アイアムじゅんこさんが会いたい人のところへ行って話を聞いてくる企画。
その名も「アイアムじゅんこのそこにおすわり!」
彼は今も「生きる」ことを選んでいる。
そして「愛される生き方を」も。
これは高木フトシさんのソロアルバムに書かれていたコピーです。
まだファン歴の浅い私は、うまく言えないのですが、
「愛される生き方」という言葉に違和感を抱きました。
高木フトシという人にはどこか似合わないと思ったのです。
彼が一体どんな人なのか知りたい。
なぜ高木フトシという人は歌い続けるのか。
「愛される生き方」とはどこから出た言葉なのか。
そんな疑問をぶつけたくて座っていただきました。
ラブ&ピース。
フトシ → 高木フトシさん
じゅ → じゅんこ
じゅ:体調大丈夫なんですか?
フトシ:大丈夫よ。
じゅ:昨日のライブ(KING COBRA@大阪)で声出すの大変そうに見えたんですけど。
フトシ:昨日はね、アンプがトラブってたのもあるし、前日の広島ワンマンで20曲くらい歌ったのね。たぶん疲れてたんだよね。よくよく考えてみたら、俺、ワンマンの翌日にライブって初めてで、だからそのせいだと思う。ライブ4連チャンも経験なかった。それにvez(フトシさんがやってる4人組のバンド)だったらああいうイベントにすっと入っていけるんだけど、弾き語りだとね…。予測はしてたんだけどね。
じゅ:出演者数も多かったし(6組)、時間もおしてたし。
フトシ:そうそう。50分おしだったから。チェンジのこととか考えちゃったりして。1曲減らしたし。
じゅ:何?
フトシ:「空の糸」(「OUTSIDE SINGLE II」に収録)。
じゅ:ああ、やっぱり。そうかと思った。
フトシ:でもそれもまたイベントなんで。そのかわり1曲減らしたぶん、頭から最後までがーっといこうと思ってたから。それはできたと思う。でも暑かった…。
じゅ:汗だらだらでしたよね。
フトシ:あそこはねえ。別に声が出なくても気持ちでおしきれれば、それもいいのかとも思うし。ライブはやっぱりダメなとこも全部出てるほうが楽しいじゃん。
じゅ:うん。それもひっくるめて。
フトシ:こっちもだし、そっち(お客さん)もだと俺は思うんだけど。CDではそれはできないから。何がライブかよくわかんないけど、俺はそういうほうがいいんじゃないかと思う。今日はこういう気分だからこういう感じでこういう歌を、ってほうがいい。ただそこで手を抜く、マイナスの方向はイヤだけどね。つらいからってつらいことをやらないライブはイヤだ。一生懸命さえやっていればそれがいいと思う。
じゅ:ツアーが始まって2ヵ月くらい経ちますよね。こんなツアーにしようとか、こんなツアーになるだろうなみたいな予想は事前にあったんですか。
フトシ:いや、全然。
じゅ:ソロツアーって初めてですか?
フトシ:初めて。東名阪はあるけど。全国ツアーはHATE HONEY(1996結成、2006解散。以下HATE)の「SIXTEEN」ツアー以来なんで。
じゅ:それは何年くらい前?
フトシ:「Jack Regret」(3rd.Maxi)の頃だから何年前だっけ?そのとき(2003年)以来。ただ、HATEのラストツアーは仙台と東名阪しか行けなかったの。特に北海道とかはHATEを再結成するときに(2000年に一度活動停止をしています。再結成は2002年)、次こそは必ず北海道行くからって言ってたの。にも関わらず、一度も行けず、最後のラストツアーでも行けなかったから、これはまずいなってずっと思ってた。このツアーでは、HATEで行けなかった場所にも行くから、当然HATEの歌は歌おうと思ってた。
じゅ:実際に行ってみてどうでした?
