「 もし言葉が 」
「 もし言葉が 」
黙っていたほうがいいのだ
もし言葉が
一つの小石の沈黙を
忘れている位なら
その沈黙の
友情と敵意とを
慣れた舌で
ごたまぜにする位なら
黙っていたほうがいいのだ
一つの言葉の中に
戦いを見ぬ位なら
祭りとそして
死を聞かぬ位なら
黙っていたほうがいいのだ
もし言葉が
言葉を超えたものに
自らを捧げぬ位なら
常により深い静けさのために
歌おうとせぬ位なら
〜 谷川俊太郎詩集 『 あなたに 』 より
Posted by taro
November 6, 2001 12:11 AM