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2011年12月28日

まだ大晦日の「終わらない合戦からの脱出」が残っているけれど、なんとなく時間が出来たから、今年一年を振り返ってみたりしようかと思う。

2010年の年末に神宮球場で「あるスタジアムからの脱出」をやって、チケットが完売して、なんとなく一万人規模のイベントが上手に創れるようになったなあという気持ちを抱えて東京に移住した。
36歳にして京都を離れるのは、それなりに勇気が行ったけれど、まあ住んでしまえばどこも同じだと思ってた。

東京に住みだしたら、人生のスピードが5倍くらいに上がった。
ものすごい数の企業から連絡があり、大量の取材依頼がやってきた。
結局今年一年で仕事を一緒にさせていただいた企業さんの数は100を軽く超えた。

その他、懇親会の制作や、レクレーションを作らせていただいた企業を上げていけばもっともっと増える。
今年は仕事できなかったけれど「絶対次はやりましょう!」と言っていただいた企業もたくさんある。僕らの処理能力が平凡すぎてせっかく依頼をいただいたのに出来なかった仕事もたくさんあった。
中でもスクエニさんからいただいた「ドラクエ展」の仕事をスケジュールの関係で断らなくてはならなかったのは本当に残念だった。絶対にやりたい仕事だったので、正式に断った後もしばらく悔しかった。

広告の仕事をたくさんやらせていただいたけれど、その過程で本当にいろんなことを思った。
「広告」ってものをちょっとだけ軽く見ていたというか、ちょっとだけ馬鹿にしていたというか、なんというかインディーズロック出身のベンチャー企業社長としては「大企業にぬくぬくと守られて何がクリエイティブだ!」みたいなパンク精神が広告業界への正当な評価を曇らせていたのだけど、中に入って制作をしてみると本当にすごい人が時々いてびっくりした。
自分の「ものづくり」の概念をもう一度考え直したくなるような人たちだった。
特に、カイブツの木谷さん、電通の小池さん、岸さん、ケトルの嶋さんなどは話しててすごく楽しかったし会うたびに「すげーなー」って思った。あ、岸さんは一回しか会ってないけど。素敵に攻撃的で、明快で、なんか圧倒された。今年圧倒された唯一の人かもなあ。

巨大なプロジェクトを動かすときに、文書をまとめるプロとか、スケジュールを管理するプロとか、予算の管理をするプロみたいなのが、そのプロジェクトごとにやってきて、終わったら三々五々去っていくみたいなのが、なんかかっこいいと思った。一度だけ仕事をして、さくっと去っていく人がいっぱいいて、プロフェッショナルという言葉の意味をもう一度かみ締めたりした。

肝心のSCRAP主催のイベントに関して言えば、今年前半に作った「人狼村からの脱出」と「あるドームからの脱出」は名作だと思ったけれど、その後あまり会心の作は作れなかった。
なんとなく「リアル脱出ゲーム」という遊びに向き合えなくなってしまって、全国で再演をしたり、広告の仕事をしたりして2,3ヶ月はお茶を濁した。
本当に正直に言うと、「あるドームからの脱出」でちょっと燃え尽きてしまったのかもしれない。ドームの最後の謎は我ながらとても美しいと思うし、日本で有数の会場でチケットを売り切って、満員にして、そのリアクションもずいぶん良かったので、ちょっと満足しちゃったところはあった。

ドームが終わった直後から「アジトオブスクラップ」というお店の制作をに取り掛かった。
生まれて初めてお店を出すので、ちょっと緊張したけれど、なかなか素敵なお店&謎になった。3年前に作ったものを再構築した感じのお店だけど、狭いところでやる謎はまた新しい臨場感を生み出した。

