じゅ:これも聞きたかったことなんですけど。ソロ活動のほかにも、vezとかgonvut(GRiPのゴンダタケシさんとのユニット)とかAKUH(YANAさんとのユニット)とかいろいろやってはるじゃないですか。それぞれなんとなく区別をつけられるようになってきた、ってブログに書いてありましたよね。それは、自分の中で、今日はvezの日、今日はソロの日みたいな分け方をしてるんですか。
フトシ:ああ、そんな器用な感じじゃない。ただ、自分が作って自分が歌っている曲の区別っていうのかな、これはもうAKUHのものだなとか、vezのものだなとかわかってきた。
じゅ:それは曲を作るときに分けるんですか。
フトシ:最初はそうやってきたんだけど、やっぱさあ、人とやりだすと相手がこの曲やろうよ、とかなったとするじゃん。実際、「Fairy Tale」(未発売)は自分のソロ音源用として作ってたんだけど、vezのリハのときになんかちょっと合わせてみたくなって、ソロ用でこんな曲あるんだけどって言って聞いてもらって、いいじゃんって、合わせたらできたの。それであの曲はvezで。vezでやってくうちにそうなっていったって感じ。「Black sheep tail's」(「/DISS/CODE/SESSION/SEND/4/」収録)もそうだし。繰り返してるから自然とそうなってきて。今、AKUHでやってる「クリアウォーターダークネス」(未発売)も、一昨日ワンマンで歌ったんだけど、やっぱり歌いながらもAKUHの曲だなと思いながら歌う自分がいる。
じゅ:感覚的なものなんでしょうか。
フトシ:勝手にそう思ってるのかもしれないけど。でも俺にしてみれば全部俺だからさ。だからわかんないんだけど。例えばHATEの曲ってクレジットは俺かもしれないけど、HATEの曲じゃん。そういう感じなのかもしれない。
じゅ:なんとなくわかるような気がします…。
じゅ:「ジャングルライフ」のインタビュー(フリーペーパー。今年の4月号に掲載)を読ませてもらったら、HATEの頃からソロ活動をやってたって書いてあって、それはなぜですか。バンドではできないことをやろうと思ってたんですか。
フトシ:あのね、やっぱ秒読み状態っていうか、解散の。
じゅ:そういうのって自分でも感じるんですか。
フトシ:感じるっていうんじゃないんだよね。それぞれがそう思うんだろうね。で、そうなりだすんだよね。曲を作ってみんなで合わせようとかするんだけど、それができなかった曲が「GRATEFUL DAYS」(「PEACE RADIO 16.5135HZ TRACKS」収録。ソロで一番最初に作った曲)とかgonvutでやってる曲で。HATEってすごい売れてたわけじゃないからさ、俺自身がもっとボーカリストとしてがんばらなきゃいけないという思いもあったし。それでソロを始めてたの。
じゅ:バンドでできなかったっていうのは、なぜなんですか。
フトシ:単純にテクニックの問題。俺以外のメンバーの。それを演奏できる引き出しがなかったんだと思う。非常に個性的なメンバーだったので。いい意味でね。敦(ベース)は敦の音でしかないし、Fuchi(ドラム)もMitsu(ギター、現在もvezで一緒に活動しています)もそうなんだけど。だからじゃないかな。
じゅ:「なんでフトシさんが歌い続けているのか」っていうのが、今日、私が一番聞きたかったことなんですよ。自分を表現しようとして歌ってるんですか。
フトシ:あー、どっから説明すればいいのかな…。
じゅ:じゃあ、自分の中で歌しかないって思ったのはいつからなんですか。
フトシ:覚えてないんだよね。でも、節目節目で、歌を、音楽を、止められない状況になるんだよね。友だちが亡くなったり、おふくろが亡くなったり。それでHATE2枚目のシングルの「teenthrash」かな、俺、ここで初めて前向きな詩を書いたんだよね。“それでも生きることを選ぶ”って。で、ファンとのメールのやり取りを始めたんだよね。だからそこかも。
