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「沢田マンション物語」 古庄弘枝 著 情報センター出版局

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沢田マンション物語

高知に「沢田マンション」という面白い建物があるらしい。
前からそんな噂を聞いて知ってはいたけれど、
この本を読んでみたら想像以上に面白かった。
型破りなエピソードがてんこ盛りで、感心するやら呆れるやら...。
本物の沢田マンションを見るためだけに、高知に旅行に行きたくなってきた。

さて、沢田マンションとはなんぞや。
高知市内に建つ、地下一階、地上五階、入居者約100 人の
かなり大きなマンションなのだが、
何が凄いかというと、大家さん夫妻(沢田嘉農さん、裕江さん)が
これを二人だけで建てたというところ。
しかも二人とも、義務教育を受けただけで
特に建築を学んだことなどない、独学の人。
着工は1971年、それ以来約30年間、嘉農さんは増改築を繰り返し、
マンション内は常にどこかが建設中の状態だったという。
同じ規格の部屋が真四角に並んでいるのでは面白くない、と
間取りは全室異なり、部屋ごとに様々な工夫が凝らされていて、
入居者による改築も可能。
「部屋が狭くなってきたから壁をぶち抜いてもいいですか?」
なんてのもOKだったというからオドロキ!
各階のベランダやあちこちに緑があふれ、
屋上には水田と野菜畑、ビニールハウスがあり、四階には池まである。
マンション自体も興味深いが、嘉農さん夫妻の生い立ち、
結婚に至るいきさつ、マンション建設までの苦労話がまたすさまじい。
自分の信念を貫いてやり遂げる、男気あふれる嘉農さんの実行力にも脱帽だが、
この人についていくと決意して女の身で並の男以上の仕事をし、
さらに家事や育児もこなした裕江さんも、すごい人だとしか言いようがない。
苦労人の二人は弱い者に優しく、入居者には高齢者や母子家庭も多く、
面接してこの人なら大丈夫と思えた人になら、保証人無し・貯金ゼロでも
部屋を貸したという。
残念ながら、嘉農さんはこの本の出版後に亡くなっているが、
現在も沢田マンションの管理運営は次女、三女夫妻によって引き継がれているそうだ。
ウィークリーマンションとして一泊から宿泊OKな部屋も有るらしいので、
いつか泊まりに行ってみたい。
ちなみに、職場で高知出身の女の子に
「沢田マンションって知ってる?」と聞いてみたら、
「知ってます!」とうれしそうに話をしてくれた。
建築好きとかサブカル好きに限らず、やっぱり地元では有名なんだなぁ。

沢田マンション物語

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