レコーディングをしています。
こういうときは、レコーディング用の気持ちになりますね。なににも例えられない。レコーディングのためだけの気持ち。
スタジオに向かう車の中で、一人で、全然寝てなくて、自分達の演奏や、僕の曲の事を考えていて、不意に、ああ僕はこの場所に来たかったのだなあと思った。心から。
子供の頃からの夢をかなえたときみたいな感じだった。
まだまだこれからなのに。
壁があって。
僕らはそれを手のひらでぺたぺたさわったり、おでこをひっつけたり、匂いをかいだりしています。
で、誰かが気づく。
あれ?この壁そんなに高くないよ
とか
おーいこっちに扉があったよ
とか
これ、みんなで押したら倒れるんじゃない?
とか。
で、やってみると、なかなか手強い。それはやっぱり壁だ。障子やなんかとは違う。
でも、僕らはそれをなんとか乗り越える。
乗り越えてしまうと簡単だったように思えるけど、僕らはきちんと振り返って、その壁の事も思う。
ベルリンの壁を粉々にしてお土産に持って帰った観光客の気持ちがわかる。
壊れてしまったものとはもう二度と会えないし、壊してしまわないとおもしろくないし。
壁の欠片をとりだして、ときどき眺めます。
少しだけ哀しい気持ちになって、少しだけ誇らしい気持ちになるような気がするけど、気のせいかもしれない。
ねえねえ。と声がします。
君が壊したこの壁は、君をどこに連れてってくれるんですか。
さあ、わかんないけど。
全然わかんなくて、僕は、ときどき本当に本当に自分が怖くなってしまうけど。
それは、僕が知ることの出来ない僕への恐怖ですらあるのだけど。
それでも、やっぱり、どうしようもなく、僕はずっと何かを壊してるんだと思う。
どうか、せめて。
壊していいものばかりを壊していますように。
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