「終わらない合戦」の告知を始めたころ「宇宙兄弟」の編集をされている佐渡島さんに「加藤さんもうリアル脱出ゲームに飽きてるでしょ」とさくっと言われ戦慄を覚えた。やはり東京にはすごい人がいる。というか怪物がいる。京都ではそんなことだれも気づかないし、気づいたとしても言わないだろう。佐渡島さんは本気で僕らの未来を考え、その過程で「飽きている」という事象に気づかせてくれた。 

「飽きる」ってのは自覚できてればそれほど問題じゃないんだけど、自覚が出来ていないとやばい。対策も取れないままなんとなく熱くなれないまま時間が流れてく。
そんなとき、たまたま上海でのリアル脱出ゲームの開催が決まって、瞬く間にチケットが売り切れ、たった三ヶ月で一万人近い人が動いた。
僕はそれを上海に見に行って、司会をして、ものすごく感動した。
うまく言葉に出来ないんだけど、自分のちょっとした思い付きが海を越えて別の国の人たちにも受け入れられたのを見ることは本当に素敵な体験だった。

たぶん、僕は上海でモチベーションを取り戻したと思う。
その後に作ったエヴァンゲリオン×リアル脱出ゲーム「ある使徒からの脱出」はかなり満足のいく出来になった。
プロデューサーの弊社飯田君が「これは歴史に残る名作だ!」って言ってたから間違いない。飯田君は人の悪口をいうときは大体間違ってるけど、人や作品を褒めるときは確実に合っている。まあ、プロデューサーっていうのはそういう生き物だ。

また、このエヴァと並行して作った「マッド博士の異常な遺言」もとても納得のいく出来になったと思う。会心の出来!と胸を張っていえるほどじゃないけれど、今の僕に作れるものとしては相当良いものになったと思う。

その直後の「幽霊船からの脱出」と「終わらない合戦からの脱出」は時間と戦いながら作った。正当な評価はまだ終わったばかりだから出来ない。ただ、「アイデアの飛躍度」を判断のよりどころにするなら12月に作った二つは「もっと高く飛べたかもなあ」とも思っている。こんなこと、ここで書く必要はまったくない気がするけれど、来年に向けた強い意気込みとして一応記す。

その他、研修会を作ったり、企業のレクレーションを作ったり、審査員をしたり、講演会をしたり、アプリを作ったり、今までやったことのないことをたくさんやった。
なんと今年だけで僕は引越しを4回もしたのです!

今年は端的に言うとしんどかったな。
新しいことをたくさんやって、面白いことにもたくさん出会ったけど、やっぱりあまりにも非人間的に働きすぎた。自分が何かを思いつくスピードに自分が追いつけなかったような気がする。
今まで味わったことのないストレスを感じたし、会社を運営していくってことが冗談じゃなくてちゃんとしなくちゃならんのだってことも身をもって実感した。
もちろん、びっくりするくらい楽しいことやうれしいこともあって、その見返りとしてたくさんのお金をもらったり、新しい人たちに出会えたのは今年のちょっとした収穫だったと思う。
ただ、あまりの忙しさとしんどさの中で、これまで大切にしてきたいくつかのことを僕は大切に出来なかった。

ロボピッチャーというバンドについて、今どう考えていいのかよくわからない。
今ボールを持っているのは多分、僕だ。
僕がなんらかのベクトルを指し示さないとこのバンドはなくなってしまうだろう。
2011年のボロフェスタのラストでロボピッチャーが流れたとき、僕はその場所で恥ずかしかった。
自分の歌をたくさんの前で聴くのは恥ずかしくない。
ボロフェスタというたくさんの人たちが関わる、すばらしいイベントの最後を飾るのに我々がふさわしくないんじゃないかと思って恥ずかしかった。ボロフェスタは動いていて、ロボピッチャーは動いていないからだ。
2011年のボロフェスタの美しさを糧に、僕らは動かなくちゃならないんじゃないかと思っている。2012年に何が出来るかな。


