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2004年08月18日

 SCRAP第二号の原稿を97%くらい書き終わりました。
 
 今回は初めて、スランプを味わいました。書けないのです。
 これまでも、どういう方向性で行くかが決まらなくて書けない事はあったのですが、方向性が決まっているのに書けなかったのは初めてです。
 なぜかよくわからない。
 今回の特集が、僕の得意な分野のことではなかったからか。ロボピッチャーのミックスとばっちり日程が重なったからか。
 ただ、言える事は、僕が書けなかったことで、とてもたくさんの人に迷惑をかけちゃったことです。ロボピッチャーにも迷惑をかけたし、SCRAPのデザイナーさんには本当に悪いことをしちゃいました。申し訳なさ過ぎて、もうがっくりきてしまって、最低な気分です。

 異常にアンバランスな3週間を過ごしました。
 ライブをして、レコーディングをして、取材をして、ボロフェスタのブッキングをして、企画を考えて、文章を書きました。いくつかの金銭的な交渉をして、友人からの誘いを断りまくり、独りでご飯を食べて、とんでもない量のメールを書き、受け取り、ちょっとしたけんかをしたり、ささやかなお別れがあったり、お墓参りにいったりもしました。
 たくさんの人に会いました。そして、その話を文章にしました。
 僕は、その人の一番いいたかったことを文章にするのではありません。雑誌として一番いいたいことを文章にします。そこにはいびつなメッセージが残ります。

 本当のメッセージは、ストレートではないんです。
 「まっすぐに響く言葉」とか、「ストレートなメッセージ」とかを届けてくれるバンドが世の中にあふれていますが、その欺瞞に満ちた音楽を恥ずかしいと思わないのが疑問です。そんな言葉で幸せになるのなら、世界中が夢の国だ。

 僕は、ささやかな祈りとともに、インタビューした人たちの言葉を雑誌に託します。 
 これをあなたが受け取ってくれますように。
 僕は、僕のためではない文章を書き連ね、たくさんの人に迷惑をかけながら、やっとさっきほとんどの原稿を渡しました。
 アンバランスな三週間の中で出来た、ものすごい雑誌になると思います。
 でも、今は自信がない。ものすごい雑誌ってことはわかるのだけど、この雑誌が、変えてしまう世界が、本当によい世界なのかどうかの自信がないってことです。

 どうかぜひ、必ず読んで欲しいです。
 そして、思ったことを聞かせて欲しいです。
 何も思わなかったなら、何も思わなかったと聞かせて欲しいです。
 

 オリンピックを見ると、昔聞いた話を思い出す。
 「体操の選手は、身長が伸びると不利だから、成長抑制剤を飲むんだよ」
 そんな話を子供の頃に聞いて、おいおいそんなことのためにがんばりすぎだろ、と思った。
 でも、今はそうは思わない。
 体を削っても、オリンピックで金を取るために生まれてきたのなら、そうすればいい。
 生まれてきた理由がオリンピックなら、なんでもすりゃいい。
 誰も意味が見つけられなくてぼんやりしてる中、そんなふうにてっぺんを目指すのは尊いのかもしれない。
 そして、僕たちは、そのグロテスクなエンターテイメントをテレビの前で笑いながら見るのだ。誰かが自分の生を投げ打って手に入れた能力をみて、げらげら笑い、明日の仕事の糧にする。
 僕は、この世界が狂っているとはいえない。わからない。
 でも、狂っていないなんて、誰にもいわせはしない。

Posted by kato takao at 2004年08月18日 06:50 | TrackBack
みんなのコメント

私は「まっすぐに響く言葉」と「ストレートなメッセージ」は、

意味合いが違うと思いますけど。

私の場合は、幸せになりたくて音楽を聴いている訳じゃないし、

「ストレートなメッセージ」ってのを「まっすぐに響く言葉」として

認識してもいない。

そして不器用なまでに「まっすぐ」な人たちを知っている。

(別に「ストレートなメッセージ」は発していないけど)

だから世界に対してよりも、

それを「欺瞞」と言い切られ括られたことに、ちょっと疑問を感じました。

Posted by: すぎもと on 2004年08月19日 17:58
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