この三日間であったことはうまくいえない。
単純な数字を並べるとこうなる。
1500kmほど移動して、
2回ライブをやって、
13年以上ヒーローだった人と話しをして、
弦を8本張り替えて、
仕事を2本受注して、
ボロフェスタのブッキングを一つ決めて、
カレーを2回食べて、
ラーメンを3回食べて、
チラシ1500枚くらいを30箇所くらいに配って、
本を1冊読んで、
世界陸上を2時間ほど見て、
高校野球を1試合見て
3日とも飲んで、
3日ともものすごくたくさん飲んで、
たぶんビールを合計10リットルは飲んで、
CDは合計15枚売れました、
多分計14曲歌った、
お客さんは250人くらい来てくれたかなあ、
ギターアンプのボリュームは二日とも「4」に設定しました、
僕はRolandのJCしか使いません、
なぜならどこにでもあるからです、
おそらく、そのほかにも、
眠ったり、
電話したり、
漫画を読んだり、
打ち合わせをしたり、
シャワーを浴びたりしていると思うのですが、
うまく思い出せません。
何をやってるんだろうなあと思う。
何に向かってるのかもうわからん。
ただ動いてて、考える間もなくて、それはそれでいいか。いいのか。
会う人みんなに「忙しそうですね」といわれますが、忙しいのどうかもよくわかりません。
でも、僕の人生で最も殺人的に忙しかったのは間違いなく就職していた2年間です。
僕はいろんなミュージシャンを見てきましたが、僕が就職していた会社の人より忙しい人は見たことがありません。
おそらく毎日17時間働いているミュージシャンはいないでしょう。
僕は、朝9時から働いていた同僚が夜中の1時に「今からチラシの読みあわせが4枚あって、見積もりを5件作って、それを得意先に持って行ったら帰れるかも知れないけど、まだわからない」と言ったときの乾いた笑いを忘れる事が出来ません。
朝9時にタイムカードを押したのに、退社もなくまた翌朝の10時に出社になっていて、ああ、もうなんか上手く説明できない。胸がいっぱいで。
お昼ごはんも必死で食べました。忙しい時期は、お昼ごはんを注文して、来るまでの間がちょっと休憩できる時間でした。
見積もりを作って、上司に報告して、指示書を作って、上司に報告して、営業に回って、上司に報告して、校正を持っていって、コンセを持っていって、色校を持っていって、雑談をして、次の仕事の話をして、前の仕事の話をして、また見積もりを持っていて、ミスをして、しかられて、上司の報告して、しかられて、出来上がった商品の見本を検品して、納付書を書いて、月の売り上げを計算して、会議をして、会議をして、飯を食って、週末を待って。
週末を待った。ただ、週末を。
月曜日には死にたくなった。
火曜日には水曜日を待った。
水曜日は折り返し点だった。
木曜日は金曜日の予定を入れた。
金曜日には浮き足立って、幸せだった。
土曜日にはでも、家で残った仕事をした。
日曜日にライブを入れて必死で音楽を続けました。
どう贔屓目に見ても、当時僕が就職していた会社の人達よりも働いているミュージシャンはいないと思う。
僕はいやいや働いていたので、まだましだったけど、必死で働いていた人の仕事量は本当に、本当にすごかった。今思えば涙が出そうなほどすごかった。
なんか、あの人達が言葉を持って、なにかを作ればいいような気がする。
精神的なぎりぎりのラインがどこに設定されているのか、僕にはよくわかりませんが、物理的なぎりぎりのラインはあの頃に何度か経験しました。
あと二週間で、納品しなくてはならない商品が30点を越えたときのあの絶望的な恐怖感は今でも忘れません。
その、本当に追い詰められた時に、フィッシュマンズの佐藤伸治が死んで、彼の葬式と、ものすごく大事な商品の納品日が重なって、葬式にいけなかったときに僕は会社を辞めることを決めました。
理由は二つ。
大切な人間の葬式にもいけないような状態はおかしいと思ったことと、
その音楽を受け継ぎたいと思ったからでした。
まあ、でも、今から思えば、しんどくて投げ出したんだろうな。
ほんとに辛かった。
家に帰って、スーツを脱ぐ気力もなくて、ばたりとソファーに倒れて、そのまま朝が来て、3分でシャワーを浴びて、また会社に行きました。
別にそんなの普通で、取り立てて特別なことではなくて、みんなそうでした。
あの頃は、こんなの死んでるのと同じだと思ったけど、あんなにいそがしくがんばっていたのは、あのときだけだな。
僕らは、あのすさまじい時間の拘束を逃れる代わりに、精神的なダメージを宿命的に負ったのかもしれない。
さて、それを音楽に昇華するのか。
できるのか。
出来ないのか。
それが問題だ。ああ。
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ところで、なにも今作りたくない。
メロディーも、歌詞も、雑誌の企画も、イベントも、格言も、コラムも、なにも。
そんな夜もあっていいでしょう?
僕はなにも作りたくなくて、なにも作りたくない僕はいったいどんな存在意義があるんだろうと思ったらこんな日記になっちゃって、ちょっともてあましています。
先日一緒に飲んだ人が
「私は作るのは好きだけど、語るべきことやメッセージが何もないので、それを人に見せたいとは思わない」と言った。
じゃあ、僕のメッセージってなんなんだろう。
僕はなにかを作りたいだけで、それを人に見せたいだけで、メッセージなんてないのかもな。あるのかもな。わかんないな。
それで、今、なにも作りたくないってのは、まあ、いろんなものを作ってきた副作用で、
いまはなにもつくりたくない
ってことなんだろう。きっと。
疲れてんのかな。
そんなに著しく疲れてるとは思えん。
自覚症状がなくて、よくわからん。
Posted by kato takao at 2005年08月14日 07:32 | TrackBack
いつもいつもつくってはしって忙しいひとがめずらしい言葉を言ってるから思わずコメントしてしまいました。あたりまえなことでめちゃくちゃいっぱいつくりつづけているからですね。
いつもついつい見てしまって読んでしまいます。
最近かとうさんが夢にあらわれたのでびっくりしました。私はかとうさんをよく知らないのにたぶん私の中の勝手なイメージのかとうさんが出現したのだと思います。ちょっとしか知らないのに不思議だな〜
Posted by: AKIKO on 2005年08月17日 02:56
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