朝早く起きて、撮影に向かう。
車でカメラマンとモデルを迎えに行きスタジオへ。
間に合わせのセット。間に合わせの衣装。間に合わせのメイク。間に合わせのディレクション。
それでいて面白いと思えるのは、このフリーペーパーの持つ何らかの求心力みたいなものなんだろう。
たくさんのスタッフが動いてくれて、みんながそれぞれのモチベーションで動いていて、ああ、これはもう俺だけの雑誌ではないのだなと思った。俺とデザイナーだけの雑誌ではないのだ。
そのことのすばらしさ。
ひょっとしたら、俺が死んだ後ですら、誰かが続けていってくれるかもしれないという甘い期待。
思い付いたことを形にするのってめちゃくちゃに難しいはずなんだけど、今は思い付いたことをきちんと形に出来る。たくさんの人の力を借りて。その思い付いたことを共有する事によって。
必死でファインダーを覗くカメラマンの横顔を見て、SCRAPが今いるステップの幸せさを感じないわけにはいかなかった。
「次号は謎を特集するけど、なんかそこにもう一パンチ欲しいよなあ」
「あ、私ワンピースつくれますよ」
「よし!じゃあワンピース探偵団を結成して、それを表紙にしよう!」っていうところまでが僕の仕事。
あとは、この件に関る沢山の人達が協力してものごとを進めてくれる。
夢見がちな人々がつむぎ出す夢を、僕は夢見心地で見ているだけなのです。
ちなみに、今日一番の名言は、あの京都を代表する愛すべき吟遊詩人から。
「死に甲斐がありますね」
わりとうまくいった一日の、わりと素晴らしい言葉。
まるで世界は希望に満ちているという、くだらない未来予想図が全部砕けた後にだけ残るような言葉。
約束の地などなく、魂の救済などない。
正義のヒーローは助けに来ないし、神様なんざいねえ。
人生をフィクションにゆだねなかった人が行きつく場所がここだ。
さあ、沈め。
その泥の奥に何があるか知りたいなら。
何かあると信じるなら。
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