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2014年04月30日

前回なんとなく気恥ずかしいblogを書いてしまった。
なんだか情緒的過ぎるプロローグだけ書いて、その後のことを書かないのも不誠実な気がするので、簡潔にだけど書く。

日曜日の午前中に公園に散歩に行き、帰ってからお風呂に入ってひげをそった。
電車で品川に向かい、新幹線に乗る。
その新幹線の中は超絶仕事がはかどった。よい二時間半でした。

京都についてタクシーで病院へ。
15分ほど待ち合わせ時間に遅れてしまっていたが、二番目の到着だった。
思い出した。俺の従兄弟たちはとんでもなく時間にいい加減だったのだ。
30分遅れくらいで、やっと三々五々集まってくる。
20人近く集まって残りの2家族はおそらく相当遅れるだろうとなり、もう今いるメンバーだけでお見舞いすることにした。

おばあちゃんは意外と元気そうで、一人ひとりの顔を見ながら、ちゃんとした言葉で受け答えをした。
曾孫から手紙をもらったときに「ありがとう、ようなったらええもん買うたるわ」と言ったのがよかった。
僕の顔をじっと見て「元気そうやな」と彼女は言った。
誰かが「覚えてる?たかくんやで」と伝えたら「絶対忘れへん」と言った。

そうか。
絶対忘れないのか、と思った。
もうずっと彼女は僕らのことを忘れないのだ。
彼女の記憶はもう未来永劫彼女の中に残る。
「絶対忘れへん」という言葉が聞けてよかった。
僕の存在は、嘘じゃなかったんだなあと思った。なんか変な話だけど。

手を伸ばしたら握り返してくれて、まだそこからいろんなものが生まれそうだった。
「また来るね」と僕は言って別れた。
「待ってる」と彼女は言った。

外に出て、残りの二家族も(一時間遅れで!)やってきて、それからみんなで写真を撮った。
総勢26人。
病院の前で傾いた日の光の中で写真を撮った。
おばあちゃんの病室でおばあちゃんと一緒に撮るのはやめた。
おばあちゃんが嫌がるかもしれないし、特別な行為をおばあちゃんの前で今するべきではないという意見が出たから。

写真を撮った後、従兄弟の子供(三歳児)が高い塀をすたすたと歩いていた。
危ない!と何人かが言ったけど、その子の親は大丈夫大丈夫といって笑った。
落ちて怪我してもすぐに病院やからなあ、と誰かが言ってみんなで笑った。
夕日は影を長くして、塀の上にいる彼は、世界を救うヒーローみたいだった。

その後、叔父さんやおばさんや母親などが合流して、みんなで大騒ぎの中イタリアンを食べた。
1歳から6歳までの子供が10人以上いてもう収集がつかないような大騒ぎだったけど、冷静に考えてみたらもう僕らは30年以上こうやって大騒ぎをしながら遊んできた。
こうやって、ただ毎日が続いていくのかと思った。
毎日が受け継がれていく。
騒がしい毎日が受け継がれていく。
おばあちゃんの僕をにらむ強い目を思い出した。
「絶対忘れへん」
そうか。
じゃあ、もう大丈夫だな。


その翌日の朝僕は東京に戻った。
帰りの新幹線では仕事ははかどらなかった。
帰ったら大量の仕事。
主に止まっている仕事について謝るという仕事をした。

その日の夜。
お医者さんから親族が呼ばれ「覚悟してください」と言われたらしい。
しかし、なぜか持ち直し「今日は大丈夫です」となったらしい。
妹からは「ストロング米子はミラクル米子に名前が変わりました笑」というラインが来た。
叔父からは「信じようね」というメールが来た。

町は何も変わらず動いていて、僕は何も変わらず働いたり遊んだりしている。

いつか、日常が崩れ果てて、今あるものがすべてなくなって、想像もつかないような苦難がやってきたときに、今のことを忘れないようにしよう。この時間があったことを忘れないようにしよう。
僕らの営みは受け継がれていく。
よいこともわるいことも。
ずっとどこかで大騒ぎして、ずっとどこかで誰かが泣いていて、ずっとどこかでは戦争が起こってるのかもしれない。
だけど、たくさんの受け継がれた物語が、ある日曜日にふと交わって、なんだか奇跡みたいな大騒ぎになったことは忘れちゃいけないなと思った。

その決意を彼女風に言うとこうなる。
「絶対忘れへん」

Posted by kato takao at 2014年04月30日 02:52 | TrackBack
みんなのコメント

加藤さん、こんにちは。
加藤さんの書く文にいつも引き込まれてしまいます。
思わずほろほろと涙を流しながら読んでしまいました。
私も実家に帰る時には祖母と写真を撮っておこう
加藤さん自身もお体に気をつけて頑張って下さい。

Posted by: Tom on 2014年04月30日 16:12
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