アイアムじゅんこさんが会いたい人のところへ行って話を聞いてくる企画。
その名も「アイアムじゅんこのそこにおすわり!」
今回座っていただいたのは、そのうちの一人、ロボピッチャーの伊藤忠之さん。
知り合ってからもう随分経つのですが、その実体をよく知らないままだったりして…。
一度ゆっくりお話したい!という念願叶って、登場していただきました。
これまでのこと、これからのこと、いっぱい語ってくれましたよ。
伊藤:伊藤忠之さん
じゅ:じゅんこ
じゅ:ロボピッチャーってすごい不思議なバンドで、知らない人に「ロボピッチャーってこういうバンドなんですよ」って説明しにくくて。
伊藤:僕たちもそう思うし、「どんな音楽やってるんですか」って聞かれたときに、説明できない…笑。
じゅ:そういうとき、なんて言うの?
伊藤:「まあ、ポップロックかな…」。ある意味、外れてないし、ある意味、ものすごい乱暴な言い方かな。
じゅ:確かにその範疇には入ってるけど…。
伊藤:ほんとにとらえどころがなくて、良くも悪くも「こういう音楽でございます」ってパッケージして売りにくいっていう。
じゅ:BBSでロボピッチャーのキャッチコピーをみんなで考えたりしてたでしょ。
伊藤:あれはリスナーが一番的確な答えを出してくれるんじゃないかと。
じゅ:読んでてどうだった?
伊藤:聞き手のイメージがわかってすごい楽しかったけど、やっぱり千差万別で、聞く人にとって何十通り、何百通りの答えがあって…。
じゅ:そうだねえ。
伊藤:「無糖炭酸ポップロック」っていうのが大賞になったわけだけど、ほんとにロボピッチャーのことを一言で表すのは難しい。僕も加藤君(ロボピッチャーのボーカルさん。keeponmusic.comでブログ書いてます)も昔から、ロボピッチャーを始める前からよくわからんと言われ続けてきたと思うし、いろんな音楽をやってて、いろんなものに興味があるから、新しいジャンルのものに次々に手を出していって…。やっていくうちに混ざっていって、悪く言えば、結局どこに向かってるの?って思われてきたけど、ロボピッチャーをやってもそれは変わってない。これはいい意味で。
じゅ:その二人と、有田さん(ロボピッチャーのベース)と森さん(ロボピッチャーのドラム)は、バンドの中での立ち位置はどういう風に違うの?
伊藤:二人(有田さんと森さん)は素晴らしいプレイヤー。素晴らしい演奏家。彼らが土台をしっかりキープしてるからロボピッチャーが確かな表現として届いていく。
じゅ:伊藤さんが好きなことをやっても受け止めてもらえる?
伊藤:そう。彼らもまた一つのジャンルにこだわる人じゃなくて、いろんなことやってるし、ロボピッチャーに共通することってそこかなと。こんなんはやりたくないとか言う人はいなくて、やったことないけどおもしろそうやからやってみようかってなる。
じゅ:おもしろがりな人たちの集まりなんやね。
じゅ:伊藤さんは、ずっと昔から人前で演奏したりしてたの?
伊藤:うーん、それはだいぶ遡って、ロボピッチャーから10年くらい前まではあったけど…。ソロでやってるときは、レコーディング中心で作品を出してっていうだけなんで、表に出ることはほぼなくて、そういう意味ではロボピッチャーが初めてかな。
じゅ:なんか伊藤さんって不思議な空気感を漂わせてる人だなといつも思ってるんですけど。
伊藤:自分でもまだスタイルが確立してないというか。全部、ロボピッチャーを初めてからスタートしたことで。キーボードを弾いたのも初めてだったし。
じゅ:そう!それはびっくりしたの!
伊藤:それもまた不思議な話で。
じゅ:ロボピッチャーやろうって決めたときには、伊藤さんはどういう関わり方をしようと思ってたの?
伊藤:(加藤さんから)電話がかかってきて「キーボード弾いてほしいんやけど」って。で、無理やろって…笑。弾いたことないしって。もともと僕は作曲とアレンジの仕事を中心にやってたから、家に機材はあって、キーボードもあるけど、それは演奏するためではなくて、その場で音を鳴らすためにあるわけであって、キーボーディストではない。ドラムとかパーカッションでステージに立ったことはあるけど、キーボードは演奏したこともないし無理だと。中学生がこれからバンドやろうぜっていうんじゃないから…。
じゅ:もう大人だもんね…笑。
伊藤:「冷静に考えて、大人の判断として無理だと思うよ」って(加藤さんに)話したの。で、しばらくしてもう一度電話がかかってきて、「とりあえず入ってよ、後のことは後で考えるから」って。だから僕はアレンジとかサウンドを見てほしいと思ってるんだと。で、当然キーボードは弾けないから、パーカッションを持っていって、3人と一緒にパーカッションを叩いて…。存在意義が全然わからないの…笑。アレンジは全部作っていってそれをみんなに聞いてもらうんだけど、練習するときにはやることがなくて叩いてるっていう…。創造性が一切なくて、さすがに3回くらいそういうことをやってたら、「何でもいいからやってよ」って言われて。しょうがなくキーボードを持っていって、ジャーン(人さし指で鍵盤を押さえるジェスチャー)って。
じゅ:えっ、そんなレベル?
伊藤:うん。指1本で。でもそうすると、指1本でもかっこいいフレーズっていうのが確実にあって。ジャーンって音が鳴るだけでかっこいいんだっていうのを、実際に演奏して改めて感じて。もともとプレイヤーじゃない自分として、アレンジャーとして考えると、サビに難しい音をばーっと入れてっていうのをやりがちだけど、ジャーンって二つの指でキーボードを押さえるだけでもすごく世界が変わってかっこいいんだってことを知って、じゃあ自分に弾けるアレンジでかっこいいことをしたらいいんだって気づいて、そこからキーボード人生が始まった。
じゅ:へえ。それってすごい大きな衝撃だったんじゃない?
伊藤:そう。僕の音楽人生で明らかにターニングポイントだった。
じゅ:そうだよねえ。
伊藤:ロボピッチャーってすごい音がいっぱいあってややこしくて、結果としてすごい複雑なことをやってるけど、最初はそんなところからの始まりだった。
じゅ:独学?
伊藤:独学っていうか別に勉強はしていないっていう感じ。その都度、自分のフレーズを弾くために必要なことだけ練習してきた。でも練習が好きなほうではない。ドラマーとしてやってきたから、その経験をなるべく生かして。
じゅ:その経験っていうのは音楽的な知識ってこと?
伊藤:そう。ドラムはリズム楽器で、キーボードもじつはリズム楽器で。リズムがないと音楽って成立しないし、ドラムセットっていうのは、タイコが10個とかいろんな楽器がちりばめられてる。で、キーボードはタイコの代わりに鍵盤が60個とか80個あると。
じゅ:あ、そういう考え方なんだ!
伊藤:そう考えたら数はすごい増えたけど、このタイミングでここをこう弾くんだってことでは変わらない。パーカッションなんだと思った瞬間に何も難しいことはなくなった。
じゅ:へえ。それはおもしろいねえ!
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