2012年はもうすでに大騒ぎの予感だ。
春には全国ツアーが決まっているし、それ以外も本当に大きな企画が目白押しだ。

僕がここ二ヶ月ほど取り付かれているすばらしいアイデアについても2012年中に必ず形にして出そうと思っている。このアイデアは本当にすばらしいと我ながら思っている。世界をつなぐのです。時間を軸にしてね。

ともあれ、2011年は客観的に見れば会社がものすごい勢いで伸びて、すばらしい一年でした。
個人的にはぼろぼろになったけど、失敗してぼろぼろになるより成功してぼろぼろになったほうが少しはましでしょう。

2012年はもっとものづくりをしたい。
もっといろんなことを思いついて、形にしたい。
言葉をもっと書きたいと思うし、メロディーをもうちょっとは描きたい。
今よりもっと、そばにいる人たちに優しくなりたいし、勝ち続けることから抜け出したい。
いくつかのことをたくさんの人たちと分け合って、つまらないことやつまらない人たちをとっちめたりしたいぜ。

それから、仕事ってことについてもっと考えてみよう。
「お金をもらうから働く」ってことと「楽しいから働く」ってことが本当に一致しないかどうかについての実験を2012年はしよう。
文化祭での徹夜は美しくて、企業に入ってからの徹夜が美しくないなんて、そんなの嘘だろ!
終わらない文化祭がここにはあるんだぜ。

なんか衝撃的に長いblogになっちゃったけど、まあ一年を振り返ればこんくらいにはなるか。
ほんとはもっともっと書きたいことがあるけれど、これくらいにしといたる。

いつもいうことだけど、どうぞ僕らが面白くなくなったら見捨ててください。
僕らは勝ち続けるつもりはありません。
僕らが面白いと思うものを提示し続けるだけの集団です。
それがうまくいけばうれしいし、うまくいかなければその次を考えるだけです。
負けちゃった文化祭が美しいように、負けちゃったエンターテイメントだって美しいはずです。
とにかく僕らは提案し続けるから、どうぞ厳しい先生でいてください。
なんとなく褒めるのやめてね。その気になっちゃうぜ。

それじゃ、良いお年を。
また来年も、熱狂の中で会いましょう。

SCRAP&ロボピッチャー 加藤隆生

Posted by kato takao at 2011年12月28日 04:03 | TrackBack
みんなのコメント

京都の端っこでほそぼそと盛大に開催された脱出ゲームにわくわくしたり、右上のBARイベントに何度かお邪魔していました。
最近の脱出は、私の好きな脱出からちょっと離れてしまったりチケット争奪戦に怖れおののいて参加できていません。東京開催が多くなったため、脱出じゃないイベントからも足が遠のいてしまっています。
それでも、SCRAPが仕掛けたようなイベントがSCRAP作じゃないことに気付いて(SCRAP協力かもしれないけど。パクり云々の是非はひとまず置いといて)、フォロワー出てきてる!パクられるぐらい良いものだってようやく世間が認識し出した!とほくそ笑んでいます。

株式会社SCRAPが大きくなって加藤社長の所得が増えるのは喜ばしいです。社員が明日のご飯の心配をしなくてすむのもめでたいです。
だけど、フリーペーパーSCRAPから加藤編集長のテキストが減ってロボピッチャーの新譜が出ないのは寂しいです。
加藤さんの身体が一つしかなくて、睡眠とデートとビールと馬鹿騒ぎのための時間が大事なのも間違いない事実なので、全部がうまいことどうにかならないかと悶えています。
私は、ライブハウスで歌ってる加藤さんが一番好きです。2012年は歌ってる加藤さんに会えるといいな。

Posted by: ブラッドオレンジ on 2011年12月28日 16:24

来年こそロボピッチャーが動き出すことを願っております。
ファンがいつまでも待ってると思うなよ~!

…スミマセン待ってます。

Posted by: ななこ on 2011年12月28日 17:12

つぎ見る雲が一番きれい
何回見ても良いタイトルだなあ
よいお年を。

Posted by: on 2011年12月30日 22:11
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