じゅ:それはきっかけがあったんですか。
フトシ:あのね、俺、おふくろが死んだときにパンクしちゃったんだよね。今は自分にとって歌があるから、支柱というか、よりどころがあるから、それをがんばればいいというのが明確にあるけど、そのときはそれがなかった。じゃあどうすんだ、っていう問いかけをしたときに、生きるしかないじゃん。それしかない、そういう言葉しか残らなかった。じゃあそれを詩にしよう、みたいな感覚。で、その詩を歌ったときにファンの反応がすごかったの。それまでずっと「Diary」(1st. ALBUM「DETOROIT」収録)とか、「I'll kill myself」(2nd. ALBUM「HELL'S KITCHEN」収録)とかさ、「僕の目は死に痛みを感じない」(1st. Maxi)とか歌ってきてさ、いきなり変わった俺に対して何かがあるのかもしれないし、よくわかんないけど。伝わるんだ、こんなにわかってもらえるんだって、すごいうれしかった。だからそのへんから、HATEとファンのすごい密接な、特別な何かが生まれ始めたような気がしなくもない。
じゅ:それは何歳くらいの頃ですか。
フトシ:30くらいかな。あの詩を書いたのはでかいかも。そう、あの詩を書いたから逃げられなくなって。で、俺、何年後かにね、「あの詩を書いたときの自分に教えられることがある」って日記に書いたことがあるわ。それだね。「teenthrash」の落とし前がなかなかつけられなくなって。だから最後、「the last resending teenthrash」(LAST ALBUM「LOVE/HATE」一番最後の曲)という詩を書いて、もう一回「teenthrash」に向かい合ったんだ。それで詩を書いてる途中で、俺、スタッフに夜中電話して号泣して。ダメだ、俺って。
スタッフ氏:「teenthrash」のアンサーソングをまわりも期待してて、本人も頭の片隅にあったからずっとそれをしたためてたんだけど、「the last resending teenthrash」を書くときに、全部それを捨てたんですよ。
フトシ:そう、全部捨てたの。で、書き直したの。HATEの10年間を全部込めて。「それでも生きることを選ぶ」、そのあとは何だって。答はすでにあったから。「愛される生き方」って。だからそれをそのまま書こうと。で、もう一回それを歌う。「the last resending」って“再送”って意味なんだけど、「teenthrash」をもう一回送ろうと。
じゅ:「lyrics」のコピーにも「愛される生き方」って書いてあるじゃないですか。でも私は、昔のことを知らなかったから、このコピーはフトシさんが書いたんじゃないと思ってたんですよ。「愛される生き方」っていうのがどこから出てきたのかがわからなくて。でもテーマとしてずっとあったってことなんでしょうか。
フトシ:テーマっていうか、自然体で、そうじゃなきゃいけない、そうであればいい、みんなが。
じゅ:フトシさんって、他の人が自分をどう見てるのかあまり気にしない人なのかなっていう先入観があったんですが。
フトシ:いや、全然気にするよ。みんなと仲良くしたいんだもん。うん、みんなと仲良くしたい。
じゅ:それは昔から変わらず?
フトシ:ううん、「teenthrash」以降。
じゅ:やっぱりそこが転機になってるんですね。HATEを解散したときに歌うことを止めようと思ったそうですが、それ以降は止めようと思ったことはないんですか。
フトシ:うん、ない。今は、「lyrics」の「SLIDE」(1曲目に収録)通り。今の意思表明はあの曲なの。太陽が“SLIDE”していく、でももう一回上ってくる。それを繰り返せばいいのかな。正直に全部。
じゅ:ファンの人にはどういった思いを抱いてますか。(あえて漠然とした質問を投げてみた)
フトシ:ファン…。愛してるよ、一人ひとり。変わってほしいなとは思う。俺の歌を聞いて感動してくれたら、幸せになってほしい。
じゅ:プラスになってほしいってこと?
