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2016年05月23日

もうあれから一週間経つんだなあと、ぼんやり今日一日考えていた。
今日は平和な一日で、近所のお祭りにいったり、骨董市にぶらりとでかけたり。
一週間前は、狂騒のフェスティバルのど真ん中にいた。

日本のいろんなところから重機が持ち込まれ、テントが建てられれ、看板が立てられ、衣装が持ち込まれ、装飾品が持ち込まれた。幕張メッセはそれだけでドラクエの世界に見えた。
僕は「なんてドラクエはすごいゲームなんだろう」と繰り返し思った。
テントの前に看板を立てて、ドラクエの音楽を流せばそれだけでドラクエの世界になってしまうほど強烈に僕らの意識にそのゲームは忍び込んでるんだから!

現場に入って僕が指示したことはほぼ二つだけだ。
「各チェックポイントのスタッフのアイデアをまずは無条件で受け入れること」
「各チェックポイントの演出の最終決定権はその現場にあること」

豊かな世界を作るためにはたくさんの人の意見が必要だ。
世界中どこを見渡したって、一人の独裁者がお店の人の立ち振る舞いまでは決められないんだから。
このドラクエの世界を豊かにするためには、各場所のスタッフが楽しんでその世界の住人になってくれることが絶対に必要だと思ってた。
細やかな演出をするつもりはなかった。
たくさんの意識や意向が混在する豊かな世界を創りたかった。

細かい隠しギミックを作りはじめたのは実は本番の前日だ。
誰かが看板の裏側に「しかしこちらは裏側!なにも読めない!」みたいなウインドウをつけたのを見て、コンテンツチーム全員に号令を出した。
「この小ネタを山ほど創れ!!!」と。

僕が一番好きなドラクエのセリフは「返事がない。ただのしかばねのようだ」だったので、「どこかにしかばねないかな?」と隣にいたスタッフに聞いたら、なんとたまたま偶然美術会社の人が屍を持ってきていた!
それが龍のすみかの隣に置かれたときにこのイベントの成功を確信した。
ウォーリーが自ら死体役になって、しかばねの置き方の指示を美術会社さんに出していて、あいつはマジで信頼できるなと思った。

堀井さんは土曜日に遊びに来てくれた。
「よかったですよ」と声をかけてくれた。
本当に楽しんでくれていたようだった。
うまくいえないんだけど、片想いが少しだけ成就したような気持ちになった。

イベント中、何度も泣きそうになった。
お客さんと一緒に映像を見てるときや、ただなんとなく全体を見回しているときに。
疲れがピークになった三日目に、三十回目くらいに見た二章のエンディングでとうとう涙が頬を伝った。
まあ、41歳にもなって自分の仕事で泣けるんだから恵まれてるんだろう。

たくさんの批判もいただいた。
自分でも、もっとできたことがあるだろうと思う。
なぜこんなつまらないミスをしてしまったんだろうと思うところもある。
でも、ひとまず今できることは全部やったなあという気持ちもある。
至らなかったことは謝りたいけれど、やり遂げたことに関しては誇りに思ってる。
ここで生まれた何かは、たぶんどこかに届くだろう。
次に生み出されることを待っているなにかに。

この場所を生み出すのに30年かかったんだ。
と僕は何度か思った。
ある心の震えが、ひとつの空間にしっかりと形作られるまでに30年かかった。
もうなにも諦められないな、と僕は思った。
僕らは、「こんなことがあればいいな」ともっともっと思うべきだ。
なぜなら、その夢は叶うからだ。

どれだけたくさんの人たちに感謝したら足りるだろうか。
一生かかるかもしれないな。
ありがとうっていう言葉ではとてもたりないけれど、これ以上の感謝の言葉は知らないからしかたなく「ありがとう」という言葉を使います。

ありがとう。

誰に何回言ったら事足りるだろう。
僕の欺瞞に満ちた人生が、なぜかふと幕張メッセで最高の瞬間を迎えてしまった。
ありがとうといわなくちゃならない。
すべてのスタッフと、すべての来てくれたお客さんと、すべてのスタッフをこれまで支えてくれたすべての人たちと、すべてのお客さんを支えてくれたすべての人たちと、その人たちを支えてくれたすべてに人たちと、その人たちを支えてくれたすべての人たちに。

「くらやみのかべ」を押したことある?
俺はあるよ。
あのときの興奮を忘れることはない。
死ぬ直前でも覚えてるだろう。
あの「くらやみのかべ」を押したときに、日常が突然崩れ去った。
あの興奮。
あの日の夜に眠れなくなった。
僕はくらやみのかべを押したんだ。
あの瞬間に開いてしまった扉が、今も僕に別世界を見せ続けている。

竜王迷宮からの脱出楽しかったですか?
人が多すぎたし、ゲーム内課金とかあったし、衣装が足りない場所もあったり、めちゃくちゃ歩かされるし、嫌なこともあったと思います。
もっと意見を聞かせてください。
僕がツイッターでみた意見で一番うれしかったのは「めちゃくちゃ歩いてめちゃくちゃ疲れた。ゲーム内の勇者もこんなに疲れてたんだな。いつも歩かせすぎてごめん」ってやつ。
ゲームの冒険を、これをきっかけに日常だと思ってくれたらいい。

30年前にドラクエ1のエンディングをみて、悲しくなった。
冒険が終わってしまうのがとてもつらかった。
こんなことなら世界など救われなければいいとすら思った。

あのときの僕の気持ちから生まれたのが、今回の「竜王迷宮からの脱出」です。
あのときの悲しみをもうだれも感じませんように、と思いながらずっとつくってました。
だれになんといわれようと絶対に変えなかった、エンディングのテキスト。

「たくさんの人々があなたの元に押し寄せる。
 取り囲まれてあなたからも笑いがこぼれる。
 さあ、乾杯しよう。
 あなたが守った、このすばらしい平凡な毎日に」

そうだ。
これからも日々は続いていく。
でも、このイベントで感じた何かは、たぶんその日常までワクワクするものに変えてくれるはず。
だって君は、君の世界の主人公なんだからね!!!!!

きてくれてありがとう。
次のワクワクをまたすぐにつくりますからね!!!

SCRAP 加藤隆生

Posted by kato takao at 2016年05月23日 04:51 | TrackBack
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