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2003年02月19日


 どうも。

 ここ数回の日記を読み返してみて、ものすごくたくさんの誤植を発見しましたが、直すのがめんどくさいのでそのままで。
 まあ、たいした間違いじゃない。だれも死なない程度。

 歌詞の事を考えていた時期があった。
 自分で曲を作り始めたときで、いつも夢心地で、目に映る物がすべて曲になった。
 今まではただの世界だった世界にメロディーが流れて、僕が望みさえすればそれはすべて音楽になった。
 ずっと曲を作ることについて考えていた。そこに乗せる言葉をいつも探していた。
 目に付くテキストすべてが音楽的に見えました。本なんて読めたもんじゃなかった。1頁も読んだら三曲ほど曲が出来上がってしまいそうだった。

 「つまり」と僕は思った。「どんなことでも音楽に出来るのなら、だれも音楽にしたことのないことを音楽にしよう」と。

 だれも使った事のない言葉で、だれも伝えた事のないメッセージを伝えたい。だれも知らない感情で、だれかのコピーじゃない歌を歌いたい。

 「それで」と僕は思っている。「そして彼が辿りついたのは」そして彼が辿りついたのは、うん。なんだったのか?と。

 僕は今、歌詞を作るときに、ものすごく時間がかかります。とんでもなくたくさんの物を犠牲にしないと言葉が出てきません。
 魂の一番深いところに降りていって、そこに転がっている言葉を拾います。
 もちろん、その言葉は昔の曲で使った言葉です。そして僕は気づく。そうか、もう魂の深いところにある言葉は使ってはならないのだ、と。
 ならもっと浅いところを探す。もっとそっけない場所。そこには妙にジャンクな言葉が落ちている。「何百人も血祭りに上げた絵本の中の王様」とか「毎日毎日早口言葉の練習をしているチンパンジー」とか。
 僕はそれを拾って、しばらくポケットに入れて持ち歩く。時々重たくなって、バンドメンバーなどに見せてみる。「ふうん」っていう感じの表情をされる。よかった。少なくとも、「こんな歌詞を書くやつとは一緒にバンドなんかやってられん!」とはいわれなかった。
 ぴりっと冷えたような時間が流れて、ふと、あのジャンクな言葉は、待ったく別の場所にあると思っていたジャンクな言葉と結びついている事に気づく。僕は用心深くそのラインを辿り、その道すじに落ちているパンかすみたいな言葉も丁寧に拾って歩く。時々そのあたりで、崇さんのドラムが聞こえたりする。
 途中で、使ってはいけない言葉を7億個ぐらい思いつく。ひょっとして作詞って消去法なのかもね。この世にあるすべての言葉を思い描いて、一つ一つ削除していく作業なのかもしれない。
 半分くらい歌詞が出来あがると、なんかロボピッチャーのみんなに会いたくなってくる。こっから先は、かれらの音を聞いてからでないと作れない。そんな気がしてくる。
 知らないうちに、僕はとんでもなく酔っ払っていることに気づく。しかもなぜか、メロディーとコード進行も出来あがっている。
 なんとなく満足して、僕はそれをテープレコーダーに録音する。MDではない。テープレコーダー。魂はアナログの中にこそ埋没していくのだ。

 次の朝起きると、机の上にちょっとした予感がおいてある。
 手書きの歌詞。ざっと読んでみる。うん、よい感じ。テープレコーダーの再生ボタンを押す。知らないメロディーを僕が歌っている。
 そうか、昨日も俺は曲を作ったのか。と思う。よかった。昨夜もちょっとした魂の格闘があったっていう証拠です。

 そして、だいたい七割くらいがボツになる。まあ仕方ない。ボツになった曲がまたジャンクになって、海の向こうの砂浜に打ち上げられる。
 僕はそれをその内にまた見つける。無駄がない。よく出来たシステムですね。

 後のことは彼らがする。ざまーみろ。次苦しむのはおまえらの番だ、と思う。
 僕は残りの時間をぼんやりと過ごす。あとはステージに上って、チューニングを合わせて、歌いさえすればいい。

 どうやって曲を作ってるんですか?というとてもイノセントな質問をもらいました。
 こんなです。
 参考にできるもんならしてください。

Posted by kato takao at 2003年02月19日 05:14 | TrackBack
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