フトシ:それはもう予想通り。もう何年も待ってましたっていう人が、数は少ないけど全国各地にいて、郡山は9年ぶりだったんだけどそういうとこもそうだし、盛岡もそうだし。北海道では、「Chair」(2nd.ALUBUM「HELL'S KITCHEN」収録)を歌い終わったあとに、お客さんがさ、男連中が、ぶわーーーってなったの。あれはほんとに忘れられないんだよね。悪かったなって思った。でも俺も俺で、北海道でHATEを歌えたからそれはもう感無量。長崎もそうだったし。ごめんねって思いと、よかった歌えて、っていう思いと。HATEを上陸させられたから。ほんとはバンドで来なきゃいけないんだろうけど、それは叶わないので。
じゅ:ライブとかで歌ってると、だんだん曲が成長することってあるじゃないですか。それは感じたりしますか。
フトシ:感じる。俺ね、それ意外だった。弾き語りってそういうのないと思ってたの。バンドってみんなで動いてみんなでそれを演奏するから、変わっていくのは当たり前だし、どんどんシェイプされていくから当然だってわかるんだけど、弾き語りはその都度その都度、その空気だと思ってたの。それが…。
じゅ:違いますよねえ。
フトシ:どのへんだっけかなあ。高崎あたりで「帰る場所」と「So」(どちらも3月に発売されたソロアルバム「lyrics」収録)が軽く生まれ変わってることに気がついたんだよね。すごいね、音楽って。
じゅ:すごいですよねえ。
フトシ:ツアーって、音楽ってすごい。だからなんかこの感覚なくしちゃまずいと思って、南にツアー来る前に一人でリハをやってたんだけど。これはやんないほうがよかったみたいね。
じゅ:え、なんで?
フトシ:気合いばっか、なんか…笑。でも長崎は悪くなかった。でももしかしたら、あんまりそういうことに気づかなくていいんじゃない。もっと自然体でギター持ってステージに立ってその曲を鳴らせば、自然体で何かがざくっとおりてくる。だからその瞬間を見せたほうがさ。バイブスってそういうもんでしょ。だから肩ひじ張らず…。
じゅ:ありのままを。
フトシ:そうそう。でもやりきってきちゃってるからね。それはそれでストイックな方向で持っていく…っていう結果が昨日のライブ…笑。焦ったなあ、声ガラガラ、だけどいく!みたいな。
じゅ:うん、でも気持ちはすごい、がーーーーーって出てるのはわかったから。
フトシ:俺はボクサーかって…笑。格闘か。
じゅ:闘ってましたねえ…笑。
じゅ:「lyrics」リリースのときに「売れたいと思った」ってブログに書いてたでしょ。あれはより多くの人に届けたいっていう意味でいいですか。
フトシ:あのときの言葉はそう。もちろんそれはそうだけど、それよりも何よりも俺ね、恩返ししたいのよ。俺を好きだって言ってくれて、俺を助けてくれる人たちに。こういうこと言っちゃうと、かなり陳腐になるからほんとは言っちゃいけないんだけど、そんときはほんとにそう思ったの。なんかあまりにも幸せなのね。たとえば今日、じゅんこちゃんがこうやって、仕事じゃないのに俺にプラスになることをやってくれてるわけでしょ。それはもうさ、返したいわけですよ。少しでも。だけど、返せるメドがいまだに立ってなくて。たぶん無理…。ごめんね、無理だから…笑。なんか俺にそういう期待してもたぶん何も返ってこないから…笑。
じゅ:あはは。期待してないですから。だって歌ってることで返せてるじゃないですか。
フトシ:その感覚が俺にはわかんないからさ。歌ってる自分が幸せだから俺は歌ってるだけでいいのか、とか思っちゃうじゃん。「歌ってるだけでいい」ってよく言われるんだけど。えー、ウソーって…笑。そんな馬鹿な!っていつも思う。悪いなーと思って。そうやって少しでも返せたらと思って全国のライブハウスをまわるツアーだったんだけど、N.E.S.(このツアーで東京以北9ヵ所を一緒にまわった4人組のバンド)を含め、さらに俺は全国各地で借りを作って終わっていく…。どうすんだ、俺…。
じゅ:また返しにいかなくちゃ!