フトシ:うん。これも数年前に気がついたんだけど。今まで無意識に主役はこっち(ミュージシャン側)だと思ってたの。でも違うんだよね。じつは音楽って、主役はお客さん一人ひとりの心の中にあるんだって。演奏してる俺たちはあくまでそれを盛り上げるためにいるだけなんだよね。
じゅ:ああ、そこまで思いますか。
フトシ:そこでぱっと思いついたのが、「タイタニック」でさ、最後まで演奏してた人たち。あの人たちは正解なんだよね、きっと。あれがたぶんミュージシャンの死に様なんじゃないかな。あくまでみんなを楽しませて、みんなの時間を豊かにして死んでいく…。それは最近、思う。
じゅ:ツアー、残り本数少なくなりましたが。
フトシ:今日、この時点では早く東京に帰りたい…。もう早く東京に帰って富士そば(立ち食い蕎麦屋らしい)食べたい…。決してものすごくうまいもんじゃないんだよ、でも素晴らしくバランスがとれてて…。
スタッフ氏:2年前まではほんとに不味かったんですよ。だから富士そばっていうと、ええーって言う人もいると思います。でも今食べたら美味しい。
フトシ:あと吉そば(これも立ち食いのお店らしい)のうどん。これも麺が変わったの。 (このあとも富士そばの素晴らしさについて熱く語るフトシさん…笑。割愛してすいません)
じゅ:それは何なんですか。週に何度も通っちゃうわけですか。
フトシ:ううん、別にそういうわけじゃなくて。地方地方で、うまいとされるものを食い歩いてるんだけど、なんかね、ほんとにうまいのかこれっていうのがいっぱいあるんですよ。なんか腑に落ちないんだよね。洗脳されてんじゃねえかと思うんだよね。ここへ来たらこれを食え、みたいな。しかも無駄に高いでしょ。
じゅ:それは観光客用のところに行ってるからですよ。
フトシ:それが許せないの。そういうのに俺たちは素直にひっかかってしまうわけですよ。それでひっかかるたびに「あー、富士そば食いてー」ってぼそっと言うわけ。これ、東京でも食えんじゃねえってものばっかりよ。(以下延々と続く。割愛再び)
じゅ:ちなみに大阪では何を食べたんですか。
フトシ:たこ焼き「味穂」。どて焼き、おでん。そういえば、広島ではうまいお好み焼き食った。でもお好み焼きもさ、自分でがんばればなんとかなるよ。だって広島にしかない小麦粉とかないでしょ、たぶん。
じゅ:いや、ソースが…。あ、でも東京にはあるか。
フトシ:あるでしょ。俺、ほんと言いたい。「東京なめないでほしい!」
じゅ:いや、なめてないから…笑。
じゅ:明日は(大阪で)ワンマンですね。
フトシ:明日はまた広島(ワンマン)みたいにみんなで一緒に、何聞きたい?とか言いながらやろっかなとか。
じゅ:アットホームな感じで?
フトシ:場所がたぶんそういう感じなんだよね。PAも、がーってやれるシステムじゃないみたいだし。でも実はそれが一番つらいんだよね。終わらないから。(お客さんが)終わらせてくれないから…笑。3月のオールナイト(レコ発ワンマン。3部構成で4時間超の長丁場ライブでした)と一緒ですよ。
じゅ:6月7日のツアーファイナルは?
フトシ:7日はがんばりますよ。とにかく「帰る場所」と「So」をツアーファイナルに持っていって、そして「Last Song」(「lyrics」ラストの曲)を歌いきったら、終わりはしないと思うけど一段落はするかな、自分の中で。歌を作った責任は果たせるかな。しっかり歌いたいから、あんまりしゃべんないと思う。今は「Last Song」を封印してる自分がいるから、なんで封印してるかって意味も含めて、7日はストイックなほうがいいなあと。
じゅ:いろんな曲たちが、3月のレコ発ワンマンに聞いたときとは全然違うものになってるんでしょうね。
フトシ:うん、それはね、俺も楽しみ。
(おわりです)
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キャバクラを前に財布の中身を確認するフトシさん。
(完全ヤラセです)