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2015年12月16日

もうあれから一週間経ったのか。
関西に四日ほどいたのだけど、驚くほどたくさんのことがあって、驚くほどたくさんのことを思ったので、あのライブがなんだか遠く感じてしまうけれど。
とにかく、ネガポジでライブをしてきました。

リハーサルでネガポジに入ったときに変わらないにおいがしてびっくりした。
ここは変わらなかったんだ。
変わらないということを選んだのだと思う。
それを選び続ける尊さと愚かさを僕は知っている。
ネガポジが「変わらない」ことを選んだのは必然だ。
ネガポジなのだから当然だろう。

リハを終えてお店の周りをうろうろと歩く。
当時よく行っていた居酒屋にふらりと入る。
お店はなにも変わっていなかったけれど味は落ちていた。
ほら、同じじゃいられない店もある、と思った。

お店がオープンになって、たくさんのお客さんがやってきた。
10年ぶりの人がたくさんいて、5年ぶりの人がたくさんいた。
「やあ!久しぶり!」と僕は言い続けた。
ちゃんといろんな場所でみんなの人生は続いていて、きちんと生きつづけた結果、今日こうしてまた会えたのだと思った。
嘘だろってくらいみんな変わってなくて、山崎さんにいたってはちょっと若返ってすらいた。信じられん。
太ってないやつはみんな今でも人前で歌ってるやつらだった。人前で何かをしてないやつはみんな太ってた。寺島さんも太ってたなあ。

ライブがはじまって。片山君。
何年ぶりだろう。昔はしょっちゅうブッキングされたけれど。
変わってないようで変わってる。
ずいぶんいろんなことがあったみたいだけれど、こうしていま歌っている凄みがある。

そして月下美人かなさん。
はじまってすぐ泣いて、二曲目でまた泣いた。
とんでもないライブだった。
すばらしすぎて息が詰まりそうだった。
知らないうちに僕も歌ってた。

「僕のセリフは長すぎて 
 そうでない日は短すぎて 
 覚えるたびに違う気がして 
 シナリオ変えたらそれもまた違う」
https://www.youtube.com/watch?v=tVu00vvlYq4
 僕の音楽を一ミリでも好きなら聴いてみてくれ。とてつもなくすばらしい曲だから。

もうしばらくこんなに人の音楽で感動することはないだろうなと思っていたら、その後にフテハリのうめちゃんのライブがはじまった。
フテハリ。
18年前に同じ場所でライブをしていた。
あの頃の曲をやって欲しいなと思っていたけれど、信じられないくらい進化していた。
歌もギターもめちゃくちゃうまくなってて、込められている情感がすごい。
「俺は現在進行形のミュージシャンやから」と彼はMCでいった。
僕は恥ずかしくて。
僕はここに懐メロを求めてきて、懐メロを歌いに来たのだなあと思った。
恥ずかしかった。
でも、仕方ない。僕は僕に歌える歌を歌うしかないのだから。

曲順を決めて、ギターを持ってステージに上がって、チューニングがなかなか合わなくて、ギターの音もなかなか決まらなくてぐずぐずして、でもお客さんがずっとステージを見てるので向き合った。
なんていって歌いだしたのかよく覚えていないけれど、とにかく歌って。歌って。歌った。

ネガポジみたいに音が響いていった。
音が散っていく。
言葉がどこかにきちんと届くみたいな気がする。
実力以上に音が鳴るわけじゃない箱。
ここで僕は歌ってきたんだなあと思う。

最初の二曲を歌い終わったときにずっと抱えてきた気持ちみたいなものを吐き出し終わって、少し気が楽になって、もすぐ終わるんだなあと思ったら、ものすごく悲しくなってきて、もうここがなくなってしまうことが、この時間が終わってしまうことがものすごくかなしくなってしまって。
「ネガポジはなくなるわけじゃなくて、移転するだけだとみんないうけれど、この場所からなくなることをきちんと悲しまなくちゃいけないと思う」と僕は言った。
悲しまなくちゃいけない。この素敵な場所がなくなることをきちんとみんなで悲しまなくちゃ先に進めない。

6年ぶりにネガポジのステージに立って思ったことは、ネガポジはずっとネガポジだったということで、それは衝撃であり、それが衝撃であると気づけるほどにやはり僕は変わってしまっていた。
僕はもうネガポジ的ではなかった。
懐メロを俺は歌いに来たのだ。
あのころを懐かしんで。あの頃と同じ気持ちになるために。
それはなんと恥ずかしいことだろう。

