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2005年11月16日

 レコ発2DAYSが終わって、なぜか言葉がぜんぜん書けなくなって、ひたすらじっとしていました。

 一度だけライブにいって、一度だけ鍋を食べた。

 ライブ。
 そのライブは、忘れていたものを思い出させてくれるようなライブで、こんなライブを僕に見させてくれたすべてのものに感謝したいようなそんな夜だった。
 思い出した。
 僕が作りたかったものは「良い曲」じゃない。

 鍋。
 身体にゆっくりとしみこんでくるような鍋。僕らは四人で、ウーロン茶を飲んだ。
 少しずつ身体が社会復帰していくような気がした。

 実際に復帰できたのはそれから二日後だったけど。

 僕は一日の大半をパジャマのままで過ごした。
 メールの返事もほとんど出来なかった。
 ほとんどソファーの上にいた。
 時折入ってくる仕事だけこつこつと正確にやり続けた。
 気持ちを込めず、ただ精密に文章を仕上げるという作業は、本当に心をすり減らしていく。
 僕のライターとしての人生はそんなに長くないかもしれないな。

 昨日の朝、社会復帰を遂げて、やっといくつかのメールに返事を書き、いくつかのアポイントメントをとりつけ、電話をして、止まっていた作業の手配をした。
 4日ほど。
 一日3時間だけ仕事をして、後はじっとしていた気がする。
 休んだというよりは、その分磨り減った。
 さあ、動く。
 物事には必ず反動がある。
 僕はきっと、今から数日の間に、異常なほどたくさんのものを作る。
 
 もしくは、異常なものをたくさん作る。

 →

 いくつかのメールが僕のところに届く。
 彼氏の父親が死んだ話や、学校をもう辞めようと思っている話や、仕事がつまらない話。
 もしくは、もっとイノセントなこと。最近あったことや、ライブの感想。

 僕は、ときどきそれらのメールに必要以上ににコミットしてしまい、メールの行間の隅からスミまでを読み尽くして、あらゆる存在を賭して、理解したくなります。
 あなたが僕にメールを書いてきたその理由のすべてを知りたくなります。
 メールを書き終わったあなたが今何をしているのか知りたくなります。

 それでも、僕は知ろうとはしません。
 僕は、ネットの怖さを少しだけ知っているし、それ以上に、人間の怖さも知っているからです。
 なので、「メールの返事がなんで来ないんですか!?」というメールには返事をかけません。ごめんなさい。
 ときどき気が向いたときに書くかもしれませんが、かなり希少です。
 返事は期待せずにメールを送っていただくのが、売れないミュージシャンとお客さんのちょうどいい距離感ではないかと思います。

 →

 アルカイックスマイルという言葉を、間違って理解しているとしか思えない笑顔の女性の挙式が延々と放映されております。僕が傍にいたら「その笑顔変だよ」ってやさしく教えてあげるのに。
 そして、先日タイバンしたバンドのボーカリストについて「かばちゃんに見えてしょうがないよねー」というコメントをしておられた方の声色が耳元で2億回ほどリフレインされていて、ユーミン風にいうとリフレインが叫んでいて、もう完全に洗脳されてしまいました。ああ、洗脳されるってこんな感じなんだー。俺、徹底的に無宗教だから経験したことなかったけど、こんな感じなんだね。

 ここ数日引きこもってみてわかったけど、やっぱり他人ってすごい。
 自分がどれだけ無気力になって、時間の流れがわからなくなっても、他人には時間が流れてきちんと生活があるんですね。人間は、もうどう足掻いても絶対的な個にはなれないんだと実感しました。他者と自己の境界線なんて、現代社会において成立しないんですね。僕はまるで誰かの人生に急かされるように、無事この場所に戻ってきました。

 他者がいなかったら、ずっとあそこにいた。
 誰かがいてよかった。
 あなたがいてよかった。
 あなたたちがいてよかった。
 あと、タテタカコの音楽があってよかった。

 倉橋ヨエコの音楽は本当に本当に素晴らしく、聴くたびに泣きそうになったけど、僕の社会復帰を助けてくれはしませんでした。

 そして、ミドリ。
 何もない場所に、何かを作り出して、すぐにまた壊す。
 壊れていく様子が美しい。
 そして、壊すためにまた作る。
 心がかき乱される音楽に出会ったのはいつ以来か。

 今日は、朝から、死ぬ直前のオーティスレディングのライブのブートレグを聴いてました。
 ひどい録音。
 ひどい演奏。
 このライブが終わった数日後に彼は死ぬのです。
 トライアリトルテンダネーーースとか、訴えかけて、それもすさまじく訴えかけて、ふと、飛行機事故で彼は死にます。
 →
 でも、音楽は受け継がれるから
 →
 とか、そんな慰めの言葉が当てはまるなんてとても思えない。
 死んだオーティスレディングには、もう歌は歌えない。
 僕が、ある研ぎ澄まされた朝に、死にたくなるほど感動していることを知る事すら出来ない。

 「死んだヤン・ウェンリーに用はない」といって、ポプランは部屋にこもってしまったけど、僕は死んでしまった人の音楽を部屋で一人で聴いているときに、言いようのない感覚が体中を縛る事があります。

 本屋さんに入っても読むべき本が見つかりません。
 最近の楽しみといえば、パグマガにおける「ヨーロッパ企画・上田誠のお前百までわしゃ九十九までディスクシステム」を読むことくらいです。このコラム最高。僕と上田君が過去のアドベンチャーゲームについて話すと、日本のアドベンチャーゲーム界には革命が起こると思うな。だって、俺、ミシシッピー殺人事件解いたもん。そんな奴俺以外に知らんもん。あ、そういえば「ミシシッピー殺人事件」もジャレコだね。
 きっと上田君も「燃えプロ」でバントホームラン打ったことあるんだろうなあ。

 ↓

 さて。
 少しだけ、自分のためのテキストと、自分ためにギターを弾いて眠ります。
 ワンマンライブ以降一週間経つけど、伊藤君の家にギターを置きっぱなしである事に今気づきました。家では、エレキギターを弾いております。エレキで曲を作ると、ややテンポの速い曲になります。なぜか。

 それでは。
 この一週間、何度もこのページを見て、更新されない日記にため息をつかれたすべての方に、
 愛と、
 愛と、
 愛を。 
 
 欲望が、
 すべての混迷を、
 飲み込んでしまいますように。

 では。

Posted by kato takao at 2005年11月16日 05:27 | TrackBack
みんなのコメント

読んでいるとなぜか安心します。
言葉だけなのに。
言葉のない空白に
何があったのかなと思っていたけど、
その方が生きている人って実感します。

Posted by: AKIKO on 2005年11月16日 09:09

欲望がすべての混迷を飲み込むってどういう意味ですか?
さっぱりわからんのです。

Posted by: イイヅカ on 2005年11月18日 22:15
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