フトシ:そうそう。大変ですよ。何やっても返せない。
じゅ:返したつもりがまたさらに大きくなって…。
フトシ:そうそう。
じゅ:詩はふと浮かんでくるんですか。いつも考えてることをまとめるんですか。
フトシ:ソロはねえ、意外とおりてきさえすれば、ばーって書ける。おりてこないと考えるけど。
じゅ:それは書こうと思って考える?自然とおりてくる?
フトシ:うん、自然におりてきてるような気がするんだけど、でもね、最近気がついたけど、自然におりてきてるようで、じつはずっと考えてる。
じゅ:ああ、やっぱりそうですよね。
フトシ:そういうことを、ぽんっ、と形にしたくなるんだろうね。詩を書いてる人はみんな一緒じゃないかな。あと、詩はね、盛岡行ったときに、啄木さんの詩を読んでね。啄木さんは愛のある人だね。ふるさとの山にあそこまで愛を表現できる。俺は、自分だの世界だの社会だの人だの…。啄木さんみたいに、もっとでっかいものを人を通して表現できるんだなと思って。よくよく考えたら啄木だけじゃなくて、ジャン・コクトーだってそうだし中原中也だってそうだし宮沢賢治だってそうだし。いっぱいいるでしょ。すげーな。
じゅ:影響を受けた人はいるんですか?
フトシ:なかなか影響を受けてもね、それを歌にするのは難しいから。好きな人はいるけど。
じゅ:誰?
フトシ:カート(ニルヴァーナ)でしょ。トム・ヨーク(レディオヘッド)でしょ。マイケル・スタイプ(R.E.M.)の詩はいつもぐっとくる。
じゅ:英語はオッケーな人なんですか?
フトシ:おー、意外とオッケーだぜ!…笑。ウソ。全然全然。まだがんばってる。
じゅ:辞書ひいたり調べながら?
フトシ:それやっても続かないじゃん。だからDSの「えいご漬け」と、時間があるときは、ストーリーを知ってる映画のDVDを、字幕を消して流しておくの。そうすると新たな発見があったりして。あと今は、英語をしゃべるっていう羞恥心と闘ってる。どうしてもルー語になっていくから…笑。
じゅ:外国のお友だちとかいるんですか。
フトシ:いないいない。
じゅ:じゃあ、いつ英語を?
フトシ:普段は家で。しゃべるっていうか、頭の中で訳してる。扇風機って英語で何て言うんだろうとか。ツアー中も、移動してるときはなるべく英語に目を向けてた。恥ずかしいよ、英語の話は…笑。まだがんばってる途中だから。書くのは全然平気なんだけど。でも次にジンジャー(ザ・ワイルドハーツのボーカル)と会ったときはめちゃくちゃ話すよ!
じゅ:2月のジンジャーソロツアーに同行したときは、まだ「えいご漬け」の前だったんでしたね。
フトシ:うん、あのとき反省したんだもん。ジンジャーはね、話したがってたのに。すごいいい人だったんだよ。超反省した。
じゅ:次に会ったときにリベンジですね。
フトシ:3度目の正直。俺のほうがむしろペラペラだぜってくらい。できれば語り合いたいじゃん。
じゅ:そうですよね。フトシさんは語るの好きそうですよね。ブログとか読んでても感じます。
フトシ:イヤ、全然好きじゃないよ。
じゅ:うそー。
フトシ:酔っぱらってバカ話してるのが好きなんだけど、本来。なんかねー、そういう状態にさせる…あーでもどうだろ。俺、語るの好きなのかな? (スタッフ氏、間髪入れずうなづく)
じゅ:即答じゃないですか…笑。
フトシ:好きみたい。
じゅ:うん、好きだと思う。たぶん、まわりにもそういうお友だちがいっぱいいるんだと思う。
フトシ:いるね。そういえばそうだな。でもYANAちん(vez、AKUHのドラム。ちなみに元ZEPPET STORE)はそうでもない。YANAちんは語るより食うのが好きなの。それで語る俺を茶化すのが好き。だから一緒にいると安心するの。いいバンドですよ、vezは。