6曲歌って時間が来た。
でもどうしても歌いたい曲があったからお客さんに「アンコールしてくれ」って言った。
めちゃくちゃな話だけど、僕の持ち時間が終わってしまってからさらに三曲歌った。
どうしても、歌いたい曲があったんだ。
僕が就職していた頃に、ネガポジにずっと出入りしてて、フテハリのライブを見た後に家に帰って作った曲だ。
あまりにも今の僕とネガポジの関係を言い表していたから、一人で練習していたときに鳥肌が立ちまくった曲。

汽車汽車走れ

別れの時が近いから すべて愛しく思えるんだ 
「生きてる限りまた会えるさ」と 信じちゃいないセリフを吐いた
そして僕らは汽車に乗り 違う町へと流れゆく
口を開くと泣いちゃいそうなので 僕は黙って窓の外見て

夕暮れが赤く染まり また別の夜を連れてくる
終わり始まりまた終わる 馬鹿げたカーニバルは続く
いつものあのハーモニカを どうか今日は吹かないでよ
夢が覚めちゃうから

汽車はごとごと揺れながら 怖い速さで進んでいく
いつしか僕ら手をつないで 暗闇の中眠りについた
目を覚ましたらもう違う 世界で僕ら生きるんだね
今感じてる温かさが 永遠のように思えるけど

ねえ友達よ目を覚ましてよ 星がゆっくり動いていくよ
じっとするのが嫌になった 北極星さえも動きたそうに
神様僕に信じさせて 信じることは強さだと
夢が覚めちゃうから

そして僕らは目をさまし それでもやはり汽車の中
暗闇の中目を凝らして 見えないものを探していた
そっと手を伸ばしてみたら 誰かのぬくもりがあった
どんなに暗い闇の中も 超えていけると信じている

朝焼けが僕らを打つ生きる強さとともに打つ
必ず朝が来るんだと忘れてしまった僕らを打つ
愛してる愛してる汽車汽車走れ連れて行け
夢が覚めちゃうから
夢が覚めちゃうから
夢が覚めちゃうから


歌い終わって、「もう終わりです」といって、たくさんの拍手をもらって、山崎さんのところに言ったら「お前は預言者やったんやな」と言いながら握手してくれたから「ああ、悪いライブじゃなかったんやな」と思った。
寺島さんは久しぶりすぎて少し照れくさそうにしてた。
たくさんのお客さんからかわるがわるに挨拶されて、僕は本当にたくさんの人に「ああお久しぶりです」と言った。
こんなにたくさんの人たちに「おひさしぶり」だなんて、俺はなんと罪深いんだろう!!

打ち上げが始まって、何故か俺のギャラは取り上げられて、すべてみんなの飲み代になった。
「これだけありゃあそうとう飲めるぞ」と誰かが言った。
ネガポジは相変わらずネガポジで、もうめちゃくちゃだった。
「今日の加藤のライブは最後の曲以外くそだった。でも最後の曲があったからよいライブだった」と寺島さんと山崎さんは言った。
まあそれでいいさ、と僕は思った。
「よいライブだった」なんていわれたことこれまでほとんどなかったんだから。
最後に「よいライブ」が出来たらそれでいいや。

結局僕らは朝の6時ごろまで飲んだ。
何を話したのかほぼ覚えてない。
どうやって帰ったのかも覚えてない。
ネガポジから外に出たときに、まだ外が暗かったので「ああ、今は冬なんだなあ」と思ったことは覚えている。
昔ネガポジで飲んでたら、外に出たときは大体明るくなってたから。

そんな夜だった。
ネガポジで最後に歌えてよかったな。
そして見に来てくれたみなさん本当にありがとう。
あんなふうにはもう歌えないんじゃないかと思います。

不思議な夜。
これまでの断片的だった人生が奇妙な符合を見せながら、これからについて思いを馳せさせるような。
そんな夜。

「リアル脱出ゲームで大もうけしてるんだってすごいね!」なんて誰も言わなかった。
あの夜のライブの出来だけについてみんなが話してた。
忘れられない夜。
僕は多分これからも歌っていくだろう。

次のライブは2月11日。渋谷ラストラワルツにて。
よければお越しください。

不思議な夜の、不思議な歌を歌いますよ。

では、また。

Posted by kato takao at 2015年12月16日 03:11 | TrackBack
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