っていった女の子もいた。
 僕はだいたい一人で事務所にいるから、時々人が尋ねてきてくれるとうれしい。僕はだいたいみんなに「コーヒー飲む?」と聞く。「飲みたい!」といってくれるととてもうれしい。僕は田中さんからもらったコーヒーメーカーでコーヒーを入れてあげるのです。
 僕の事務所にはいくつかマンガが置いてあって、それを黙々と読んで帰っていく人もいる。時々くすくすと笑ったり、深いため息をついたりする。この場所はまるで海の底みたいだなあと思う。光とか時間とか恋とかそんなものさえ届かないような海の底。

「大阪の人間はみんな言ってますよ。加藤さんはどうなりたいのかなあって」
 と、昔から友人である愛すべき個人イベンターさんにさっき電話で言われた。
「どんなふうになりたいんですか?」って聞かれたから「浜崎あゆみみたいになりたい」って言ったら「じゃあ、お金を持ってる事務所を探さなくちゃ駄目ですね」って結構普通のアドバイスをいただいた。
 ショウビジネスのてっぺんまで登って、全部を根こそぎつぶしてやりたいな。音楽にまつわるすべてのことを徹底的に壊してやりたい。必要以上に音楽を良く見せようとしているすべてのものをぶっ潰して、人間のすべての可能性をかけて音楽という文化と戦って撲滅して魔女狩りして、それでも残ったものだけを音楽と呼ぼう。

「音楽がピンチだってみんな言ってるけど、それは嘘やんな。音楽ビジネスがピンチなだけやん。だって今すぐにここで歌えって言われたら歌えるやん、加藤君。それはだれも止めれへんやろ?」
 そうですね。そうです。僕はどこででも歌えるし、どこででも曲を作れる。いつまでも。
 どうなりたいのかと問われたら、全部をつぶしたその上で、やっぱりこつこつ一生懸命歌っていたい。

 最近ずいぶんいろんなところで「歌ってください」と頼まれるようになった。うれしい。よかった。
 僕の歌はそんなに上手に空間に馴染むわけじゃないので、場所を選ぶのかもしれないと思っていたけれど、最近はBARとかカフェでも歌う。長いこと続けているとそんなことも出来るようになる。

 さっき、コンビニにビールを買いに行ったときの空気が懐かしくて、心が震えた。
 なんだかやけに寒い五月ですね。
 
 今週はフリーペーパーをすごくがんばって作る予定。
 SCRAPは次のステップにいかなくちゃならん。もうあれは僕の雑誌ではなくしよう。もうちょっとみんなで作れるようにしたいなあ。そのためにはもちろん僕が動かなくちゃならんのだけど。
 それから、関西圏のみなさんは今週からのRADIO SCRAPは聴き逃さないでくださいね。今週のゲストはロボピッチャーの伊藤君だから。
 詳細はこちら。http://www.robopitcher.com/info/info.html

 どっちがあってる道なのかぜんぜんわからなくなることがある。
 まあ、でもそれでいいよなあと思う。
 どうせわからん。
 大金持ちになったとしても、売り上げが2.6倍になったとかいっても、年収がやっと500万に代にのったとかいってもそんなのが本当にいいことかどうかわからんもんな。

 歌が歌いたい。歌。うた。
 みんなをはっとさせて一瞬で消え去ってしまうような、そんな軽やかな歌を歌いたい。

Posted by kato takao at 2008年05月15日 04:15 | TrackBack
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