あけました。
今年もよろしくおねがいします。
特にめでたくもないので「おめでとう」とは書かないことにしてる。
友人のバンドが解散を発表した。
彼(と彼女)のバンドをはじめてみたのは5年くらい前。はじめて見たその日に撃ち抜かれた。
「解散するよ」と聞いたとき驚かなかった。そうか、と僕はいった。僕らの方が先かと思っていたけれど。
僕らが「アリバイと40人の盗賊」というアルバムをレコーディングしていたときに彼と話した。「このアルバムの制作で未来が見えなかったらロボピッチャーは解散すると思う」と僕が言うと彼は「なるほど」といった。彼は続けて言った。「バンドを続けて行く事がロックってわけじゃないからな」と。
そしてさらに彼は言った。「でも、ロボピッチャーは大丈夫。よい演奏とよい曲があるから」
とても単純な言葉だったけれど、僕は心の芯から励まされて、大切なものがすべてロボピッチャーに詰まっているような気持ちになった。
ロボピッチャーのアルバムが発売されたときCDショップで働く彼は、ずいぶんロボピッチャーを応援してくれた。彼の書いたコメント。「京都の音楽シーンはロボピッチャーに繋がっていくのだ」。
ああ、そうだ、と僕は思った。当たり前だ。すべてがロボピッチャーにつながり、すべてをロボピッチャーは内包するのだと。あらゆるクオリアはロボピッチャーから発せられ、感情の粒子はロボピッチャーによってのみ揺り動かされるのだと。
彼は「いいコメントだろ?」といったので僕は「いいアルバムだからね」といった。そして2人で少しだけ笑った。
解散は、すべてのバンドの解散は、そこに哀しさを孕んでいる。
哀しくない解散はない。
どんなに円満な解散もそれはやはり哀しみを孕み、そして純粋な未来をそこに内在させる。
もしあなたが今就職活動をしているなら、その就職活動先がすべて倒産したときを思い浮かべたらいい。
もしあなたが恋をしているなら、その恋がとても芸術的な理由でなくなったときを想像したらいい。
もしあなたが何かに属しているなら、その属しているものがとてもパーソナルな理由でうまくいかくなったときを思って欲しい。
そして、今思い浮かべたそれよりも少しだけ哀しさの度合いが深いのがバンドの解散だ。
「前向きな解散」はあっても「幸せな解散」はない。
世界中が哀しんでしまえと思う。
どんな偉い人が死んだときよりも喪に服せと思う。
彼らは、彼らにしか出せないグルーブを封印してしまったのだ。
その永遠。
その喪失。
では僕らは今後何を指標に生きていけばいいのですかと、問いかけたくなるような喪失のことだ。
何かが足りなかったのか。
何かが過剰だったのか。
早すぎたのか。
遅すぎたのか。
ではどうすればよかったのか。
どうしようもなかったのかもな。太陽のせいかもな。
つまらない場所で生きて、つまらないまま死んで行くのかもな。
でも、ここを選んだ。
このつまらない場所で生きて死んでいく。
あの時揺らしたすべての感情は死なないからな。
君がスピーカーから飛び降りたとき、俺はその美しい軌跡にまさしくロックを見たのだ。そのロックは俺の中になかったから、僕はアコースティックギターを抱え、ささやかなローコードを弾き続けてるんだよ。
まあ、いいか。どうでもいい話。終わったらはじめたらいいし、つまらなかったら止まりゃいい。世界は単純で、容赦なくて、でもそこでかき鳴らした音が、ロックだったのだ。ロックが終わるなら、何かを道連れに。続くなら地獄の果てまでも。俺はせめて見届けようとは思う。
ささやかな解散。そして年が明けた。
特急列車がいっちゃった2007年に何を積み上げるのかは、また別の話だ。
ここ数年恒例だった加藤家の宝探し問題の公開はロボピッチャーHPにて1月6日に行います。
詳しくは公式HPをご確認ください。
http://www.robopitcher.com/
ロボピッチャーはまだ続く。
そして、その輝かしい軌跡が、一体なんなのかは僕にはわからない。
やがて目にする結末をどうかせめて恐れずに。
今年も宜しくお願いします。
彼らの解散を知った時、頭がフリーズして物事をうまく考えられなかった。
加藤さんの文章を読んで、自分がとても悲しい気持ちでいることにやっと気がつきました。
大事なものを失ってしまった。あのグルーヴはどこを探してももう見つからない。
これから一人で、押し寄せる悲しみの波とたたかわなければいけないことが、とてもつらい。
それでもとりあえず、加藤さんのおかげでようやくちゃんと泣くことができてよかったです、ありがとう。
何も知らなかったです。ああ、もしやと思い、
今そのバンドの公式HPをみてきました。
かなしいはずの自分がいろいろと麻痺していることに
気づいてしまいました。
覚醒の瞬間はまだ先です。
恐れずに待っていようと思います。
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